目次 I-Q1


I 改正された自社株の評価方法は?


Q1 自社株評価に関する改正のポイント


 Question 1

私は非上場会社のオーナーですが、自社株の評価方法が改正されたとききました。そのポイントを教えてください。

ポイント 類似業種比準方式の計算式、会社規模の判定基準、いわゆる2要素ゼロの会社の評価方法、商法改正に連動した改正などがなされています。


 Answer

■改正のポイント

 先ごろ、取引相場のない株式の評価方法が、平成12年度の税制改正を受けていくつか改正されました。株式の評価をするに当たって非常に重要な改正が何点もなされています。改正後の評価方法の全容は次問以下で詳しく説明しますが、改正のポイントをあげると次のとおりです。〈改正後〉紫色の文字部分が改正された箇所です。


■中、小会社の区分の改正

 中会社と小会社を区分する総資産価額及び従業員数が、以下のように改正されました。

  〈改正前〉 〈改正後〉




卸売業 8,000万円以上
(従業員が10人以下の会社を除く)
7,000万円以上
(従業員が5人以下の会社を除く)
小売・
サービス業
5,000万円以上
(従業員が10人以下の会社を除く)
4,000万円以上
(従業員が5人以下の会社を除く)
その他 5,000万円以上(従業員が10人以下の会社を除く) 5,000万円以上(従業員が5人以下の会社を除く)




卸売業 8,000万円未満又は従業員数10人以下
7,000万円>未満又は従業員数5人以下
小売・
サービス業
5,000万円未満又は従業員数10人以下 4,000万円未満又は従業員数5人以下
その他 5,000万円未満又は従業員数10人以下 5,000万円未満又は従業員数5人以下


■Lの割合(中会社)の区分の改正

 前記の改正を受けて、中会社についてLの割合を区分する総資産価額及び従業員数が、以下のように改正されています。

 〈改正前〉
卸売業 小売・サービス業 卸売業、小売・サービス業以外 割 合
14億円以上(従業員数が50人以下の会社を除く) 7億円以上(従業員数が50人以下の会社を除く) 7億円以上(従業員数が50人以下の会社を除く) 0.90
7億円以上(従業員数が30人以下の会社を除く) 4億円以上(従業員数が30人以下の会社を除く) 4億円以上(従業員数が30人以下の会社を除く) 0.75
8,000万円以上(従業員数が10人以下の会社を除く) 5,000万円以上(従業員数が10人以下の会社を除く) 5,000万円以上(従業員数が10人以下の会社を除く) 0.60

 〈改正後〉
卸売業 小売・サービス業 卸売業、小売・サービス業以外 割 合
14億円以上(従業員数が50人以下の会社を除く) 7億円以上(従業員数が50人以下の会社を除く) 7億円以上(従業員数が50人以下の会社を除く) 0.90
7億円以上(従業員数が30人以下の会社を除く) 4億円以上(従業員数が30人以下の会社を除く) 4億円以上(従業員数が30人以下の会社を除く) 0.75
7,000万円以上(従業員数が5人以下の会社を除く) 4,000万円以上(従業員数が5人以下の会社を除く) 5,000万円以上(従業員数が5人以下の会社を除く) 0.60


■類似業種比準方式の計算式

 「利益」「配当」「純資産」の均等評価が「利益」中心の評価に改められるとともに、斟酌率が会社区分に応じて3段階に改められました。

 〈改正前〉

類似業種
平均株価
× 配当比準値+利益比準値+純資産(簿価ベース)比準値

×斟酌率(一律0.7)

 〈改正後〉
類似業種
平均株価
× 配当比準値+利益比準値×3+純資産(簿価ベース)比準値

×斟酌率
小会社0.5
中会社0.6
大会社0.7


■2要素ゼロの会社の評価方法

 純資産価額方式しか認められていなかった、いわゆる「2要素ゼロ」の会社の株式評価について、類似業種比準方式との併用方式も認められることとなりました。ただし、3要素ゼロの会社の株式は従来どおり純資産価額方式のみの評価になります。

 〈改正前〉  〈改正後〉
類似業種比準方式の3つの比準要素のうち2つ以上ゼロの会社の株式の評価は、純資産価額方式によります。 類似業種比準方式の3つの比準要素のうち2つ以上ゼロの会社(比準要素数1の会社という)の株式の評価は、純資産価額方式だけでなく、類似業種比準方式との併用方式も選択により認められます。


■土地保有特定会社の範囲(従業員基準で小会社に該当する会社)

 土地保有特定会社に該当するかどうかの総資産価額の基準が先の中会社・小会社の区分の改正を受けて、小会社について次のように改正されています。

 〈改正前〉  〈改正後〉
卸売業       8,000万円以上 卸売業       7,000万円以上
卸売業以外     5,000万円以上 小売・サービス業  4,000万円以上
上記以外      5,000万円以上


■商法改正を考慮した改正

 (1)自己株式を有している場合は、自己株式を控除した発行済株式数で株主区分の判定その他を行うことが明らかにされ、また、(2)純資産価額の計算上、法人税額等相当額を控除しないケースの追加が行われました。

 〈改正前〉  〈改正後〉
(1) このような取扱いはありませんでした。
(2) 現物出資受入資産は、現物出資と合併による受入資産とされていました。
(1) 評価会社が自己株式を有している場合、発行済株式数は自己株式を控除した数とします。
(2) 法人税額等相当額の控除が規制される現物出資等受入資産の範囲に、株式交換や株式移転により著しく低い価額で受け入れた株式が加えられました。


■適用時期

 上記改正の適用時期は、原則として、平成12年1月1日以後の相続等により取得した株式の評価から適用されますが、平成12年7月31日以前の相続等により取得した株式については、改正前の取扱いでもよいこととされています。

 

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