目次 II-4


4 指名債権の二重譲渡と優劣

 指名債権が二重に譲渡された場合、譲受人相互の間の優劣は、確定日付のある通知が債務者に到達した日時、または確定日付ある債務者の承諾の日時の先後によって決すべきものとされています(最判昭和49年3月7日民集28・2・174)。

 これは、民法467条の趣旨が、債権を譲り受けようとする者は、債務者に本当に債権が存在するのか、他に優先する権利者がいないかを確認しようとするのが通常なので、債務者に債権に関する情報を集約することにして、債務者にいわば情報センターの役割を果たさせ、債権取引の安全を図ろうとすることにあるからです。そのような趣旨からすれば、確定日付の先後ではなく、債務者に到達した日の先後が重要になるわけです。

 それでは、確定日付のある債権譲渡通知が債務者に同時に到達した場合の優劣はどのように決すべきでしょうか。

 判例は、「指名債権が二重に譲渡され、確定日付ある各譲渡通知が同時に債務者に到達したときは、各譲受人は、債務者に対し、それぞれの譲受債権額全額の弁済を要求することができ、譲受人の一人から弁済の請求を受けた債務者は、他の譲受人に対する弁済その他の債務消滅事由が存在しない限り、弁済の責を免れることはできない」(最判昭和55年1月11日民集34・1・42)と判示しています。つまり、各譲受人には優劣がなく、いずれの譲受人も自分が権利者であるとして債務者に請求できることになります。

 

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