目次 第3章


第3章 法人税

6.借地権 3-6

 借地権とは、建物の所有を目的とした地上権または土地の賃借権をいいます。建物の所有を目的としない駐車場等の使用目的での土地の賃借は借地権の設定対象とはなりません。借地権慣行のある地域の土地に関して賃貸借契約を結んだ場合、一定金額以上の権利金またはそれに見合う相当の地代を支払わない場合には、権利金または相当の地代の収受があったものとして課税されます。この場合において借地権慣行のある地域とは具体的には借地権割合が30%以上の地域をいい、借地権割合は国税局により地域ごとに設定されています。土地の賃貸借取引については以下のように区分することができます。

 1) 貸し主の課税関係(個人の場合)
 2) 法人借り主の課税関係(法人の場合)
 3) 個人借り主(法人の理事または使用人)の課税関係


(1) 更新料の取扱い

 [1]  借り主である個人が更新料支払った場合

 借地権契約の更新に伴って支払った更新料は新たに借地権を構成することになりますが、更新料の内、一部は更 新時における必要経費となります。

 [2]  借り主である法人が更新料を支払った場合

 支払った更新料は新たに借地権を構成することになりますが、更新料を支払った事業年度において資産計上していた借地権のうち一部を損金算入することができます。


(2) 借地権の取得価額

 借地権の取得に関して支出する費用について資産計上するか、支払い時の損金とするかは以下のようになります。

 [1]  賃借した土地のためにした地盛り、地ならし、埋立て等の整地に要した費用の額は借地権に計上します。

 [2]  建物付土地の借地権契約を結んだ場合において、概ね1年以内に建物部分を取り壊した場合の建物の帳簿価額と取壊し費用の額は借地権に計上します。

 [3]  建物等の増改築するにあたり土地の所有者等に支払う承諾料は借地権に計上します。

 [4]  借地契約に際して支払う費用

 A 借入金で借地契約を結んだ際の支払利息
 B 割賦購入した場合の割賦期間の利息
 C 登録免許税その他登記のために要する費用
 D 一旦締結した契約を破棄して他の契約を結んだ場合の違約金


7.引当金 3-7

(1) 貸倒引当金

 医療法人における債権の大部分は社会保険診療報酬の未収入金であるため、これらについて貸倒れによる損失が発生することはほぼありませんが、貸倒引当金を設定することにより一定の金額を損金に算入することができます。貸倒引当金については、その債権の種類により個別評価貸倒引当金または一括評価貸倒引当金を設定することができ、その合計額が貸倒引当金繰入額として損金算入されます。


(2) 賞与引当金

 平成15年度4月1日以後に開始する事業年度より、賞与引当金は損金不算入となっています。また、賞与の未払い計上は以下の要件を満たす場合、損金算入可能です。

 [1]  支給額を各人別に、かつ同時期に支給を受けるすべての使用人に年度末までに通知していること

 [2]  通知した金額を翌事業年度開始の日から1ヶ月以内に支払っていること

 [3]  未払い計上年度で損金算入すること

 なお、就業規則等において、支給対象期間基準を採用している場合は規則等の変更が必要になります。


(3) 退職給付引当金

 この引当金も平成14年度の税制改正で新規の引当金繰入れは損金不算入となり、従前の引当金残高を以下の通り取り崩すこととなっています。

 [1]  中小法人(期末時の資本金額が1億円以下)

 毎年10%ずつ取り崩す(10年で取り崩す)。

 [2]  それ以外の法人

 初年度及び第2年度は30%、第3年度及び第4年度は20%ずつ取り崩す(4年で取り崩す)。なお平成18年3月期で終了しました。


8.保険料 3-8

 法人の場合は役員を含めた保険料損金算入の記載が主として法人税基本通達上定められており、実質的には節税を目的とした保険商品が多数存在します。

 これに対し個人の場合は、院長本人を被保険者とした場合には、生命保険料控除として最大10万円の所得控除が受けられるのみです。ただし、個人経営でも従業員を被保険者とした場合、または医療法人が理事または従業員を被保険者とした場合には、一定の場合保険料を必要経費または損金に算入することが認められています。

 個人経営で従業員を被保険者とした場合、所得税法上明確な規定はありませんが、法人税の規定に準じて取り扱うことで差し障りないとされています。ただし個人経営の場合本人の利殖目的でなく、事業の遂行上明らかなものでなければならないとされています。

 

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