目次 III-2


2.勘定科目別課税仕入れの判定

 消費税を簡易課税によらず、原則課税で納税額を計算する場合、その仕入れについて1つ1つの取引が、(1)課税取引か、(2)非課税取引か、(3)不課税取引かに区別しなければなりません。これが簡易課税と決定的に異なる点です。

 不課税取引の代表例は給与や役員報酬の人件費です。これらは事業者に支払うものではないからですが、その他に租税公課も同様の理由から不課税取引となります。また、支出を伴わない取引では、減価償却費、貸倒引当金繰入損なども不課税取引です。これらの不課税取引は、当然、仕入税額控除の対象にはできません。

 仕入税額控除の対象とならないのは、保険料とか支払利息などの非課税取引も同じです。その意味で仕入れに関しては同列に扱っても差し支えありませんが、売上げの側に立って後で出てくる課税売上割合を計算するときには区別が重要になってきます。課税売上割合を計算するときの分母には、不課税取引と非課税取引のうち不課税取引は含めることができないからです。

 ということで、次に勘定科目別の「仕入れに係る消費税課否判定一覧表」を掲げておきますので,実際の仕入れ取引が、課税仕入れに該当するのかしないのかの判定の目安として参考にしてください。


【参考4】 仕入れに係る消費税課否判定一覧表(代表例)
…国内における課税仕入れ
…非課税仕入れ
…免税仕入れ
× …消費税が不課税となるもの
なお、取引例の中で国内、国外の区別を記していないものは、すべて国内におけるものとい う前提で作成しています。

勘定科目 取 引 例 判定 説 明 等
商品仕入高
(原材料仕入れも含む。)
   相手方が事業としてその商品を売り上げた場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるもので、消費税が免除されるもの以外のものであれば、課税仕入れになります。
役員報酬等
役員報酬 ×  所得税法上の給与所得とされる給与等を対価とする役務の提供は、課税仕入れになりません。
役員賞与 ×
役員退職金 ×
現物給付
使用人給与等 使用人給与 ×  使用人やパートタイマー、アルバイトに対して支払われる給与等(給与、賞与及び退職金をいいます。)は、課税仕入れになりません。また、子会社等が親会社等から出向社員を受け入れて、その給与の一部又は全部を負担する場合(経営指導料等の名義で支払う場合を含みます。)も同様です。
使用人賞与 ×
使用人退職金 ×
現物給付
臨時雇賃金、アルバイト料、パート給与 ×
扶養手当、特殊勤務手当、役職手当、住宅手当及び残業手当等 ×
宿日直料(食事代の現金支給を含む。) ×
通勤手当(通常必要な金額)
賃借料


土地の賃借料
 土地の賃借料のうち、その貸付期間が1か月未満のものや、駐車場その他施設の利用に伴って土地を使用するものは課税仕入れになりますが、その他は課税仕入れになりません。
 建物の賃借料のうち、居住用に使用するもの(貸付期間が1か月に満たないものを除きます。)は課税仕入れになりませんが、その他のもの、例えば事務所の賃借料は課税仕入れになります。
 また、機械、車両及び器具備品等に係る賃借料は課税仕入れになります。
居住用建物の賃借料
事業用建物の賃借料
機械・車両及び器具備品等の賃借料
法定福利費    事業主が負担する健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料等の法定福利費は課税仕入れになりません。
福利厚生費 慰安旅行費用、運動会開催費用等  福利厚生費として事業者が支出した金額のうち国内における慰安旅行費用、運動会開催費用等は課税仕入れになります。
祝金、見舞金、香典 ×
通信費 国内間電話料金、郵便料金  郵便切手購入費は、原則として実際に切手を貼付して郵便物を発送した課税期間の課税仕入れになります。
通信費のうち、国際電話料金や国際郵便料金は課税仕入れになりません。
国際電話料金、国際郵便料金
会費・組合費等 ゴルフクラブの会費  
同業者団体等の会費 ×
事務用消耗品費    課税期間中に購入した事務用消耗品は課税仕入れになります。
交際費 贈答品の購入費用、接待飲食費、接待ゴルフ費用等  贈答品の購入費用(商品券、ビール券、プリペイド・カード等の購入費用は除きます。)は、課税仕入れになります。
得意先やその役員等に現金で支出する祝金、香典、せん別等 ×
寄付金 金銭でする寄付金 ×  金銭でする寄付金は、課税仕入れになりません。
寄付のための現物の購入
減価償却費   ×  減価償却費は課税仕入れになりませんが、事業者がその課税期間中に購入した課税仕入れに係る減価償却資産は、その購入代価が課税仕入れになります。
修繕費    事業者の有する資産の修繕のため他に支出した修繕費は課税仕入れになります。なお、資本的支出をされたものも同様です。
租税公課   ×  法人税、所得税、道府県民税、市町村民税、事業税、消費税、固定資産税及び印紙税等並びにこれらに係る加算税(金)や延滞税(金)の租税公課は課税仕入れになりません。
保険料    事業者が支払う生命保険料や火災保険、自動車保険等の損害保険料は課税仕入れになりません。
水道光熱費    公共上下水道等の使用料、電気料金やガス料金等は課税仕入れになります。
荷造運送費 国内間運送  出荷に係る傭車料等は課税仕入れになります。
国内国外間運送
広告宣伝費    宣伝的効果を目的として支出する広告宣伝費は課税仕入れになります。

 

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