目次 II-Q12


税務解説集:会社実務のポイント「Q12 親子会社間の取引に伴う寄付金」

Question バブル期に設立した子会社の整理に伴う債権放棄が、税務上寄付金の扱いを受ける可能性があると聞きました。この寄付金の問題については、どのように考えればいいのでしょうか。

Answer
ポイント
(1) 寄付金には損金算入限度額があり、全額損金算入できない可能性が大です。
(2) 子会社に対する貸付金の債務免除についても、免除するだけの相当な理由が必要です。
(3) 子会社には、資本関係だけでなくオーナーの出資の兄弟会社も含まれます。


 解 説 ▼
【1】債権放棄による貸倒損失は寄付金認定に注意

 事業遂行上必要な金額の判定が困難である等の理由で、寄付金は、損金算入限度額が設けられています。ですから、会社としては、損金のつもりで経理処理していても、税務調査により寄付金認定される場合があります。ご質問にありますように、子会社の整理に伴う貸付金の債権放棄による貸倒損失が寄付金の認定を受けることのないように、事前にしっかりと対応しておくべきです。

 まず、債権放棄は、債権者の一方的な意思表示によって、法的には債権はなくなります。しかしながら、回収可能な債権の放棄は、債務者に対して経済的利益を無償で供与したのと同じ効果がありますから、税務上は寄付金になります。

 法人税基本通達9−6−1(4)によれば、債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その貸金等の弁済を受けることができないと認められる場合、書面により債務の免除を行ったときは貸倒損失として損金算入が認められています。相当の期間とは何年かといえば、最低2年から3年と解してよいと思われます。書面によるためには、内容証明郵便を利用することになります。

【2】相当な理由とはどのようなものか

 法人税基本通達9−4−1(子会社等を整理する場合の損失負担等)と同9−4−2(子会社等を再建する場合の無利息貸付け等)によれば、子会社等の解散に伴う債権の放棄や債務の引受けは、より大きい損失を回避するため、やむを得ず行う等の相当の理由があれば寄付金には該当しないとされています。なお、この場合の子会社等には、資本関係を有するものだけでなく、人的関係、取引関係、資金関係において事業関連性を有する会社が含まれます。それゆえに、その会社のオーナーによる100%出資の別会社である兄弟会社も含まれます。

 さらに、業績不振の子会社に対する債権放棄が寄付金と認定されないためには、次の条件を満たす必要があります。

(1) 業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われること
(2) 合理的再建計画に基づくものである等債権放棄をしたことについて相当の理由が認められること

 ただし、債務超過の状態ではあるが、業績回復の途上にある子会社から、収益力のある事業の営業を譲り受けたうえで、子会社を清算し、貸付金の債権放棄をした場合には、子会社に事業を継続させておれば回収可能であった貸付金の放棄をしたことになりますから、子会社に対する贈与として税務上は寄付金になります。

 なお、上記(2)でいう「合理的な再建計画」とは、支援額の合理性、支援者の範囲の相当性および支援割合の合理性等、個別の事情に応じて総合的に判断しますが、たとえば、利害の対立する複数の支援者の合意による再建計画は、原則として、合理的なものとして取り扱われます(法基通9−4−2)。

 

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