目次 II



 当社は、乙社に対して売掛金3,000万円の債権を有していますが、乙社は、弁済に代えて、乙社の丙社に対する売掛金債権を当社に譲渡すると言っています。当社はどのような対応をしたらよいでしょうか?

A:
 乙丙間の債権譲渡を受けるにあたり、乙社と債権譲渡契約書を締結すべきでしょう。債権譲渡のしくみを理解し、債権譲渡通知の重要性をおさえましょう。


【債権譲渡契約書サンプル】


債権譲渡契約書


 ○○○○株式会社(以下「甲」という)と株式会社○○○○(以下「乙」という)は、以下のとおり債権譲渡契約を締結する。

第1 条 乙は、甲に対する甲・乙間の平成○○年○○月○○日付○○売買契約に基づく代金債務金○○○円の弁済のため、乙が丙に対して有する下記債権を甲に譲渡する(以下「本件債権譲渡」という)。


 乙が、株式会社○○○○(以下「丙」という)に対して有する乙・丙間の平成○○年○○月○○日付売買契約に基づく○○○代金債権金、金○○○円(以下「譲渡債権」という)

第2 条 乙は丙に対し、遅滞なく確定日付ある証書をもって本件債権譲渡の通知をなし、または丙の確定日付ある証書による承諾を得なければならない。※1
第3 条 乙は甲に対し、譲渡債権につき丙から乙に対抗しうる何らの事由もないことを保証する。※2
第4 条 乙は、甲の承諾なく、譲渡債権を取立て、譲渡し、その他甲の権利行使を妨げてはならない。
第5 条 乙は甲に対し、別紙のとおり債権譲渡通知書を作成し押印の上交付し、丙に対して内容証明郵便にて発送する権限を与える。※3

 平成○○年○○月○○日

    (甲)住所
氏名

          印
    (乙)住所
氏名

          印




※1  債権譲渡の通知は、譲渡人から債務者に対してしなければなりません。譲受人としては譲渡人が債務者に通知をしてくれないとどうしようもありませんから、債権譲渡契約にあたっては、譲渡人に通知を義務付けるような条項を入れる必要があります。

※2  債権譲渡は、債権の同一性を保ったまま債権を移転する契約ですので、債務者は債権譲渡の通知を受けたとしても、譲渡人に対して対抗することができた事由を譲受人に対しても対抗することができます(民法468条2条、異議をとどめない承諾につき同条1項参照)。債権の譲受人としては、自分のあずかり知らない抗弁事由があっては困りますので、このような条項を入れておくとよいでしょう。

※3  債権譲渡の通知を確実に発送するために、債権譲渡契約の時点で譲渡人に通知書を作成させて、譲受人が発送できるようにしています。

 

目次 次ページ