目次 Q2


Q2 税理士補佐人制度創設の趣旨は何ですか。

 租税に関する事項には高い専門性が要求されることから、訴訟手続においても、税務の専門家たる税理士が補佐人として常に納税者を援助できるようにし、もって申告納税制度の円滑、適正な運営に資するということです。

 補佐人制度創設前の税務争訟 不服申立手続(異議申立手続・審査請求手続)段階においては、かねてより税理士が納税者の代理人となることが認められていました(通則法第107条)。
 しかし、審査請求に対する裁決に不服がある場合、司法裁判所に訴訟を提起することになりますが、民事訴訟法上、税理士は訴訟代理人となることができません(民訴法第54条)。税理士が訴訟に関与するためには、裁判所の許可を得て「補佐人」(民訴法第60条)となるしかありませんでした。ところが裁判所は、弁護士には当然税理士資格があることから補佐人申請を却下してきました。しかし、税法に精通している弁護士は必ずしも多くないのが現実です。

 一方、課税庁を被告とする訴訟については、課税庁はその職員を訴訟代理人に指定できることになっています(国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律第5条)。これにより、各国税局単位で、訴訟を専門に担当する「国税訟務官」及びその補助として「国税実査官」が配置されています。税務訴訟の法廷に行くとわかることですが、被告席は法曹資格を有する訟務検事の他、通常5〜6人の職員で占められています。

 不公平の是正 平成11年度における税務訴訟の終結状況をみると、合計430件のうち、原告たる納税者が勝訴した事件は、一部勝訴・全部勝訴をあわせてわずか6.1%にすぎません。このように税務訴訟における原告側の勝訴率が低い主な理由の一つは、税の専門家である税理士が訴訟に関与できないために、裁判所に対する原告側の租税実体法の解釈の説得力が不十分であるためであると言われてきました。平成13年の改正により、税理士が裁判所の許可を得ることなく補佐人として出頭し陳述できることになったことで、税務訴訟における原告側の勝訴率の上昇が期待されています。

 税務訴訟代理権まではない ところで、平成13年の改正では、結果として税理士に税務訴訟代理権までは認めませんでした。これは、訴訟代理を行うためには訴訟手続等の知識が不可欠であるところ、現状においては、税理士が一般的にこれらを習得しているとは認められない等の理由によるものです。
 しかし、昨今の規制緩和の潮流や、弁理士が特許訴訟において弁護士とともに共同代理人となることがいよいよ現実化してきたこと等に鑑みると、将来税理士に対して税務訴訟代理権が付与される可能性は高いと言えるでしょう。

 

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