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10 タイからの短期滞在者の免税

Question


 内国法人である当社のタイ子会社の社員が、当社の技術スタッフと技術の共同開発をするために、急遽10月1日から翌年の5月末までの予定で、当社の工場へ来日することとなりました。この間の給与はタイ子会社から支給されますが、この給与について日本で課税されるのでしょうか。


Answer


 タイとの租税条約に定める短期滞在者免税に該当しますので、我が国での課税は免除されます。


 非居住者が支払を受ける給与等について、国内法では、国内勤務に基因するものについては国内源泉所得として課税されることとなっていますが、ご質問にあるように短期間だけの人的役務の報酬については、我が国が締結している租税条約の多くには、短期滞在者免税の規定が設けられています。

 ご質問にあるタイとの租税条約では、

 (1) その年を通じて滞在期間が180日以下であること
 (2) その給与がタイの居住者等から支払われるものであること
 (3) その給与が我が国で課税される企業によって負担されるものでないこと

の条件を満たせば、我が国での課税は免除されることとなっています。

 この180日は暦年単位により計算しますので、ご質問にあるようにたとえ滞在期間が通算すると180日を超えていたとしても、暦年単位でみる場合、その年の滞在期間がそれぞれ180日以下となる場合であって、その他の条件を満たせば、タイとの租税条約による短期滞在者免税の適用を受けることができます。

 したがって、ご質問の場合はその勤務期間が予定どおりとなる限り、タイとの租税条約による短期滞在者免税の要件を満たしているものと認められますので、日本における課税は免除されます。

 暦年ベースで判定する場合の短期滞在者免税の適用に関する滞在期間ごとの取扱いを図示すると次のとおりです。


 なお、タイとの租税条約と同様の暦年ベースで滞在期間を計算する規定を置いている条約締結国は、イタリア、カナダ、韓国、中国、ドイツ、フィリピン、ブラジルなど多くの国にのぼっていますが、それらの国とは滞在期間の日数が183日以内と規定されているほか、短期滞在者免税のその他の要件について、勤務地国以外の居住者(非居住者)が報酬を支払い、勤務地国にあるPEなどにより負担されないことを要件としているものが多くあります。

 ただし、近年の条約改正などにより、アメリカ、イギリス、フランス、オーストラリアなどとの条約においては、滞在期間について、暦年(課税年度)単位ではなくて「連続する12か月の期間」において判定することとされています。


参考 所法161八〈国内源泉所得〉、日タイ租税条約14〈人的役務の提供に対する報酬〉

 

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