目次 I-1


I.消費税は何がどう変わる?

 平成15年3月の第156回国会で消費税法の一部が改正され、平成16年4月1日から適用されることになりました。その主な改正点は、(1)事業者免税点制度の適用上限の3,000万円から1,000万円への引下げ、(2)簡易課税制度の適用上限の2億円から5,000万円への引下げ、(3)中間申告の申告・納付回数の見直し、(4)課税期間の特例の見直し、そして、(5)消費税込みの総額表示の義務付けなどです。


1.事業者免税点が1,000万円に引き下げられます

 事業者が、消費税の納税を免除されるのは、現行ルールでは基準期間における課税売上高が3,000万円以下のときですが、平成16年4月1日以後、課税の適正化の観点からこの適用上限が1,000万円以下に引き下げられます。


適用期日 この改正は、平成16年4月1日以後に開始する課税期間から適用されます。したがって、個人事業者は平成17年分の、法人(事業年度が1年の場合)については平成17年3月決算期の消費税から適用されます。




【新免税点制度の適用関係】
【新免税点制度の適用関係】

注意点  従来、免税事業者であった者が、平成16年4月1日以後に開始する課税期間において、その基準期間における課税売上高が1,000万円を超えることとなった場合には消費税課税事業者届出書をすみやかに税務署に提出する必要があります。
 一方、平成15年10月1日前に改正前の制度下(免税点3,000万円以下)で提出された消費税課税事業者選択届出書(免税事業者である者があえて課税事業者を選択するために出す届出)は改正後の制度においてもその効力が継続されています。


基準期間における課税売上高の簡便計算

 長い間にわたって消費税の申告に携わらなかった免税事業者にとっては、基準期間における課税売上高をもとに課税事業者の判定を行うとしても、まだまだ意識が乏しく、帳簿等の不備などによりその計算が困難である場合も予想されるところから、基準期間の課税売上高の計算につき次のような簡便計算が認められています。


注意点  基準期間における課税売上高の簡便計算の条件
 平成16年4月1日以後最初に開始する課税期間の直前の課税期間(個人事業者については平成16年分、事業年度が1年である法人については平成16年3月決算期から平成17年2月決算期までの各決算期)において免税事業者である者が、平成16年4月1日以後に開始する年又は事業年度の基準期間における課税売上高を計算する場合において、次のすべての要件を満たすときに、平成15年10月1日から平成15年12月31日までの期間の課税売上高を4倍にした金額をもってその基準期間における課税売上高とすることができます。

(1) 基準期間の初日が平成15年4月1日前であること
(2) 基準期間における課税売上高を計算することにつき困難な事情があること


【簡易計算を利用できる事業者の例示】
【簡易計算を利用できる事業者の例示】


用語の整理
免税事業者とは
 その「課税期間」の「基準期間」における課税売上高(輸出売上高を含みます。)が1,000万円(改正前は、3,000万円)以下の事業者について、その課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等につき消費税の納税義務が免除されるところから免税事業者といいます。
課税期間
 消費税の納税額を計算する単位となる期間で、個人事業者は暦年(1/1〜12/31)を、法人は事業年度をいいます。
基準期間
 個人事業者についてはその年の前々年をいい、法人についてはその事業年度の前々事業年度をいいます。


 したがって、個人事業者の平成17年分の基準期間は平成15年分、事業年度が1年である法人の平成17年3月決算期の基準期間は平成14年4月1日〜平成15年3月31日の事業年度となります。
 なお、前々事業年度が1年未満である法人については、その事業年度開始の日の2年前の日の前日(応当日)から同日以後1年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間をいいます。
課税売上高
 事業者が国内において行った消費税が課税される取引の売上金額(消費税額を除きます。)の合計額からその売上返品や売上値引き、売上割戻し等に係る金額(消費税額を除きます。)の合計額を控除した金額をいいます。

注意点  なお、個人事業者の新規開業年とその翌年は基準期間が存在しないため免税となります。一方、法人では、資本又は出資の金額が1,000万円未満の場合は個人事業者と同様に2年間免税となりますが、資本又は出資の金額が1,000万円以上の場合は新規開業年より、即、課税事業者となりますので注意が必要です。


免税事業者が不利な場合
 免税事業者の場合、消費税を納めなくてもよい代わりに、還付もされません。つまり、課税仕入れに際して負担した消費税の控除など(仕入税額控除など)がされないのです。例えば、建物を建てたり、機械を購入したり、設備投資をしたとき、あるいは貸倒れが生じた場合などは、課税事業者ですとその負担した消費税や貸倒れとなった消費税を納税額の計算上、控除してもらい、引ききれない分の消費税は還付されますが、免税事業者の場合はそれができません。そこで…。
免税事業者でも課税事業者を選択できる!
 このような不利益を解消するため、免税事業者でも税務署へ届出(消費税課税事業者選択届出書)を提出することによって課税事業者になることはできます。ただし、この届出書は課税事業者になろうとする年の前年末、新規開業のときは開業年の末日(法人の場合は、課税事業者になろうとする事業年度の前事業年度末、新設のときはその事業年度末)までに提出しなければなりません。ただし、一度、課税事業者を選択すると2年間は免税事業者に戻ることができませんので注意してください。


〈新たに課税事業者(1,000万円超)となる者の簡易課税選択の経過措置〉

 事業者免税点(3,000万円→1,000万円)の引下げにより、新たに課税事業者となる者の大半は簡易課税制度を選択すると予想されます。
 簡易課税制度を選択するためには、原則として、その適用を受けようとする課税期間の開始前に届出書の提出をしなければなりません。
 しかし、今回の改正では、新たに課税事業者となる者には小規模零細事業者が多いところから、移行期の例外的な措置として「消費税簡易課税制度選択届出書」に関する経過措置が設けられました。
 その措置とは、平成16年4月1日以後最初に開始する課税期間において新たに課税事業者となる事業者(自ら課税事業者を選択している者を除きます。)が、「消費税簡易課税制度選択届出書」をその最初に開始する課税期間中に所轄の税務署に提出し、その届出書にその課税期間から適用を受ける旨の記載をしたときは、その課税期間の開始する前日にその届出書が提出されたものとみなされることになりました。


 つまり、事業者免税点の引下げ(3,000万円→1,000万円)により新たに課税事業者となる者の最初の課税期間については、その課税期間中に届出書を提出すれば、その課税期間から簡易課税制度の適用が受けられるわけです。

 

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