目次 Q4


Question
 固定資産をめぐる会計処理の原則
 固定資産の評価と貸借対照表における記載方法について会社計算規則はどのように規定しているのでしょうか。

Answer
ポイント (1) 償却すべき資産については、相当の償却をしなければなりません。
(2) 具体的な償却方法や耐用年数等については一般に公正妥当と認められる企業会計の基準等に従うことになります。
(3) 減損損失の認識についても減損会計基準等に準拠した処理および表示が必要とされています。


 相当の償却

 償却すべき資産については、事業年度の末日(事業年度の末日以外の日において評価すべき場合にあっては、その日)において、相当の償却をしなければならないと規定されています(計規5丸数字2)。ここで、償却すべき資産とは、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行(会431、計規3)によって償却すべきものとされている資産であり、土地等の非償却資産は含まれません。

 また、償却のタイミングについては、事業年度の末日とされていますが、事業年度の末日以外の日において償却すべき場合にあっては、その日となります。これには臨時決算日(会441丸数字1)のほか、会計帳簿作成の適時性(会432丸数字1)から、たとえば毎月末日とするような場合には、その日も含まれることになります。

 なお、相当の償却を実施するにあたって具体的な償却方法や耐用年数については、会社計算規則は何も指示をしていないため、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行に委ねられることになります。例えば耐用年数については、いわゆる法定耐用年数(減価償却資産の耐用年数等に関する省令に定める耐用年数)が用いられることになります。


 減価償却累計額の表示

 会社計算規則は、有形固定資産に対する減価償却累計額の表示方法について次のように指示しています。

表示方法 説   明 根拠条文
間接控除
資産項目別表示
 当該各有形固定資産の項目に対する控除項目として、減価償却累計額の項目をもって表示する方法 計規79丸数字1
直接控除
資産項目別注記
 当該各有形固定資産の金額から直接控除し、その控除残高を当該各有形固定資産の金額として表示した上で、各資産の資産項目別の減価償却累計額を注記する方法 計規79丸数字2
計規103三
間接控除
一括表示
 有形固定資産に対する控除項目として一括して表示する方法 計規79丸数字1但書
直接控除
一括注記
 当該各有形固定資産の金額から直接控除し、その控除残高を当該各有形固定資産の金額として表示した上で、各資産について一括した減価償却累計額を注記する方法 計規79丸数字2
計規103三

 実務上は、多くの会社が「直接控除・一括注記」の方法によっています。この場合、次のように表示および注記されます。

貸借対照表
 固定資産
  有形固定資産
   建  物
   機械装置
   工具備品
     …
   建設仮勘定

    ×××
×××
×××
×××
×××
××
注記表
【重要な会計方針に係る事項に関する注記】
1.…
2.…
3.…
【貸借対照表に関する注記】
1.…
2.有形固定資産の減価償却累計額 ××


 減損損失の認識

 事業年度の末日において予測することができない減損が生じた資産または減損損失を認識すべき資産については、その時の取得原価から相当の減額をした額を付さなければなりません(計規5丸数字3二)。いわゆる減損会計の適用を求めたものといえます。ただし、どのような場合に減損損失を認識すべきかについての具体的な指示がないため、相当の償却の場合と同様に、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準等に従うことになります。具体的には、金融商品取引法上の開示を行う必要がある会社をはじめ会計監査人設置会社ならびにそれらの子会社等にあっては、減損会計基準に従うことが求められ、それ以外の会社においては、中小企業の会計に関する指針に従って減損損失を認識することになります。

 一方、会社計算規則は、有形固定資産に対する減損損失累計額の表示方法について次のように指示しています。

表示方法 説  明 根拠条文
直接控除  各有形固定資産の金額(減価償却累計額を当該有形固定資産の金額から直接控除しているときは、その控除後の金額)から直接控除し、その控除残高を当該各有形固定資産の金額として表示する方法 計規80丸数字1
独立間接控除
資産項目別表示
 減価償却を行う各有形固定資産に対する減損損失累計額について、当該各有形固定資産の項目に対する控除項目として、減損損失累計額の項目をもって表示する方法 計規80丸数字2
独立間接控除
一括表示
 減価償却を行う各有形固定資産に対する減損損失累計額について、これらの有形固定資産に対する控除項目として、減損損失累計額の項目をもって一括して表示する方法 計規80丸数字2但書
合算間接控除  減損損失累計額を減価償却累計額に合算して、減価償却累計額の項目をもって表示した上で、減価償却累計額に減損損失累計額が含まれている旨を貸借対照表に関する注記に記載する方法 計規80丸数字3
計規103四

 実務上は、多くの会社で直接控除の方法で貸借対照表に表示しているようです。


 無形固定資産に関する表示上の取り扱い

 無形固定資産に対する減価償却累計額および減損損失累計額は、当該各無形固定資産の金額から直接控除し、その控除後残高を当該各無形固定資産の金額として表示することが求められています(計規81)。

 

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