目次 Q9


Q9 課税標準


Question

 今回導入された外形標準課税ではどのような課税標準により税額を算定するのですか。



Answer

ポイント 外形標準課税の課税標準は次の3つです。
1. 所得
2. 付加価値額
3. 資本等の金額



解説

1.外形基準の類型

(1) 外形基準にはどのようなものがあるか

 外形基準には多種多様なものがありますが、外形標準課税の導入を従来から検討していた税制調査会によると、外形基準の主なものとして次の11の基準が提示されていました。

主な外形基準
外形基準(課税基準) 考えられる課税標準の考え方
(1)資本金又は出資金 資本の金額又は出資金額(資本積立金を含む)
(2)売上高 事業活動を通じて得た営業上の売上高
(3)収入金額 営業上の売上高+営業外収益等
(4)経費(特定経費) 事業活動に要した経費(又は特定経費)
(5)事業所家屋面積 事業の用に供している家屋の床面積
(6)事業所用地面積 事業の用に供している土地の面積
(7)事業用固定資産評価額 事業の用に供している固定資産(家屋、償却資産等)の価格(評価額)
(8)従業者数 事業活動に従事している従業者の数
(9)給与総額 従業者に対して支払った給与の総額
(10)付加価値(加算法) (例)利潤+給与総額+支払利子+賃借料
(11)付加価値(控除法) (例)売上高−仕入高


(2) 望ましい外形基準

 税制調査会は平成11年7月に、外形基準のあり方を検討するにあたり、基本的な考え方にもとづいて、次の4つの類型を望ましい外形基準として提示しました。

(1) 基本的な考え方

a. 事業活動規模との関係、普遍性、中立性
事業活動の規模をできるだけ適切に表すこと
特定の地域や業種の法人に偏らないで、多様な法人に普遍的に見られる基準であること
企業の経済活動に対して中立的な基準であること
課税標準の安定性が図られること
b. 簡素な仕組み、納税事務負担
税制としてわかりやすいこと
法人の通常の会計処理や他の税の納税のために既に行っている作業の中で把握できたり、既存資料が活用できるなど、納税者の事務負担が大きくならないこと


(2) 外形基準の4つの類型

a. 事業活動によって生み出された価値
法人の事業活動の規模は、その事業活動によって生み出された価値の大きさという形で把握することが可能と考えられる。
その算定は、生産要素である労働、資本財及び土地への対価として支払われたものが当該価値を構成すると考えられることから、法人の各事業年度における利潤に、給与総額、支払利子及び賃借料を加えることによって行うことができる(以下、事業活動価値という)。
事業活動価値は、法人の人的、物的活動量を客観的かつ公平に示し、各生産手段の選択に関して中立性が高い課税標準となると考えられる。
事業活動価値を課税標準とする場合には、基本的には、法人事業税全体をこれによって課税する仕組みとすべきと考えられるが、当面の経過的な措置として、所得基準による課税と併用することが考えられる。
b. 給与総額
給与総額は、事業活動価値の概ね7割を占めていることから、人的活動量のみでなく、事業活動の規模を相当程度反映していると評価でき、実務上の簡便性もある。
給与総額のみを法人事業税の課税標準とするよりも、所得基準による課税と併用することが適当である。
給与総額による課税と所得基準による課税とを併用することとした場合には、事業活動価値による課税に近似する仕組みとして性格付けることができる。
c. 物的基準と人的基準の組合せ
給与総額に物的基準を組み合わせることにより、物的側面と人的側面の両面から、事業活動の規模をより適切にとらえられるのではないかと考えられる。
物的基準としては、事業所家屋床面積の他、事業用資産(家屋及び償却資産)の価額や、各事業年度の事業活動に用いられた資産に相当するものとして、それらの資産の減価償却費を用いることも考えられる。
この場合にも、所得基準による課税と併用することが適当と考えられる。
d. 資本等の金額
資本等の金額(資本金と資本積立金額の合計額)に着目した簡素な課税の仕組みとして、事業所数や従業者数を加味しながら、資本等の金額の大きさに応じた階層区分毎に税額を定める方式が考えられる。
これらの仕組みについては、所得基準による課税や他の外形基準による課税と組み合わせて用いることを基本として考えることが適当である。




2.外形標準課税の検討過程

 外形標準課税の導入に際しては、税負担の変動に対し、税負担能力に配慮する等の観点から、所得基準による課税と外形基準による課税とを併用することが望ましいと考えられ、次のような検討過程を経て、今回の外形標準課税が導入されることとなりました。



3.今回の改正による課税標準

 今回の改正で導入された外形標準は付加価値割と資本等の金額です。ただし、外形基準と従来の所得基準は併用されるため、所得割、付加価値割及び資本割の合算額によって法人事業税が課されます。

 所得割、付加価値割および資本割の課税標準は、次のとおりです。(地方税法72条の12)

 (1) 所得割    各事業年度の所得及び清算所得
 (2) 付加価値割  各事業年度の付加価値額
 (3) 資本割    各事業年度の資本等の金額

 

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