目次 III-Q19


Q19 従業員持株会の活用


 Question 19

社員の財産形成と相続対策が同時にできる方法に従業員持株会を活用した対策があるそうですが、どのような内容ですか。

ポイント オーナーの持株の一部を、従業員持株会へ配当還元価額で売却すれば相続財産がかなり減ります。


 Answer

■従業員持株会への自社株譲渡

 会社オーナーの持株を減らす方法の1つに従業員持株会を活用した対策があります。

 すでにふれたように、取引相場のない株式の評価は、その会社規模により、類似業種比準価額方式、純資産価額方式、あるいはこれらの併用方式により行われますが、同族株主でない従業員については、例外的な評価方法(配当還元方式)により評価されるため(こちらの方が一般的に評価が低い)、この評価方法の違いを利用して、対策を行います。具体的には、従業員持株会を設立して、そこへオーナー所有の自社株を売却します。(従業員持株会に対して第三者割当増資をする方法もあります)


■議決権が気になる場合

 ここで、従業員に株式を保有させたはいいけど、議決権が気になるという場合には、従業員持株会に放出する株式を普通株式から議決権のない配当優先株に変えることができます。議決権のない配当優先株は、商法第242条の規定により、定款をもって発行済株式総数の3分の1以下であれば配当優先株とすることができます。ただ、注意すべきは、議決権のない配当優先株は、会社が所定の優先配当をしなかったときは、議決権が復活するということです。

 相続対策としては、比較的短期間で手続も容易ですから、直前対策として有効です。


■対策上の注意点

 従業員持株会を活用した対策を実行する際には、次の点に注意してください。

 (1)  後継者がなく将来的にM&Aを考えている会社には向かない。
 (2)  分散するときは配当還元価額だが、資本政策等でオーナーが今度買い集めるときは、類似業種比準価額方式、純資産価額方式、あるいはこれらの併用方式による価額で買わなければならないということ。
 (3)  配当はずっと続けていかなければならないということ。
 (4)  定款に株式の譲渡制限の規定を設けておくこと。
 (5)  従業員持株会規約に、退職時に保有株式を従業員持株会に売却する旨を規定しておくこと。
 (6)  売却価額の規定を設けておくこと。
 (7)  株券は不発行にしておくこと。

 

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