目次 II-6 2


第6章 流動負債

2.工事未払金

(1)勘定科目の概要

 工事未払金とは、建設会社が発注者から請け負った請負工事契約の工事費のうち未払金額を示す負債の勘定科目であり、一般企業の買掛金に相当するものです。

 この工事未払金には、労務費や外注費のみならず、工事原価に算入される材料貯蔵品等の購入代金も含まれます(勘定科目分類)。一方、販売費及び一般管理費の支払いや、固定資産の取得や建設のための未払金は含まれません。


(2)会計処理

 原材料代金や外注費につき掛仕入れを行った場合、工事未払金を計上します。この計上金額は、一般企業の買掛金同様に、税抜方式を採用する場合であっても取引にかかる消費税額等を含みます(勘定科目分類)。そして、現金や手形による支払いをした際に、工事未払金を減額します。

 この工事未払金は、その発生原因が完成工事と未成工事のいずれであるかにかかわらず、確定債務を計上するのが原則です。しかし、決算時において、工事は完成しているもののその工事支払額が確定できない完成工事についても、その金額を見積もって工事未払金として計上します。


【事例II−6−3】材料の掛仕入れと決済

(1)

協力会社に設備工事一式を契約金額10,000千円(消費税別)、翌月末日に現金60%・手形40%の支払条件で外注し、当月この工事が完了した。
(借方)未成工事支出金  10,000 (貸方)工事未払金   10,500
      (外注費)
    仮払消費税等      500
[消費税]設備工事は資産の譲渡にあたるため、課税取引となります。
(2) 翌月末に、条件どおり支払った。
(借方)工事未払金    10,500 (貸方)現金預金     6,300
                        支払手形     4,200
 現金預金=工事未払金10,500千円×60%=6,300千円
 支払手形=工事未払金10,500千円×40%=4,200千円



(3)税務処理

 法人税法上、原則として決算日において債務が確定している費用については、損金に算入できます。「債務が確定している」とは、次の3つの要件を満たすことが必要です(法基通2−2−12)。

(1)  当該事業年度終了の日までに当該費用にかかる債務が成立していること
(2)  当該事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること
(3)  当該事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること

 なお、完成工事原価となるべき費用の額の全部または一部が事業年度終了の日までに確定していない場合には、同日の現況によりその金額を適正に見積もる必要があります(法基通2−2−1)。

 

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