目次 事例 1


 (事例1) 駐車場賃貸借契約書


駐車場賃貸借契約書

 貸主甲と借主乙は、下記のとおり、駐車場の賃貸借契約をここに締結する。
 第1条 甲は、乙に駐車場として、次に定める……。
 第2条 駐車場の賃借料として月額30,000円を、乙は甲に対して支払うものとし、前月末迄に甲の指定する方法により支払うものとする。なお、契約開始月の賃借料の30,000円については、本日支払うものとし、甲はこれを受領した。
 第3条 契約に際して、乙は甲に対して保証金として30,000円を支払い、甲はこれを受領した。なお、この保証金は、この契約が終了したときに、甲は乙に対して返還することとする。
 第4条 ………。



【 解 説 】

【1】  まず、この契約書は、駐車場の賃貸借を行うということを目的に作成されたものです。この駐車場の賃貸借は、単に駐車場としての施設を貸すことですから、土地の賃借権の設定には当たりません。したがって、この部分は課税事項には該当しないので、不課税ということになります。これは「施設の賃貸借契約」は課税物件表に掲げられているいずれの文書にも該当しないからです。

 しかし、契約書の第2条に、「契約開始月の賃借料を受領した」という文言があるので、例えば、賃借人が法人である場合などは営業行為ですから別表第一の第17号文書(売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書等)に該当します。つまり、第17号に掲げる「金銭の受領事実を証する」という課税事項を証明する目的で作成されたものと認められることになるからです。

【2】  また、賃借料は資産の貸付けの対価ですから対価性があり、売上代金に当たりますので第17号の1文書(売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書)に該当し、記載された受取金額に応じた段階税率が適用されます。この場合には、賃貸人が賃借人に対して交付する文書が課税文書に該当します。この場合も、金銭の受領の事実を相手方に証明することになるので、借りる側、つまり金銭を支払った者が保有している契約書が第17号の1文書に該当するということになります。

【3】  さらに、契約書の第3条において、保証金としての30,000円の金銭の受領事実が記載証明されていますので、ここのところも金銭の受領事実を記載証明しているのですが、返還する保証金であることが記載されていますので、売上代金以外の金銭の受領事実が記載証明されていることになります。したがって、第17号の2文書(金銭又は有価証券の受取書で第17号の1文書以外の文書)に該当します。そうすると、この文書は、第17号の1文書と第17号の2文書の双方に該当することになりますので、このような場合は、第17号の1文書に該当するものとして取り扱われています。記載金額は30,000円です。

 なお、この項では、課税文書に該当するかどうかの判断基準について解説していますので、所属の決定や課税事項などの説明は追って解説していくこととします。

 この事例1においては、印紙税の課否判定を行っていくうえで、文書の名称や形式的な記載文言だけではなく、また、おおまかなところでの文書の使用目的のみにとらわれずに、具体的に内容等を確認しながら、作成された文書がどのようなことを証明しようとしているのかを判断基準としている、ということを理解していただければよいと考えます。

【4】  この事例においては、契約書の第2条、第3条の「受領しました」という文言が、金銭の受領事実という課税事項を証明しようとしているのですから、この文言の記載がなければ課税文書には該当しないことになります。

 

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