1-III-6

６．過年度税効果調整額の申告調整

税効果会計を適用する初年度においては、前期以前に発生した一時差異にかかる税効果相当額をどう処理するかが問題となります。企業会計上これは、損益計算書の当期の｢法人税等｣ではなく「前期繰越利益」の調整項目として処理することになっています。 　この過年度分の税効果調整額は、法人税申告書では次のように記載します。 設　例 　税引前当期利益 　　１，０００万円 　前期繰越利益 ７００万円 　利益処分で株主配当３００万円、利益準備金３０万円を計上 　前期に減価償却超過額が２００万円あり、当期において１００万円を認容 　他に一時差異はなく、当期が税効果会計の適用初年度 　実効税率　　４０％ 　納付税額　（１，０００万円−１００万円）×４０％＝３６０万円 仕　訳 　税効果会計を適用すれば、次の仕訳が必要です。 　　（借）繰延税金資産　　８０万円　（貸）過年度税効果調整額　　８０万円 　　　　（注）２００万円×４０％＝８０万円 　　（借）法人税等調整額　　４０万円　（貸）繰延税金資産　　４０万円 　　　　（注）１００万円×４０％＝４０万円 損益計算書および利益処分計算書 ＜税効果会計を適用しない場合＞ 　　損益計算書 　　 　　 　 税引前当期利益 １，０００万円 法　人　税　等 　 ３６０万円 当期利益 ６４０万円 前期繰越利益 　７００万円 当期未処分利益 １，３４０万円 　　利益処分計算書 当期未処分利益 １，３４０万円 利益準備金 ３０万円 株主配当金 　 ３００万円 次期繰越利益 １，０１０万円 ＜税効果会計を適用する場合＞ 　　損益計算書 税引前当期利益 １，０００万円 法　人　税　等 ３６０万円 法人税等調整額 　　４０万円 　 ４００万円 当期利益 ６００万円 前期繰越利益 ７００万円 過年度税効果調整額 　　 ８０万円 当期未処分利益 １，３８０万円 　　利益処分計算書 当期未処分利益 １，３８０万円 利益準備金 ３０万円 株主配当金 　 ３００万円 次期繰越利益 １，０５０万円 申告書 　［別表４］ 　不適用　 　適　用　 　　 当　期　利　益 　　 ６４０万円 　 ６００万円 法　人　税　等 ３６０万円 ３６０万円 法人税等調整額 − ４０万円 償却超過額認容 −１００万円 −１００万円 所　得　金　額 ９００万円 ９００万円 　　 （注） 税効果会計の適用の有無にかかわらず所得金額は同額です。なお、過年度分の税効果調整額は当期の所得計算には関係しません。 　［別表５］ 　　 ＜適用しない場合＞ 区　　分 期　　首 減　　少 増　　加 利益処分 翌期首 利益準備金 　 　 　 ３０万円 ３０万円 減価償却超過額 ２００万円 １００万円 　 　 １００万円 繰越損益金 ７００万円 ７００万円 　 １，０１０万円 １，０１０万円 ＜適用する場合＞ 区　　分 期　　首 減　　少 増　　加 利益処分 翌期首 利益準備金 　 　 　 ３０万円 ３０万円 減価償却超過額 ２００万円 １００万円 　 　 １００万円 繰越税金資産 　 △４０万円 　 △８０万円 △４０万円 繰越損益金 ７００万円 ７００万円 　 １，０５０万円 １，０５０万円 　（注） 翌期首現在の残高の合計額は、税効果会計の適用の有無にかかわらず同額です。