I-2 |
I 消費税のあらまし |
2 消費税のしくみ |
預り消費税を 国に納める |
先生 | ま、それはそれとして――さっき伊呂波くんが言ってた、仕入れ分の消費税を控除するという話に戻ろうか。たとえば、商品がメーカーから卸売業者、小売業者、消費者へと流れるとするね。 最終的に、消費者は小売業者から1,500円で購入するとして、そこに消費税が8%で120円上乗せされる。 |
爽香 | 1,620円で買うのね。 |
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先生 | 消費者にとってはそれだけのことだけれど、次に、小売業者が消費者から“預った税金”を、代わりに国や地方に納めなければならない、という話が出てくるね。 |
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爽香 | 120円納めるんですね。 |
立て替えた 消費税を控除 |
先生 | いや、そうじゃないよ。小売業者はその商品を卸売業者から1,200円で仕入れたとして、そこには96円の消費税が上乗せになってるから……。 |
一郎 | 120円からそれを引きますね。 |
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先生 | うむ。その96円って、小売業者にとっては“立替払い”だからね。 |
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爽香 | 立替え? |
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先生 | そう。お客さんに売るためにその商品を仕入れた。そこにかかってる割増しのお金なんだから、本来、それはお客さん自身が負担すべきだね。 |
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爽香 | ふーん。 |
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先生 | 結局、小売業者は120円−96円=24円の消費税を国に納めることになる。
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流通の各段階で 分散して納税 |
爽香 | でも……それだと96円分の税金はどこへ行くんですか? 消費者が払ってるのに国に納められない。 |
先生 | お、鋭い質問だね。どう? 伊呂波くん。 |
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一郎 | はい。それは、流通の前段階の卸売業者やメーカーが納めることになりますね。 |
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爽香 | ?? |
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先生 | 今度は、卸売業者が納める税金を考えようか。卸売業者は小売業者から96円の消費税を預ってるよね。 |
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爽香 | ええ、そうですね。 |
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先生 | ところが一方で、メーカーから仕入れるとき80円を立替払い……。 |
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爽香 | ふーん、じゃあ納めるのは差し引き16円だけ? |
流通段階を 合計すれば 消費者負担の 全額が国へ入る |
一郎 | さらにさかのぼってメーカーも、仕入れと売上げの差額分の消費税を国に納める。そうやって全部の流通段階で国庫に納められる税額を足していけば、合計で120円になるんですね。 |
先生 | そういうこと。メーカーにも原料や材料の供給のほか、1次加工、2次加工……といろいろあるけど、理屈上、全部トータルすれば120円が国庫に入るはずだね。 |
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爽香 | うーん、そういえばそうね。 |
現実には すべて国庫に 入らない |
先生 | ただしここで、いわゆる“益税問題”が発生するね。 |
一郎 | 免税事業者の問題ですね。 |
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先生 | うむ。どういうことかな、伊呂波くん。 |
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一郎 | 年間売上げが1,000万円以下なら消費税を納めなくていい……。 |
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先生 | メーカーから小売業者までの間にそういう事業者がはさまってると、お客さんから預った消費税が国庫に納められない。最終消費者の負担したお金がその事業者の手元に残ってしまう、という現象が起きるね。 |
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爽香 | あら、そんなのズルいわ。どうして全部納めさせないんですか? |
事務処理が 面倒なので お目こぼし |
先生 | 納める税額を計算して申告する、というのは手間がかかるからね。零細事業者にとっては負担になるから、お目こぼしなんだね。 |
爽香 | ふーん。 |
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先生 | 1,000万円の8%で80万円――そこから立替え分の税金を引けば10万、20万の金額だからまあいいか、ってことだね。 |
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一郎 | 以前は3,000万円以下まで免税だったんですね。 |
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先生 | そう。平成元年の導入時は3,000万円基準でスタートしたけど、消費者に益税問題への不満がたまってきて、それから事業者のほうも事務処理に慣れてきただろうからということで、平成15年度の改正で免税点が1,000万円に引き下げられたんだよ。 |
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爽香 | 3,000万円ってことは……何十万円も残るんだから、それはちょっと許せないわね。 |
簡易課税で 益税が発生 |
先生 | それから伊呂波くん、簡易課税による益税もあるね。 |
一郎 | あ、はい、そうです。みなし仕入率ですね。 |
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爽香 | なあに、それ? |
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先生 | 詳しくはまた後で勉強するけど、消費税の計算で大変なのは仕入高の集計なんだね。 |
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爽香 | あら。そんなの決算書を見れば分かるじゃないですか? |
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先生 | いや、そんなに簡単にはいかないね。消費税の計算でいう仕入れは、商品仕入れだけじゃないんだよ。各種経費の支払い、固定資産の購入……といろんなものが仕入れの概念に入ってくる。 |
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爽香 | ふーん。 |
業種ごとに 一律の 仕入れ割合で 計算できる |
先生 | そこで業種ごとの売上げに対する仕入れの割合を、卸売業は90%、小売業は80%といったぐあいに、一律決めつけてるのが「みなし仕入率」でね――これを使えば消費税の金額が簡単に計算できる。
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一郎 | 売上高の集計はそんなに難しくないですからね。 |
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先生 | たとえば、小売業者はみなし仕入率が80%だけど、実際の仕入率が70%、つまりマージンが30%だとすれば、本当は30%分の消費税を納めなければならないのに、簡易課税制度を使えば20%分の消費税で済むんだね。その差10%分は事業者の手元に残る。 |
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爽香 | あ、そうか。でも、そんなのダメよ。 |
売上5,000万円 以下に限る |
先生 | そこでこの制度が使えるのは、年間売上げが5,000万円以下の事業者だけ、ということになっているんだよ。 |
一郎 | 以前は2億円以下でしたね。 |
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先生 | そう。最初は5億円までOKだったんだけど、それだと益税の金額が大きすぎるので、5億円→4億円→2億円→5,000万円と徐々に引き下げられてきたんだよ。 |