II-1 |
第II部 持株会社の法務&税務 |
第1章 持株会社の法務 |
持株会社方式は、持株会社となる会社が傘下にいくつかの子会社を持ち、各子会社が各々の事業を独立して営むとともに、持株会社は各子会社の株式の相当数を所有することによって経営的に支配し、グループとしての戦略を立ててグループ全体で活動をするという方法である。事業部門を分権化し、それらの業績を明瞭にして、その結果を経営上の判断資料や指針とする方法としては、“事業部制”や“カンパニー制”と呼ばれるものがある。これらの方法と持株会社方式との大きな違いは、持株会社方式は、持株会社と事業子会社という別々の企業によって構成される組織であるのに対し、事業部制とカンパニー制は、1つの会社内の内部組織に関する制度であるという点である。事業部制は、1つの会社にいくつかの事業部を設け、事業部単位で売上総利益が算出され、損益計算書が作られて業績が測定される。 またカンパニー制は、1つの会社内における組織ではあるが、社内的に独立法人とみなされ、設備投資、人事上の決定権限まで与えられ独立性を持つ方法で、損益計算書だけでなく、貸借対照表もカンパニー単位で作られる。この点で事業部制より持株会社方式に近いといえるが、独立法人とみなされるのは社内においてだけであり、法的に独立した法人ではないので、その意味では権限と責任に限界があるといえる。 分権化された事業を行う部門が内部組織の問題である事業部制やカンパニー制では、その名称や構成などについて法的な拘束や制約はない。しかし、持株会社方式においては、持株会社と事業子会社はそれぞれ独立した法人であるから、各々が商法、税法等に拘束されることになる。
持株会社には、子会社株式を保有するという持株会社としての機能の他に、本業として事業を営んでいる事業持株会社と、株式を保有している子会社の管理機能以外の事業を持たない純粋持株会社があるが、純粋持株会社方式を採ることによりもたらされるメリットとしては、次のようなものがあげられる。 (1) 経営と事業の分離によりグループ全体を戦略的に見ることが可能となる (2) 経営判断の迅速化・経営責任の明確化が図れる (3) リスクの分断が可能となる (4) 円滑な労務管理が可能となる
純粋持株会社を設立する方法としては、次のような方法があげられる。 1 株式移転方式 2 株式交換による方法 3 会社分割制度 4 抜け殻方式 5 株式買収方式 6 第三者割当増資方式 7 三角合併方式 1.逆三角形合併 2.正三角形合併 |