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X.外国税額控除

ポイント
 ・ 日本では、内国法人が得た所得について、全世界所得課税の考えを採用しているため、法人の所得に対して日本と海外の2国で課税される問題が生じます。こういった二重課税の排除を目的に、外国税額控除制度が導入されています。
 ・ 内国法人が直接納付した外国税額を、国内の税金から控除する制度を「直接税額控除」といいます。
 ・ 「間接税額控除」は、平成21年度税制改正により廃止されました。
 ・ その他、「みなし外国税額控除」や「課税済留保金額の損金算入制度」も二重課税排除の考え方からは外国税額控除に含まれます。


1 直接税額控除

 「直接税額控除」とは、日本国内にある内国法人が、その支店や取引先等がその海外居住地国において課税された外国税額を、日本国内で納付する税額から直接控除して税金を納付できる制度をいいます。

 この場合に発生する外国税額は、例えば、国内法人の支店等が納付した外国法人税や取引先との間でやり取りをしている使用料や受取利息、配当等の支払時に源泉徴収される外国源泉所得税などがこれに該当します。

 すなわち、所得の源泉地国と居住地国との二重課税を排除することが可能となります。


2 間接税額控除

 「間接税額控除」とは、外国に設立等した一定の要件を満たす外国子会社が納付した外国税額控除のうち、国内法人が受ける配当に対応する部分を国内の法人税等から控除して税金を納付する制度をいいます。

 なお、この間接税額控除は平成21年度税制改正により廃止され、別途、「外国子会社配当金益金不算入制度」が創設されました。



3 みなし外国税額控除

 「みなし外国税額控除」とは、別名「タックス・スペアリング・クレジット:Tax sparing credit」と呼ばれ、発展途上国との租税条約において、その発展途上国の税額につき減免されている法人税額等がある場合には、その減免された法人税額等につき、発展途上国において実際に納付したものとみなして外国税額控除の適用を認める制度をいいます。

 なお、一般的に、大部分の発展途上国では、自国の経済発展を進めるため外国からの企業や工場の誘致に尽力し、その誘致手段の一環として税制上各種の減免等優遇措置を設けています。

 こういった状況を考慮し、これらの発展途上国向けの投資を行っている先進国で、上記の減免措置を無視して課税を行うことはその発展途上国における減免措置の効果が半減してしまうことは明らかです。

 したがって、この「みなし外国税額控除」は、租税条約によりその減免がなかったとした場合に納付したであろう法人税等を外国法人税とみなして、この制度を適用することができます。

 こういった理由により、みなし外国税額控除(タックス・スペアリング・クレジット)制度が導入されています。

 なお、現在では、シンガポールやフィリピン、ブラジルなどがその代表的な発展途上国とされています。


 なお、タックス・スペアリング・クレジット制度については、『図解とポイント解説ですっきりわかる [最新] 国際税務ABC』(辻・本郷税理士法人 編著)X−15以降を参照して下さい。

 

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