目次 Q11


Q11 口頭弁論期日に欠席すると、どうなるのでしょうか。

 一方当事者が欠席した場合、それが最初の期日であれば陳述擬制が認められますが、続行期日であれば認められません。当事者双方が欠席した場合には、訴えの取下げが擬制されたり、終局判決がなされたりすることもあります。

 当事者の欠席 口頭弁論における当事者の出席は、必要的口頭弁論の原則からも要請されます。しかし現実には、当事者双方または一方が期日に欠席することもあります。このような場合に必要的口頭弁論の原則を貫くと、裁判所は審理を進行させることができず、訴訟遅延を招き、出席した当事者の利益を害することになります。
 そこで、当事者が欠席した場合につき何らかの法的手当てをする必要が生じます。
 以下、一方当事者が欠席した場合と当事者双方が欠席した場合に分けて整理していきます。

 一方当事者の欠席 一方当事者が欠席した場合、出席した当事者は、あらかじめ準備書面に記載した事項以外は主張できません(民訴法第161条第3項)。さらに、その期日が最初の期日であるか続行期日であるかによって、以下のような違いがあります。
(1)  最初の期日の場合 一方当事者が最初の期日に欠席し、または出席しても本案の弁論をしないときは、裁判所は、その者が提出した訴状または答弁書その他の準備書面に記載した事項を陳述したものとみなし(陳述擬制)、これと出席当事者の弁論を突き合わせて審理します(民訴法第158条)。
 原告が欠席した場合にこの陳述擬制を認めないと、審判対象についての陳述がないため審判対象を欠くことになり、訴訟手続を全く進行できなくなってしまいます。
 そこで、これを防止するために原告の陳述擬制を認める必要が生じますが、バランス上、被告が欠席した場合にも同様の取扱いをすることにしたものです。
 なお、欠席当事者が準備書面で明らかに争っていない事実は、自白したものとみなされます(擬制自白・民訴法第159条第3項)。
(2)  続行期日の場合 続行期日における一方当事者の欠席の場合には、民訴法第158条は適用されず、準備書面を提出していても陳述したものとはみなされません。続行期日にまで陳述擬制を認めると、口頭主義が完全に否定されることになってしまうからです(例外として簡易裁判所の場合・民訴法第277条)。

 当事者双方の欠席 当事者双方が口頭弁論期日もしくは弁論準備手続の期日に欠席し、または出席しても申述をしないで退廷・退席した場合には、1ヶ月以内に期日指定の申立てをしないと、訴えの取下げがあったものとみなされます(民訴法第263条前段)。
 さらに、1ヶ月以内に期日指定の申立てをした場合でも、連続して2回口頭弁論期日もしくは弁論準備手続の期日に欠席し、または出席しても申述をしないで退廷・退席した場合には、訴えの取下げがあったものとみなされます(民訴法第263条後段)。

 この規定の趣旨は、当事者双方が口頭弁論期日への欠席と期日申立てを繰り返す場合のような不熱心な訴訟追行に対処することにあります。

 当事者の欠席と判決 当事者の双方あるいは一方が口頭弁論期日に欠席し、または弁論をしないで退廷した場合において、審理の現状及び当事者の訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるときは、裁判所は弁論を終結して終局判決を下すことができます(民訴法第244条本文)。

 ただし、一方当事者のみが欠席または弁論をしないで退席した場合には、出席当事者の申出があるときに限られます(民訴法第244条但書)。なぜなら、その時点までの審理の結果に基づいて終局判決をしてしまうと、出席当事者にかえって不利な結果になることもあり、そのような場合にまで出席当事者の意向に反して弁論を終結し、終局判決を下すことは妥当ではないからです。

 

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