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5 臨時計算書類の意義と利用法 |
【解 説】 1 意 義 臨時決算を行うには期中の特定の日を臨時決算日として定め、その日の会社の財産状態を把握するための貸借対照表と、期首からその日までの損益状況を反映させた損益計算書を作成することが必要です。この貸借対照表と損益計算書を臨時計算書類といいます(会441(1))。臨時計算書類について株主総会の承認を受けた場合には、期中の利益の額と自己株式の処分対価の額を分配可能額に加えることができます。ただし、2の(4)のように株主総会の承認を受けなくてもよい場合もあります(会461(2)二)。 2 臨時決算の手続 (1)臨時計算書類の作成 臨時計算書類の作成は、その事業年度の開始の日から臨時決算日までの臨時会計年度の会計帳簿に基づき作成する必要があります(会計規92(1)(2))。 (2)監 査 監査役設置会社又は会計監査人設置会社においては、臨時計算書類は監査役又は会計監査人(委員会設置会社である場合には監査委員会及び会計監査人)の監査を受けなければなりません(会441(2))。 (3)取締役会の承認 取締役会設置会社においては、臨時計算書類(監査を必要とする場合は監査を受けたもの)について、取締役会の承認を受ける必要があります(会441(3))。 (4)株主総会の承認 臨時計算書類は、必要な場合には監査あるいは取締役会の承認を受けた後、株主総会の承認を受ける必要があります。ただし、(1)会計監査人の監査報告が無限定適正意見であること、(2)その会計監査報告に係る監査役等の監査報告に会計監査人の監査の方法又は結果を相当でないと認める意見がないこと等、臨時計算書類が法令及び定款に従い、株式会社の財産及び損益の状況を正しく表示しているものとされる場合には、株主総会の承認は必要ありません。 (5)計算書類の備置き及び閲覧 臨時計算書類は作成した日から5年間、その本店に備え置かなければなりません。株主及び債権者は臨時計算書類を営業時間内に閲覧することができます(会442(1)二、同(3))。 (6)公 告 臨時計算書類の公告については定めがありませんので不要です。 3 利用法 臨時計算書類の作成は上場会社が四半期決算による剰余金の配当を行ったり、株主や債権者に財政状態の速やかな開示をすることを想定したものです。しかし監査を受けたり株主総会の承認を要する場合があるなど、手続的には相当の手間がかかり、実務的にはどこまで利用されるかは不明です。 特殊な利用法としては、(1)子会社に経常的でない多額の利益が発生した場合に、臨時決算をして親会社に剰余金の分配をする、(2)大株主である前社長が死亡して、期中に生命保険金が入った場合に、相続人が取得した株を会社が自社株として取得し、株主の相続税の納税資金とする、などの場合に利用できそうです。なお、持分会社には臨時計算書類の規定がありません。 |