目次 2−1

 第2章 会計上の区分経理の実務
 第1節 正味財産増減計算書の区分経理
 収益の区分経理
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 各収益項目に応じて、次のように判断します。

[1] 事業収益

 原則として、当該事業区分の経常収益に計上します。ただし、公益目的事業のみを実施する法人は、一部を合理的な範囲で管理費の不足相当分に配賦することができます(FAQY−2−④)。

[2] 寄附金

 使途の定めがある寄附金の場合、当該使途の定めに応じた会計区分・事業区分に計上します。

 また、使途の定めのある寄附金は、原則として指定正味財産の部の寄附金として計上し、使途の制約が解除された時点で指定正味財産の部から一般正味財産の部に振り替えることになります。

 ただし、寄附によって受け入れた金額に重要性が乏しい場合、寄附者等からの制約が課される期間に重要性が乏しい場合、又は寄附者等からの制約に重要性が乏しい場合には、当該寄附によって増加した正味財産を指定正味財産の増加額としないで、一般正味財産の増加額として処理することができます(平成20年会計基準 注解 注1(3))。

 公益法人における寄附金

 使途の定めが特にない公益法人に対する寄附金は、公益目的事業に対する寄附金となり(認定法18①一)、公益目的事業会計の共通欄に計上します。

 また、事業収益と同様、公益目的事業のみ実施する法人については、一部を合理的な範囲で管理費の不足相当額に配賦することができます(FAQY−2−④)。

公益法人における受取寄附金の計上区分
会計区分正味財産の区分
使途の指定なし公益目的事業会計・共通欄に計上します。
ただし、公益目的事業のみ実施する法人については、一部を法人会計に計上することが可能です。
一般正味財産の部に計上します。
使途の指定あり指定された使途の会計区分・事業区分に計上します。
ただし、公益目的事業のみ実施する法人については、一部を法人会計に計上することが可能です。
指定正味財産の部に計上し、使途の指定が解除された時点で一般正味財産の部へ振り替えます。ただし、重要性が乏しい場合は、直接一般正味財産の部に計上することが可能です。
 一般法人における寄附金

 使途の定めが特にない寄附金は、法人会計に計上するのが一般的です。

一般法人における受取寄附金の計上区分
会計区分正味財産の区分
使途の指定なし法人会計に計上します。一般正味財産の部に計上します。
使途の指定あり指定された使途の会計区分・事業区分に計上します。指定正味財産の部に計上し、使途の指定が解除された時点で一般正味財産の部へ振り替えます。ただし、重要性が乏しい場合は、直接一般正味財産の部に計上することが可能です。

 なお、移行法人においては、使途が実施事業に特定されている指定正味財産を費消した場合、その費消した指定正味財産額が実施事業の費用に計上される一方で、その費消した指定正味財産を一般正味財産へ振り替えることに伴って費用と同額が実施事業の収益に計上されることにより、公益目的財産額が減少しないという現象が生じかねません。そのため、使途が実施事業に特定されている指定正味財産(移行の登記をした日の前日までに受け入れたものに限る)について、使途の制約の解除等より、当該指定正味財産を一般正味財産へ振り替えることに伴って生じる収益については、実施事業に係る収益又は実施事業資産から生じた収益としないことができます(ガイドラインU−1)。

[3] 補助金

 補助金については、使途の定めに応じた会計区分・事業区分に計上します。

 補助金については、原則として、その受入額を受取補助金等として指定正味財産増減の部に記載し、補助金等の目的たる支出が行われるのに応じて当該金額を指定正味財産から一般正味財産に振り替えます。なお、当該事業年度末までに目的たる支出を行うことが予定されている補助金を受け入れた場合には、その受入額を受取補助金として一般正味財産増減の部に計上することができます(平成20年会計基準 注解 注13)。

[4] 入会金・会費

 社団法人は、定款の定めにより、社員に対して入会金・会費の支払い義務を定めることが可能です(法人法27)。また、財団法人も任意に会員制度*を設け、入会金・会費を徴収することが可能です。そのため、社団法人・財団法人においては、入会金・会費の計上区分が論点となります。

 公益法人における入会金・会費

 公益社団法人の社員から徴収した入会金・会費については、特に定めがない場合、50%を公益目的事業会計に計上することになり(認定規則26一)、会費規程等により公益目的事業以外に使用する割合が定められている場合は、その割合だけ公益目的事業会計以外に計上することが可能です(ガイドラインT−17)。

 なお、上記の取扱いは、社員から徴収した入会金・会費についての取扱いであるため、社員以外から徴収した入会金・会費については、原則として寄附金として取り扱われ、特に使途の定めがない限り、全額を公益目的事業会計に計上する必要があります。

 ただし、会員の中から選挙によって選ばれた者のみを社員とする場合(代議員制の場合)の社員以外の会員が支払う入会金・会費は、社員から徴収した入会金・会費に準じて取り扱うことが可能です。

 また、公益財団法人の会員から徴収する入会金・会費は、認定法上、寄附金として取り扱われ、特に使途の定めがない限り、全額を公益目的事業会計に計上する必要があります。

 なお、認定法上、寄附金として取り扱われる入会金・会費であっても、会費規程等により、公益目的事業以外に使用する割合を定めれば、当該割合に基づいて公益目的事業会計以外に計上することが可能です。

公益法人の入会金・会費の計上区分
法人種別会員種別入会金・会費の計上区分
公益社団法人社員原則として50%を公益目的事業会計に計上します。
ただし、会費規程等で使用割合を定めた場合、当該使用割合に応じて、各会計区分に計上することができます。
代議員制における会員
上記以外の会員原則として100%を公益目的事業会計に計上します。
ただし、会費規程等で使用割合を定めた場合、当該使用割合に応じて、各会計区分に計上することができます。
公益財団法人会員

