目次 III-Q17


Q17 株主総会のIT化

Question 商法改正により、株主総会のIT化ができるようになったそうですが、具体的にはどのようになったのでしょうか。

Answer
ポイント
(1) 商法改正により株主の承諾を条件として、株主総会の召集通知を電磁的方法によることができるとされました。
(2) 具体的には、召集通知のEメールでの送信、CD−ROMの添付などが考えられます。
(3) 召集通知に添付すべき計算書類や監査報告書あるいは、参考書類の送付も電磁的方法によることが認められました。
(4) 株主総会に出席しない株主も取締役会の決議をもって、電磁的方法により議決権を行使することが可能となりました。
(5) 会社に備置すべき書類である株主名簿、端株原簿、社債原簿、取締役会議事録等、決算広告も電磁的記録としてできることとなりました。


 解 説 ▼

 従来、株主総会の運営の実務において、定足数を満たすために、召集通知を送ったうえに、電話で書面投票の送付を依頼したり、出席を依頼することも行われており、株式持合解消や個人株主の増大などによって、このような事務負担が増大してきていました。そこで、インターネットの普及した今日、インターネットを通しての議決権行使や株主提案を認めることによって、株主の権利行使の機会の増加、会社側の事務負担の削減を図ったのです。

【1】召集通知等の電子化

 Eメールによる召集通知では、本来召集通知に添付される貸借対照表、損益計算書、利益処分案、監査報告書、参考書類等をすべてEメールに添付するのは、サーバーの能力の問題上むずかしいと考えられますので、召集通知本文をEメールにより、その他の書類はURLリンクを添付することにより、インターネット上で閲覧させることが実務上考えられます。これにともない、Eメールによる議決権行使ができるようになり、わざわざ時間と費用をかけて総会に出席する必要がなくなりました。また、会社に備置すべき書類や決算公告も、自社のホームページ上でできるようになりました。

【2】IT化による問題点

 Eメールによる召集通知では、インターネット上で発信された事実および不着などの確認ができるようなものが実務上発行されません。召集通知の不発送は、株主総会の決議取消しにもつながり、大変な問題になります。また、インターネット上での改ざんや他人のメール使用の危険性、また、議決権行使の場合の本人確認の問題があります。現在のインターネット環境をみるとこのようなトラブルが発生しないとは言いきれません。

 決算公告については、通常は日刊紙等に貸借対照表の要旨を載せるだけですが、自社のホームページ上では貸借対照表の全表を掲載しなければならないため、より詳細な情報が取引先等に知られてしまうことになります。

 また、電磁的記録の保存の問題もあります。昨今のITの日進月歩は目覚しいものがあり、記録媒体がたとえば10年以上使用可能かという問題があります。OSのバージョンアップや入替えに伴い、将来ソフトが動作しなくなるといったリスクもあります。

 

目次 次ページ