目次 I-Q3


Q3 実地棚卸しの重要性

Question 従業員に棚卸しの重要性を理解させ、実地棚卸しを正確かつ効率的に行わせるにはどのようにすればよいでしょうか。

Answer
ポイント
(1) まず、棚卸しの意味および企業に与えるの重要性を理解させ、従業員の意識向上を図ることです。
(2) 棚卸しの日程、人員等のスケジュールを確立するとともに、効率的に実地棚卸しを実施できるように棚卸しツールを準備します。
(3) 単にカウントするだけの棚卸しではなく、過大もしくは不良在庫のチェック等の情報を収集できる戦略的棚卸しを目指します。


 解 説 ▼
【1】なぜ棚卸しが重要か

 棚卸しの対象資産である商品等は金額的に大きい重要な項目ですが、現金・預金等のように現金そのものや銀行の残高証明などの外部証拠との突合による一致の確認が通常できません。また、評価の客観性が保証しにくいという特性があり、粉飾決算に利用されがちな項目です。もちろん粉飾の意図がない場合でも、実地棚卸しを誤計上したときは利益に直接的な影響が出るため、利益をもとに計算する税金はもちろんのこと、経営計画にまで影響を与えることになります。

 同時に、棚卸しには資産の管理方法等の業務改善に役立つ情報を得るという側面もあり、効率的な棚卸しのできる会社ほど正確性が高いものです。

【2】適正な棚卸しを行うための注意点

 適正な棚卸しを行うためには、棚卸し方法を具体的に定めるとともに、日程、人員等のスケジュールや商品等配置図を作成し、担当者全員に周知徹底する必要があります。具体的には、次のような目的の帳票を必要に応じて作成・利用する必要があります。

PLAN 5W1Hの明確化…………… 棚卸し計画表
DO 責任の明確化……………… 棚卸し組織票
網羅性の確保……………… 棚卸し見取図
実在性の確保……………… 棚卸し原票配付回収一覧表
SEE 数量差異等の把握………… 棚卸し増減修正表

 棚卸しについての一般的な注意点としては、次のことがあげられます。

 ・ 棚卸し原票(商品現物にあらかじめ添付し、棚卸し時に回収する票)については、記入にはボールペンを用い訂正には検印を押印し、書き損じも含めすべてを回収すること。
 ・ 数量カウントはできれば2度、担当者を代えて1度目の結果を見ずに行い精度を上げること。
 ・ 不良品、長期滞留品については、棚卸しに先立ち良品と別管理するとともに管理の責任者を明確にすること。
 ・ 倉庫業者等への預け品に関しては、棚卸し日の在庫証明等を入手すること。
 ・ 棚卸し当日の入出庫については、保管場所を設けて別管理し、棚卸し対象か否かの区分を明確にすること。

【3】在庫管理がコストダウンの決め手

 製品ライフサイクルの短縮化、短納期化といった成熟社会においては、在庫管理の重要性が増大しています。商品(資材)を必要とする時期、必要量、適正価格で購買し出荷することが全社的なコストダウンの決め手になります。在庫管理制度を利益獲得に貢献するツールとするために、棚卸し情報を活かすことが重要となってきます。

 同時に棚卸し品の管理を効率的に行うために、ABC(パレート)分析を行い、重要性の高いA品目は定期発注方式、重要性の低いC品目には簡易なダブルビン方式(ビンを2つ用意しておき、ひとつが空になった時にひとつ分発注する方法)、中間のB品については定量発注方式で対応することなども棚卸し情報から読み取る必要があります。どの業務にも共通のことですが、問題意識を持ち重要性のあるものに経営資源を投入することが業務改善の要諦です。

 

目次 次ページ