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第2章 株式交換・移転の税務 |
まず、株式交換・移転の税務において、重要な用語の意義を見ておくことにする。 1 完全親会社 ある会社の100%の発行済株式総数を有する会社(商法第352条)のことである。 2 特定親会社 税法の定義であり、商法第352条(株式交換)と商法第364条(株式移転)に基づいて完全親会社となる法人(租税特別措置法第67条の9)のことである。 3 完全子会社 ある会社から100%の発行済株式総数を保有されている会社(商法第352条)のことである。 4 特定子会社 税法の定義であり、商法第352条(株式交換)と商法第364条(株式移転)に基づいて完全子会社となる法人(租税特別措置法第67条の9)のことである。 商法上の用語と税法上の用語では、商法上の用語の方が広い概念である。すなわち、「特定親会社」「特定子会社」は、株式交換等により100%親子関係となる会社のみの意味であるが、「完全親会社」「完全子会社」には、その他の株式買収や現物出資、事後設立等による100%親子関係の創出も含んでいる(図表参照)。
◆設 例 交付金銭等なし、株主数50人未満の場合 【前 提】 (1) A社は次のような資産状況のB社の株式を時価で受け入れるものとする(B社の( )内数値は時価を示す)。 (2) 申告調整により課税の繰延要件を満たすものとする。
【条 件】 (1) A社は株式交換に際して、新株800株を発行する (2) 交付金銭等はなし (3) B社の株主数は50人未満 【会計上の処理及び税務上の処理】(単位:千円) (1) A社の会計処理
(2) A社の税務処理
(3) ∴A社の申告調整
(4) A社の別表5(1)
(5) Yの会計処理
【説 明】 (1) 特定親会社A社での処理 特定子会社の株主数が50人未満の場合、課税繰延要件を満たすには、特定親会社(A社)における特定子会社の受入価額(B社株式価額)について、B社株式をY及びその他の株主における帳簿価額以下で受け入れることが必要となるので、税務上の受入価額は111,000千円となる。したがって、会計上の受入価額200,000千円と税務上の受入価額111,000千円との差額89,000千円を申告調整する。 (2) 特定子会社の旧株主 交付金銭等はないので、課税は生じない。 |