目次 II-11


11 税制適格退職年金から勤労者退職金共済機構への移行


Question
 当社は資本金1億円、従業員200人の製造業で、税制適格退職年金制度を導入しています。このたび、退職費用の増加に対処するために、中小企業退職金共済制度を導入することを検討しています。この場合の留意事項を説明してください。



Answer

(1) 独立行政法人勤労者退職金共済機構とは

 中小企業退職金共済制度は、中小企業の退職金制度を充実させるため、中小企業退職金共済法に基づき昭和34年に発足した制度です。この事業の運営に当たっているのが、同法に規定されている独立行政法人勤労者退職金共済機構です。この機構が独立行政法人に移行したのは、平成15年10月です。


(2) 税制適格退職年金の制度から中小企業退職金共済制度への引継措置

 適格退職年金契約を締結している中小企業の事業主が、平成24年3月31日までの間に新たに中小企業退職金共済制度に加入した場合において、事業主の申し出によって、適格退職年金契約の相手方が当該適格退職年金契約に係る被共済者の持分額の範囲内の金額を勤労者退職金共済機構に引き渡したときは、中小企業退職金共済制度加入時の掛金月額等に応じて得た月数を中小企業退職金共済制度において掛金を納付した月数として通算することができます。(企業年金法附28)

(1) 通算月数

 通算月数は、適格退職年金契約の受益者等であった期間の月数(120月が限度)を超えることはできないことになっています。(企業年金法附28)

 なお、平成16年度の年金制度改正で、この120月の月数の限度は撤廃されました。(施行日:平成17年4月1日、国民年金法等の一部を改正する法律36)

(2) 掛金助成について

 適格退職年金制度から中小企業退職金共済制度に引継ぎをする事業主は、新規加入掛金助成制度は受けられません。ただし、中小企業退職金共済制度に移行後、18,000円以下の掛金月額を増額する事業主は、増額分の3分の1を増額月から1年間、国の助成が受けられます。なお、20,000円以上の掛金月額からの増額は助成の対象になりません。

(3) 一部引継ぎについて

 被共済者の持分額の範囲内であれば、一部でも引き継ぐことはできますが、その場合、従業員に不利益を与えることのないことと、将来の退職金額の維持について留意する必要があります。

(4) 被共済者持分について

 受益者等であった期間について適格退職年金契約受託機関等に納付された退職年金等積立金であって、事業主が負担した部分のうち、被共済者の持分として、厚生労働省令で定める方法によって算定した金額をいいます。

(5) 適格退職年金で積立不足がある場合

 中小企業退職金共済制度への移行は、適格退職年金制度解除時における従業員の持分額の範囲内の金額を、中小企業退職金共済の共済金の納付月数として引継ぎ通算することとされています。したがって、積立不足を解消しなければ移行できないということではありません。

 

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