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第4章 外国税額控除

1 居住者に対し課される外国所得税

Question


 内国法人である当社の社員Aはインドネシアにある子会社に技術指導のため8か月間出張したところ、インドネシアの税務当局より、現地で支払を受けた給与に日本でその間に支払を受けた給与も課税対象に加えて納税するよう指示されました。

 Aは日本では居住者ですので、当社が支払う給与には源泉徴収を行っているのに、外国の税金もかかることになるのでしょうか。


Answer


 インドネシアとの租税条約に定める「短期滞在者免税」の要件を満たさないため、インドネシアで課税されることになったものと思われますが、インドネシアで納付した所得税相当額は、我が国で外国税額控除の対象となります。


 ご質問の場合、Aさんは所得税法では居住者に当たるため、国内外を問わずすべての所得に対して課税されることとなります。

 その一方、インドネシアとの租税協定では、我が国の居住者の勤務がインドネシア国内で行われる場合には、その人が支給を受ける給与について、次のすべての要件を満たしているとき(短期滞在者免税)を除き、インドネシアで課税できることとされています。

 (1) その人の滞在期間がその年を通じて合計183日以下であること
 (2) その給与を支払う雇用者は、インドネシアの居住者でないこと
 (3)  その給与が雇用者のインドネシア国内にあるPE又はFBにより負担(課税計算上、損金に算入)されないこと

 したがって、ご質問の場合、Aさんは8か月間現地に滞在とのことですので上記(1)の要件を満たさないこととなるため、日本で支払われた給与を含めてインドネシアで課税されることになったものと思われます。

 そうしますとこのままでは、Aさんは日本とインドネシア両国から二重に課税されることとなりますので、国内法では二重課税を排除する規定(外国税額控除)が設けられています。

 したがって、Aさんがインドネシアで納付した所得税相当額については、我が国で外国税額控除の対象となっていて、国外所得に対応する部分をその年の所得税額から控除することにより二重課税は調整されることとなります。

 注  租税条約によっては短期滞在者免税に該当するかどうかの要件が異なりますが、近年の改正条約では、滞在期間の判定の基となる期間について、連続する12か月の期間とする規定をおく例が多くなっています。


参考 所法95〈国税額控除〉、日インドネシア租税協定15〈勤務に対する報酬〉

 

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