目次 1−(1)


【事例1−1】

 税務調査において、前期に引渡し済みの商品300万円(消費税24万円)が、前期の売上高に計上されていないと指摘されました。この商品(原価220万円(消費税別))は、在庫品として前期末棚卸高に含まれています。

申告調整

〈別表4〉

区  分総  額処  分
留  保社外流出
(加 算)
 売上計上洩れ
3,000,0003,000,000

(減 算)
 売上原価認容
2,200,0002,200,000

〈別表5(1)〉

T 利益積立金額の計算に関する明細書
区  分期首現在高当期の増減期末現在高
売 掛 金3,240,0003,240,000
商   品Δ 2,200,000Δ 2,200,000
未払消費税Δ 240,000Δ 240,000

会計上、前期末の棚卸しに関して次の処理を行なっています。

(借)商   品2,200,000(貸)仕   入2,200,000

ところが、税務上は次の仕訳が要求されます。

 〈調整仕訳〉

(借)売 掛 金3,240,000(貸)売   上3,000,000
仮受消費税
(未払消費税)
240,000
仕   入
(売上原価)
2,200,000商   品2,200,000

 そこで、この調整仕訳に基づき別表4において、売上高300万円を加算し、売上原価220万円を減算することになります。いずれもその代金相当額について、まだ資金の流出入はないので、別表5(1)において売掛金324万円をプラスの利益積立金、商品220万円をマイナスの利益積立金として計上します。

 また、売上げの追加計上により消費税24万円の納税義務が生じるので、これを未払消費税(マイナスの利益積立金)として別表5(1)に計上することになります。

(注)仕入高にかかる消費税は、会計上、仕入時に次の仕訳で計上済みです。

(借)仕   入2,200,000(貸)買 掛 金2,376,000
仮払消費税176,000
 この仕訳に基づいて、その期の消費税計算に織り込み済みですから、上記の調整仕訳に仕入高の消費税は関係しません。

別 解

 上記の申告調整では、別表4と別表5(1)の数字のつながりが少々分かりづらくなっています。そこで、両表の関係を明確にするため別表4を次のように書くことがあり、むしろ実務ではこの書き方が一般的です。

〈別表4〉

区  分総  額処  分
留  保社外流出
(加 算)
 売上計上洩れ
3,240,0003,240,000

(減 算)
 売上原価認容
2,200,0002,200,000
未払消費税240,000240,000

〈別表5(1)〉

T 利益積立金額の計算に関する明細書
区  分期首現在高当期の増減期末現在高
売 掛 金3,240,0003,240,000
商   品Δ 2,200,000Δ 2,200,000
未払消費税Δ 240,000Δ 240,000

 別表5(1)に計上する利益積立金(売掛金)は税込みの324万円なので、別表4もその金額で記入します。ただし、税抜経理であれば益金に算入すべきは税抜きの300万円であるはずですから、差引24万円を減算欄に記入し、これがマイナスの利益積立金(未払消費税)で計上されるという書き方です。

 ここで注意を要するのは、加算を税抜きの300万円で行いながら、税金分の24万円を減算欄で計上する、という申告調整を行ってはならないという点です。そのようにすると、結果的に300万円−24万円=276万円しか益金に算入されません。消費税額を減算計上するときは加算を税込み金額で行う、ということにご留意ください。

(注)【事例2−1】以下は、この別解スタイルの申告調整を示すこととします。

参考1

 税込経理を行っている場合には、調整仕訳が次のようになります。

 〈調整仕訳〉

(借)売 掛 金3,240,000(貸)売   上3,240,000
仕   入
(売上原価)
2,200,000商   品2,200,000

 この仕訳に基づき申告調整を示せば、次のようになります。

〈別表4〉

区  分総  額処  分
留  保社外流出
(加 算)
 売上計上洩れ
3,240,0003,240,000

(減 算)
 売上原価認容
2,200,0002,200,000

〈別表5(1)〉

T 利益積立金額の計算に関する明細書
区  分期首現在高当期の増減期末現在高
売 掛 金3,240,0003,240,000
商   品Δ 2,200,000Δ 2,200,000


参考2

 過年度遡及会計基準の適用により、この事例における売上計上洩れを“誤謬”と認識し遡及処理(修正再表示)を行った場合の申告調整については、【事例58−2】を参照してください。

【事例1−2】

 税務調査の指摘を受けて、当期の帳簿で次の仕訳を行いました。

(借)売 掛 金3,240,000(貸)売   上3,000,000
未払消費税240,000
仕   入
(売上原価)
2,200,000商   品2,200,000
(借)未払消費税240,000(貸)現金預金240,000

申告調整

〈別表4〉

区  分総  額処  分
留  保社外流出
(加 算)
 売上原価否認
2,200,0002,200,000

(減 算)
売上計上洩れ認容
3,000,0003,000,000

〈別表5(1)〉

T 利益積立金額の計算に関する明細書
区  分期首現在高当期の増減期末現在高
売 掛 金3,240,0003,240,0000
商   品Δ 2,200,000Δ 2,200,0000
未払消費税Δ 240,000Δ 240,0000

 会計上は当期に計上した売上高と売上原価が、税務上は修正申告により前期分として計上済みです。受入れ仕訳で期間のずれが解消したことによって、両者の食い違いはなくなりました。そこで、前期の加算と減算をそれぞれ取り消すと同時に、プラス・マイナスで計上されている利益積立金も消滅させます。

別解

【事例1−1】において別解の修正申告調整を行った場合の受入れ申告調整です。

〈別表4〉

区  分総  額処  分
留  保社外流出
(加 算)  
 売上原価否認
2,200,0002,200,000
消費税納付240,000240,000

(減 算)  
売上計上洩れ認容
3,240,0003,240,000

〈別表5(1)〉

T 利益積立金額の計算に関する明細書
区  分期首現在高当期の増減期末現在高
売 掛 金3,240,0003,240,0000
商   品Δ 2,200,000Δ 2,200,0000
未払消費税Δ 240,000Δ 240,0000

参考

 税込経理の場合の調整仕訳および申告調整は、次のとおりです。

 〈調整仕訳〉

(借)売 掛 金3,240,000(貸)売   上3,240,000
仕   入
(売上原価)
2,200,000商   品2,200,000

〈別表4〉

区  分総  額処  分
留  保社外流出
(加 算)
 売上原価否認
2,200,0002,200,000

(減 算)
売上計上洩れ認容
3,240,0003,240,000

〈別表5(1)〉

T 利益積立金額の計算に関する明細書
区  分期首現在高当期の増減期末現在高
売 掛 金3,240,0003,240,0000
商   品Δ 2,200,000Δ 2,200,0000

目次 次ページ