目次 V-5


5 分離課税の土地建物等の譲渡所得になるもの・ならないもの

(1) 土地、建物等を譲渡した場合の所得区分

 土地、建物等を譲渡した場合の所得は、所得税法第22条にかかわらず、分離課税とされています(措法31、32)。

 営利を目的として相当の期間にわたり継続的に行う資産の譲渡をした場合の所得や不動産業者の行う棚卸土地等の譲渡をした場合の所得は、事業所得になりますが、その譲渡した資産がおおむね10年以上所有していたものである場合の所得は、譲渡所得になります(所法33丸数字2一、所基通33−3)。


(2) 長期譲渡所得の分離課税

 譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超える土地建物等を譲渡した場合の所得は、分離長期譲渡所得になります(措法31丸数字1)。


(3) 共有地を持分割合で分割した場合

 共有地を持分の割合により分割したときは、土地の価額の比が持分割合におおむね等しい場合は課税されません(所基通33−1の6)。


(4) 借家人が受け取った立退料

 借家人が家屋の立退きに際し立退料を受け取った場合、借家権の消滅の対価に相当する部分は、譲渡所得(所基通33−6)として、その他の部分は一時所得(所基通34−1(7))として課税されます。


(5) 借家権の譲渡

 借家権の譲渡による所得は、譲渡所得になりますが、借地権のように土地建物等には含まれませんので、分離課税にはならず、総合課税の対象となる譲渡所得に該当します(措通31・32共−1)。


(6) 収用に伴う借家人補償金

 借家人が収用等に伴い受け取った借家人補償金を、その建物と同じ用途に利用する土地建物の取得に充てた場合は、その借家人補償金を代替資産の取得に充てたものとみなし、「収用等の場合の課税の特例」の適用を受けることができます(措通33−30(注))。(ただし、総合譲渡=所基通33−6)

 また、第1種市街地再開発事業の施行地区内に借家権を持っていた人がやむを得ない事情で地区外へ転出する場合に受け取る補償金が、(1)権利変換計画で借家権が与えられないように定められたことによって受ける補償金や(2)権利変換を希望しない旨の申出が認められて受ける補償金である場合には、その借家人補償金は、対価補償金として「収用等の場合の課税の特例」の適用を受けることができます(措通33−31)。(ただし、総合譲渡=所基通33−6)


(7) 転用未許可農地の権利の譲渡

 転用未許可農地の権利の譲渡は、分離課税の譲渡所得になります(措通31・32共−1の2)。


(8) 固定資産である土地に区画形質の変更等を加えて譲渡した場合の所得区分

 固定資産である土地に区画形質の変更等を加えて譲渡した場合は、変更を加えた時点で固定資産から棚卸資産に転化したと考えられますので、事業所得又は雑所得として課税されます(所法33丸数字2一、所令81、所基通33−4)。

 なお、10年以上所有していたものについては、区画形質の変更時までの利益は譲渡所得、その後の利益は事業所得又は雑所得として計算することも認められています。この場合の譲渡所得に係る収入金額は、その区画形質の変更等の着手直前における土地の価額とされます(所基通33−5)。


(9)  区画形質の変更が小規模な土地や土地区画整理事業等のあった土地を譲渡した場合

 区画形質の変更等を加えた土地が小規模(3,000平方メートル以下)であるときや区画形質の変更等が土地区画整理事業や土地改良事業等により行われたときの土地を譲渡する場合、その土地は、なお固定資産のままとみなして、その土地等の譲渡は、譲渡所得として取り扱われます(所基通33−4(注))。


(10) 土石等の譲渡をした場合の所得区分

 土地の所有者が土石等を譲渡した場合は、譲渡所得になります。

 ただし、営利を目的として継続的に行う場合は、事業所得になります(所基通33−6の5)。


(11) 資産の譲渡に関連して追加的に受ける一時金

 将来の不確実な事実に基因して支払を受ける追加払的な一時金ですから、その一時金は一時所得となり、金銭の支払が具体的に確定した年分の一時所得として課税されます。

 なお、実測面積が公募面積を上回ることが判明したことにより支払を受ける一時金その他の資産の譲渡の対価であることが明らかな一時金は、譲渡所得として土地を譲渡した年分の譲渡所得に加算されます(所法33、34)。

 

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