〈算式〉
* |
種類の著しく異なるものを除き、差益の率のおおむね同じものは、一区分として計算できる。 (基通5−2−5) |
** |
原価率が100%を超えても、その率を採用して計算する。(基通5−2−8) |
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(注1) |
上の(3)(4)は「期別」に計算することを前提とするが「月別」に計算することも上記の方法に該当する。(基通5−2−3)
また、(3)(6)は6か月ごとに計算する場合も該当する。(基通5−2−3の2) |
(注2) |
未着品の評価
未着品の付随費用のうち期末までに支出されていないため、その取得価額に算入されていないものがある場合には、その未着品はこれと種類等の同じ棚卸資産があっても異なるものとして評価する。(基通5−2−8の2) |
《後入先出法・単純平均法の廃止について》
後入先出法・単純平均法の廃止については、平成21年度税制改正により平成21年4月1日以降廃止されているが、以下の経過措置がある。(平21改令附6)
イ |
平成22年3月31日までの間に開始する各事業年度については、後入先出法・単純平均法で期末評価を行うことができる。 |
ロ |
平成22年4月1日以後最初に開始する事業年度までの各事業年度において、新しい評価方法へ変更する場合の承認申請は、確定申告期限までに届出書を提出することによって変更申請書とみなされる。 |
ハ |
評価方法を変更したことにより課税所得が増加する場合には、その増加額を7年間で均等に益金計上することができる。 |
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〈設例〉
総額(個数×売上単価) |
取 引 |
総額(個数×仕入単価) |
残 |
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前期繰越 |
1,000円(10個×100円) |
10個 |
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4/10 仕入 |
6,000円(50個×120円) |
60個 |
7,200円(40個×180円) |
5/15 売上 |
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20個 |
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8/15 仕入 |
8,400円(60個×140円) |
80個 |
10,200円(60個×170円) |
12/15 売上 |
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20個 |
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2/25 仕入 |
3,850円(35個×110円) |
55個 |
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3/ 4 仕入 |
2,100円(15個×140円) |
70個 |
9,500円(50個×190円) |
3/20 売上 |
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20個 |
☆期末棚卸高20個の評価
イ 個別法
−省略−
ロ 先入先出法
140円×15個+110円×(20個−15個)=2,650円
ハ 総平均法
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1,000円+6,000円+8,400円+3,850円+2,100円 |
≒@125円 |
10個+50個+60個+35個+15個 |
@125円×20個=2,500円
ニ 移動平均法
|
4/10 |
|
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8/15 |
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@116×20個+8,400円 |
≒@134円 |
80個 |
|
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2/25 |
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@134×20個+3,850円 |
≒@118円 |
55個 |
|
|
3/ 4 |
|
@118×55個+2,100円 |
≒@122円 |
70個 |
|
@122円×20個=2,440円
ホ 最終仕入原価法
@140円×20個=2,800円
ヘ 売価還元法
(例)期末棚卸資産の売価は@180円とする。
|
原価率= |
1,000円+6,000円+8,400円+3,850円+2,100円 |
=0.7 |
7,200円+10,200円+9,500円+180円×20個 |
180円×20個×0.7=2,520円
(2) 低価法(令28二、基通5−2−11)
種類等の異なるものごとに(1)のいずれかの原価法による評価額と期末時価(※)とのいずれか低い価額をもってその期末棚卸資産の評価額とする方法をいう。
※ 期末時価(平成20年4月1日以後開始事業年度より適用)
区 分 |
会計基準 |
税法 |
原則 |
棚卸資産全て |
収益性の低下による評価基準(強制低価法)により、正味売却価額で評価 |
正味売却価額((*)基通5−2−11)(滞留資産等であっても同様) |
特例 |
原材料等のみ |
再調達原価も可 |
同左 |
*1 |
正味売却価額 |
= |
商品又は製品として売却するもの とした場合の売却可能価額 |
− |
見積追加製造原価(未完成品に限る) 及び見積もり販売直接経費 |
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*2 |
平成20年度中小企業会計指針では、各企業の判断により、金額的に重要性がある場合のみ上表の会計基準の取扱いを受ける。 |
なお、低価法は洗替低価法による。
切放し低価法は、平成23年4月1日以後開始し、かつ、平成23年6月30日以後最初に終了する事業年度より廃止される。切放し低価法を適用していた棚卸資産については、平成23年4月1日以後に開始し、かつ、平成23年6月30日以後最初に終了する事業年度は、直前の事業年度末の評価額をもって取得価額とみなす経過措置が設けられている。(平23改令附5)
(1) |
洗替低価法
帳簿価額を時価まで切り下げた後、翌期以後は帳簿価額を再び元の取得価額に戻して、常に取得価額と期末時価とを比較する方法 |
(2) |
切放低価法(注)
帳簿価額を時価まで切り下げた後、翌期以後は帳簿価額を取得額とみなして、それと期末時価とを比較する方法 |
(注)1 |
切放低価法は棚卸資産の受入れ及び払出しに関する帳簿に翌期以後の計算の基礎とすべきものとして、その低価法による評価額を記載する。 |
2 |
低価法は本来、種類等の異なるごとに判定するが、法人が事業の種類ごとに、かつ5(1)の区分ごとに一括して計算した場合には認められる。 |
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洗替低価法 |
切放低価法 |
A(取得時)時点 での処理 |
商品 100/現金預金100 |
商品 100/現金預金100 |
B(期末)時点 での処理 |
商品低価切下額 10/商品 10 |
商品評価額 10/商品 10 |
Cの期首時点 での処理 |
商品 10/商品切下額戻入益 10
(再度もとの取得価額に戻す) |
― |
Cの期末時点 での処理 |
商品低価切下額 5/商品 5
(期末には常に取得価額と時価を比較) |
―
|
帳簿価額の90円と時価の95円を比較して下がっていないので、90円未満に下がらない限り処理はしない。 |
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会計基準では棚卸資産の評価について平成20年4月1日以降(早期適用も可能)収益性の低下による評価基準(強制低価法)が採用されることとなったが、税法での改正はないため、税務上、棚卸資産の評価について原価法を選択している場合は、計上された評価損が否認されることになる。これは、原価法から低価法へ評価方法の変更を行うことによって回避されるが、その評価方法の変更については5(3)の手続による。この場合、原則として「3年を経過していない」との理由により却下されることはない。
(3) 特別な評価の方法(令28の2)
納税地の所轄税務署長の承認を受けた場合には、承認を受けた日の事業年度以後、特別な評価方法によることができる。 |