目次 III-3


3.仕入税額控除の要件

(1) 仕入税額控除の適用要件

 簡易課税制度を適用しない、いわゆる原則課税適用事業者は、その課税仕入れに係る消費税額の控除を受けるために、課税仕入れの事実を記録した帳簿及び課税仕入れの事実を証する請求書等の両方の保存が必要となります。

 既に説明しましたように、消費税の納付税額は次の算式で求められるのが原則です。

帳 簿 請求書等 保存書類

 なお、これらの帳簿及び請求書等は、これを整理し、確定申告期限の翌日から7年間、保存する必要があります。ただし、6年目及び7年目については、課税仕入れ等の事実が帳簿及び請求書等の両方に記録されている場合、いずれか一方を保存することで足ります。また、最後の2年間は一定の要件を満たすマイクロフィルムにより保存することもできます。


《例 外》

 ただし、次の(1)又は(2)に該当する場合には、法定事項を記載した帳簿を保存していれば、請求書等の保存がなくても、適用要件を満たしているものとして取り扱われます。

(1) 課税仕入れが3万円未満である場合
  課税仕入れに係る支払額(税込み)の合計額が3万円未満である場合は、法定事項が記載された帳簿の保存だけで済みます。この「合計額が3万円未満」かどうかは、1回の取引の税込みの金額が3万円未満かどうかで判断します。
(2) 3万円以上の取引であっても、次の(1)と(2)の要件をすべて満たす場合
 (1) 請求書などを受け取らなかったことについてやむを得ない理由がある場合
 (2) 帳簿に、そのやむを得ない理由と、仕入れ先の住所又は所在地を記載している場合

 なお、この場合の「やむを得ない理由」とは、次のケースをいいます。

イ. 自動販売機を利用して課税仕入れを行った場合
ロ. 入場券、乗車券、搭乗券等のように、課税仕入れに係る証明書類が相手方により回収される場合
ハ. 課税仕入れを行った者が相手方に請求書などの交付を請求したが、交付を受けられなかった場合
ニ. 課税仕入れを行った課税期間の末日までに、その支払額が確定していない場合
(この場合には、その後支払額が確定したときに課税仕入れの相手方から請求書等の交付を受けて保存することになります。)
ホ. その他、これらに準ずる理由により請求書等の交付を受けられなかった場合

 イ〜ホに該当する場合は、帳簿の保存があれば仕入税額控除ができますが、この場合には、先にふれたように、保存する帳簿に「やむを得ない理由」と課税仕入れの相手方の住所又は所在地の記載をしなければなりません。

 なお、次のヘ〜リに該当する者の場合には、さらに相手方の住所又は所在地を記載する必要もありません。

ヘ. 汽車、電車、乗合自動車、船舶又は航空機の旅客運賃を支払って役務の提供を受けた場合の、一般乗合旅客自動車運送事業者又は航空運送事業者
ト. 郵便役務の提供を受けた場合の、その郵便役務の提供を行った者
チ. 課税仕入れに該当する出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当(「出張旅費等」といいます。)を支払った場合の、その出張旅費等を受領した使用人等
リ. 再生資源卸売業に係る課税仕入れの相手方


〈帳簿の法定記載事項〉…消費税法第30条第8項第1号

区  分 記 載 事 項
課税仕入れの場合 (1)課税仕入れの相手方の氏名又は名称
(2)課税仕入れを行った年月日
(3)課税仕入れに係る資産又は役務の内容
(4) 課税仕入れに係る支払対価の額(消費税額及び地方消費税額を含み、これらに係る附帯税の額を除きます。)


(2) 請求書等の保存と記載事項

 簡易課税制度によらず原則課税の適用を受ける場合、課税事業者は、仕入税額控除を受けるために、課税仕入れの事実を記載した帳簿及び課税仕入れの事実を証する「請求書等」を保存しなければなりません。具体的には次のように取り扱います。

(注) なお、災害その他やむを得ない事情によりその保存をすることができなかった場合には、事業者の証明により、保存を免除されます。

請求書等
 請求書等とは、次のものをいいます。
(1)  取引の相手方(媒介等の場合は媒介者)から交付を受ける請求書、納品書、領収書等で所定の事項が記載されているもの
(2)  自己が作成した仕入明細書等で、取引の相手方の確認を受けたもの
  (注) 建設業界において、元請業者が作成する「出来高検収書」も、その内容について下請業者の確認を受けているものは、上記の明細書等と同様取り扱われます。


*請求書等の記載事項

 課税資産の譲渡等についてその課税資産の譲渡等を行った事業者(相手方)か、又はその課税仕入れを行った自己が発行した請求書、納品書、領収書その他これらに類する書類で、次のA又はBの記載事項が記載された書類が保存する請求書等となります。

A 課税資産の譲渡等を行った事業者(相手方)が作成する書類…消費税法第30条第9項第1号

区  分 記 載 事 項
請求書等 (1)書類の作成者の氏名又は名称
(2)課税資産の譲渡等を行った年月日(まとめ記載の場合にはその一定期間)
(3)課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
(4) 課税資産の譲渡等の対価の額(その課税資産の譲渡等に係る消費税額及び地方消 費税額に相当する額がある場合には、その相当する額を含みます。)
(5) 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称(相手方が小売業などの場合は、省略も可)




B 課税仕入れを行った事業者(自己)が作成する書類…消費税法第30条第9項第2号

区  分 記 載 事 項
仕入明細書等 (1)書類の作成者の氏名又は名称
(2)課税仕入れの相手方の氏名又は名称
(3)課税仕入れを行った年月日(まとめ記載の場合にはその一定期間)
(4)課税仕入れに係る資産又は役務の内容
(5) 課税仕入れに係る支払対価の額(消費税額及び地方消費税額を含み、これらに係 る附帯税の額を除きます。)
(注)  仕入明細書等については、その明細書等に記載されている事項につき、その課税仕入れの相手方(課税資産の譲渡等を行った者)の確認を受けたものだけが請求書等に該当することとされています。
 また、課税貨物を保税地域から引き取る事業者については、別途記載事項が定められています。

課税仕入れの相手方の確認を受ける方法
仕入明細書、仕入計算書等を仕入税額控除の要件とされる請求書等として保存する場合の課税仕入れの相手方の確認を受けたものには、仕入明細書等に課税仕入れの相手方の確認の事実が明らかにされているもののほか、例えば、次のようなものが該当します。
(1) 仕入明細書等の内容をパソコンなど通信回線を通じて課税仕入れの相手方の端末機に出力し、確認の通信を受けた上で自己の端末機から出力したもの
(2) 仕入明細書等交付後一定期間内に誤りがある旨の連絡がない場合は記載内容のとおり確認があったものとする基本契約等を締結している場合のその一定期間経過後の明細書等課税仕入れの相手方の確認を受ける方法

一口情報 電子帳簿保存法による仕入税額控除
 電子帳簿保存法の規定に基づき、電子データ等により保存することが認められている国税関係帳簿は、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成するものに限られています。
 したがって、その帳簿に法定の事項が記録されているなら、仕入税額控除の適用要件とされている、帳簿が保存されていることとなります。


取引の相手方が作成する請求書等の記載内容
<納品ごとに請求がある場合>



<月ごとにまとめて請求がある場合>

 

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