第5章 |
第5章 消費税 |
(1) 課税の対象 国内において事業者が行った資産の譲渡等には消費税が課税されます。資産の譲渡等とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいいます。また、保税地域から引き取られる外国貨物にも消費税が課税されます。 (2) 納税義務者 事業者が国内において行った課税資産の譲渡等につき消費税を納める義務があります。また、外国貨物を保税地域から引き取る者は、課税貨物につき消費税を納める義務があります。 (3) 輸出免税等 事業者(免税事業者を除く)が国内において行う課税資産の譲渡等のうち、日本からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け及び外国貨物の譲渡又は貸付けに該当するものについては、消費税が免除されます。なお、医療法人が、この規定の適用を受けることはあまり多くないと考えられます。 (4) 資産の譲渡等の時期 資産の譲渡等の時期の原則は、引渡基準となります。 (5) 課税期間 個人事業者にあっては1月1日から12月31日まで、法人にあっては事業年度となります。なお、選択によっては、課税期間を短縮することもできます。 (6) 納税地 個人事業者の納税地は国内に住所がある場合には、その住所地となります。法人の納税地は国内に本店または主たる事務所がある場合には、その本店または主たる事務所の所在地となります。 (7) 課税標準及び税率 課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額(対価として収受しまたは収受すべき一切の金銭または金銭以外の物もしくは権利その他経済的な利益の額とし、課税資産の譲渡等につき課されるべき消費税額及び地方消費税額を含まないものとする)となります。 また、保税地域から引き取られる課税貨物に係る消費税の課税標準は、その課税貨物につき関税定率法の規定に準じて算出した価格に、その課税貨物の保税地域からの引取りに係る消費税以外の消費税等の額及び関税の額に相当する金額を加算した金額となります。 消費税の税率は100分の4となります。 地方消費税の税率は消費税の25%(4/100×25%=1/100)となり、消費税と地方消費税を合わせて100分の5となります(地税法72の83)。 (8) 税額控除 事業者(免税事業者を除く)が、国内において行う課税仕入等については、一定の区分に応じそれぞれに定める日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、次に場合の区分に応じそれぞれに定める消費税額の合計額を控除します。
なお、基準期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者については、選択によって上記のほかに簡易課税方式により税額控除をすることができます。 (9) 中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例(いわゆる簡易課税制度) 事業者(免税事業者を除く)が、その基準期間における課税売上高が5,000万円以下である課税期間(一定の課税期間を除く)について、簡易課税選択届出書を提出した場合には、簡易課税制度の適用を受けることができます。 (10) 申告、納付、還付 事業者(免税事業者を除く)は、課税期間ごとに、その課税期間の末日の翌日から2ヶ月以内に一定の事項を記載した申告書を税務署長に提出しなければなりません。ただし、国内における課税資産の譲渡等がなく、かつ差引税額がない課税期間については提出することができません。消費税は、申告期限の延長は認められません。
(1) 非課税 消費税は、生産者から消費者へ提供される財貨・サービスの流れに着目して、原則として、国内において行われる資産の譲渡・貸付け及び役務の提供(以下、「資産の譲渡等」という)に、消費税が課税されます。これら資産の譲渡等には、本来課税の対象とならないもの(「課税対象外」または「不課税取引」という)や、政策的に課税することは適当ではないもの(「非課税取引」という)があります。 国内において行われる資産の譲渡等のうち、消費税法別表第一に掲げるものには、消費税を課さないとして、非課税の範囲が定められています。このうち、医療機関に関連するものとしては、別表第一の六号(療養若しくは医療又はこれらに類するもの)、七号(介護保険法・社会福祉法関連)、八号(医師、助産師その他医療に関する施設の開設者による助産に係る資産の譲渡等)があります。 (2) 診療科による相違 診療科目により、消費税課税売上割合の高い科と低い科があります。一般内科では、課税売上割合が高くなることは少ないのですが、美容形成外科・産婦人科では高くなります。歯科でも、審美歯科やインプラント治療に力を入れている場合は高くなります。 (3) 課税売上割合が低いことによる留意点 課税売上が収益の大半を占める事業会社の場合には、設備投資を行った事業年度には仕入税額控除が多くなり、消費税の還付を受けられる場合があります。 一般内科で、社会保険診療報酬の割合が高い場合(逆に言えば、課税売上割合が低い場合)には控除仕入税額が少なくなり、還付を受けられないケースもあります。 (4) 実務上の対応 一般の会社で簡易課税を採用していて、翌期に設備投資を予定している場合には、簡易課税から本則課税へ変更した方が有利になるケースが多いのですが、医療機関の場合には、本則課税に変更することが必ずしも有利となるわけではありません。事前にシミュレーションを精緻に実施した後、変更の適否を決定することが必要です。
医療機関固有の消費税課税・非課税項目について代表的なものについてみていきます。 (1) 消費税法 消基通6−6−3(特定療養費、療養費等の支給に係る療養)について 健康保険法等の規定に基づく特定療養費、医療費等の支給に係る療養は非課税となりますが、これには、被保険者または被保険者の家族の療養に際し、被保険者が負担する一部負担金に係る療養も含まれます。
(2) 介護保険法・社会福祉法関連 消費税法別表第一7号に掲げる「イ 介護保険法の規定に基づく居宅介護サービス費の支給に係る居宅サービス、施設介護サービス費の支給に係る施設サービスその他これらに類するものとして政令で定めるもの、ロ 社会福祉法第2条に規定する社会福祉事業、更正保護事業法第2条第1項に規定する更生保護事業、ハ ロに掲げる資産の譲渡等に類するものとして政令で定めるもの」と規定されています。 介護保険法により、居宅サービス・居宅介護支援・施設サービスに分類されます。下記の点を混同しないように留意する必要があります。
死産や流産等の異常分娩は健康保険の対象となりますので、医療の給付等として、非課税となります。人工妊娠中絶は助産ではないため、課税対象となります。
課税売上割合の計算方法については消費税法施行令第48条に規定されています。具体的計算式は、下記の通りです。
消費税法における税額計算の方法は簡易課税制度と本則課税制度があり、それぞれの計算方法については、下記の通りです。 (1) 簡易課税制度
(2) 本則課税 本則課税には、個別対応方式と一括比例配分方式とがあり、それぞれの計算方法については、下記の通りです。
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