 公益社団法人・公益財団法人の会費によって、認定法の原則的な取扱いは異なりますが、いずれの会費であっても、会費規程等で使用割合を定めれば当該使用割合に応じて、計上区分を定めることができます。

 なお、公益目的事業会計の使用割合を下げ、その分、法人会計の使用割合を上げれば、公益目的事業会計の収入が少なくなり、収支相償は満たしやすくなりますが、その結果、必要以上に法人会計が黒字となる場合、行政庁から公益目的事業会計と法人会計の配分の考え方等について確認を受け、必要に応じて見直しを求められる可能性があるため、留意が必要です。

用語解説―――――――――――
  • 会員制度
     公益法人は、会員制度を設けているケースが多いです。
     公益社団法人の場合、会員制度上、複数の会員種別を設定し、そのうち一部の会員のみを法律上の社員と位置付けしているケースが多く見受けられます(例えば、会員種別として、正会員・賛助会員を設定し、正会員のみを法律上の社員として位置付けしているケースが見受けられます)。
     また、公益財団法人の場合、法律上、社団法人のような法人の構成員はいませんが、任意の会員制度を設けているケースが見受けられます。
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 一般法人における入会金・会費

 公益法人の場合と異なり、一般法人の入会金・会費については、特別に使途を定めていない限り、法人会計の会計区分に計上するのが一般的です。

[5] 財産運用益

 公益法人・一般法人の中には、多額の金融資産を保有し、当該金融資産の運用益を財源として事業運営を行っている法人があります。

 多額の金融資産を保有している場合、当該金融資産を、基本財産又は特定資産として位置付け、それぞれの資産の運用益に使途を定めていることが一般的です。

 そのため、財産運用益については、当該使途に従って、会計区分・事業区分を定めることになります。

 なお、移行法人において、使途が実施事業に特定されている積立金の運用益について、実施事業の財源を実施事業に係る収益又は実施事業資産から生じた収益とした場合には、公益目的支出計画が終了しないと予想される場合には、実施事業に係る収益又は実施事業資産から生じた収益としないことができます(ガイドラインU−1)。

 費用の区分経理
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[1] 事業費と管理費の区分

 費用については、まず、事業費と管理費を区分する必要があります。

事業費当該法人の事業の目的のために要する費用
管理費法人の事業を管狸するため、 毎年度経常的に要する費用
(総会・評議員会・ 理事会の開催連営要、登記費用、理事・評議員・監事報酬、会計監査人監査報酬)
[2] 共通費用の配賦

 事業費及び管理費のいずれにも共通して発生する関連費用については、次の配賦基準を参考に配賦します(ガイドラインT−7)。

配賦基準適用される共通費用
建物面積比地代、家賃、建物減価償却費、建物保険料等
職員数比福利厚生費、事務用消耗吊費等
従事割合給与、賞与、賃金、退職金、理事報酬等
使用割合備品減価償却費、コンピューターリース代等

 上記以外の配賦基準であっても、これ以外に適当と判断した基準があれば、それを採用することができます。

 なお、採用した配賦基準における配賦割合の算定に関して、FAQ上は、「過去の活動実績、関連費用のデータなどから法人において合理的と考える程度の配賦割合を決めてもらえばよく、その算定根拠を詳細かつ具体的に記載することは求めていませんし、法人においてデータ採取等のために多大な事務負担をかけていただくことはありません」と説明されています(FAQX−3−②)。

 公益法人における費用

 公益法人における費用の関係をまとめると次の通りです。

会計区分直接費用共通費用
公益目的事業会計各事業費に直接計上適当な配賦基準により、各事業費、管理費にそれぞれ配賦計算します。
収益事業等会計各事業費に直接計上
法人会計管理費に直接計上

 なお、配賦することが困難な共通費用については、次のように取り扱うことができます。

配賦困難な共通費用の取扱い
配賦困難な共通費用取扱い
公益目的事業会計と収益事業等会計に関連する共通費用収益事業等の費用とすることができます (認定規則19)。
公益目的事業会計又は収益事業等会計と法人会計に関連する共通費用法人会計の費用とすることができます (認定規則19)。
公益目的事業に係る事業費で各事業に配賦することが困難な費用公益目的車業に関する会計の中で「共通」の会計区分を設けて配賦することが できます(FAQVI−2③)。
収益事業等に係る事業費で収益事業とその他の事業とに配賦することが困難な費用収益事業に係る費用に配賦することがで きます(FAQVI−2③)。
収益事業又はその他の事業のそれぞれにおいて、各事業に配賦することが困難な費用それぞれの会計の中で「共通」の会計区分を設けて配賦することができます(FAQVI−2③)。

◆ 制度解説・公益法人における共通費用の配賦計算と定期提出書類

 公益法人が毎事業年度終了後3ヶ月以内に行政庁に提出する定期提出書類上、各事業に関連する費用額の配賦計算表を添付しなければなりません。また、当該書類上において、配賦基準・配賦金額を明らかにする必要があります。

定期提出書類(共通費用の配賦基準を記載する別表)
別表F(1)各事業に関連する費用額の配賦計算表(役員等の報酬・給料手当)
別表F(2)各事業に関連する費用額の配賦計算表(役員等の報酬・給料手当以外の経費)
 一般法人における費用

 公益認定等ガイドラインにおいて、移行法人における事業費・管理費の取扱いについては、認定法と同様の考え方とするとされています。

会計区分直接費用共通費用
実施事業等会計各事業費に直接計上適当な配賦基準により、各事業費、管理費にそれぞれ配賦計算します。
その他会計各事業費に直接計上
法人会計管理費に直接計上

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