目次 III-Q16


Q16 ストックオプションと税務

Question ベンチャー企業に関するニュースで、ストックオプションという言葉をよく耳にします。これは、どのようなものですか。

Answer
ポイント
(1) ストックオプションは、実績に連動する報酬として利用されています。
(2) 含み益と実現益の2つの利益から成ります。


 解 説 ▼
【1】新株予約権とストックオプション

 会社が、自社の発行する株式を、取締役や従業員に対して、あらかじめ定めた価格で一定の期間内に購入できる権利を与えることを、新株予約権の付与といいます。これは、平成14年4月施行の改正商法で導入されたものですが、この新株予約権を有利な価額で発行した場合に、この権利をストックオプションといいます。ストックオプションは新株予約権の一種なわけです。

 そのしくみは次図にあるように、まず低い株価のとき、例えば1株が500円のときに株式を購入できる権利を取締役や従業員に与えます。その後、会社の株価が、取締役の経営努力と従業員の勤務成果で上昇し、1株1,200円になったとします。この時点で、従業員は権利を行使して1株500円で購入するわけです。そして、株価がその後も順調に上昇し、たとえば1,500円になった時点で売却すれば売却益を得ることができます。このように、ストックオプションは会社の業績と自己の利益とが直接結びつく形になっており、このような特徴から業績連動型の報酬として利用されるわけです。


【2】税金の取扱い

 上の説明のように、ストックオプションを行使する人の受ける利益は、権利行使の経過から2段階になっているのがわかると思います。第1段階は、1,200円のものを500円で購入した権利行使の時点。第2段階は、購入した1,200円のものを1,500円で売った株式売却の時点です。

 税制面では、このストックオプションを税制適格なものと不適格なものとに分類しています。税制適格なものは、不適格なものに比し要件を厳しくしています。そして、税制適格なら、第1段階の権利行使時点では課税せず、第2段階の株式売却時点で譲渡所得税の課税を行います。他方、税制不適格のものは、権利行使時点で給与所得(この点については、税負担が概ね半分ですむ一時所得になるのではという主張もあります。)として課税し、株式売却時点で残りを譲渡所得として課税することとしています。結局、税制不適格なものは権利行使しただけで、現金としてはまったく手にしていないにもかかわらず、税が課せられる点に大きな違いがあります。


【3】導入することによる経営上のメリット

 有能な人材を確保するのに、たとえそれに見合う報酬を現在支払えなくても、将来、株式公開などによって株価が上昇したときに大きな報酬を約束することができます。またこれによって、経営意欲や勤労意欲の向上に結びつけることもできます。反面、未公開会社の場合は、権利付与時の株価の決定等について、適時の情報公開が要求されることになるでしょう。

 

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