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9 勤務等が国内外にわたる場合の国内源泉所得の計算

Question


 非居住者に対して支払う給与などの計算期間の中に、国内勤務と国外勤務の双方がある場合、所得税の課税対象となる国内源泉所得はどのように計算するのでしょうか。


Answer


 非居住者が国内外の双方にわたって行った勤務や役務提供により給与又は報酬の支払を受ける場合には、原則としてその給与等の総額のうち、国内において行った勤務などに対応する部分の金額が国内源泉所得に該当することとなります。

 ただし、一定の場合には、その按分計算は不要とされています。


1 原則的な取扱い

 国内外にわたる勤務又は人的役務提供により受ける給与又は報酬についての国内源泉所得の金額は、原則として次の算式により計算されることとされています。

(算式)
 国内源泉所得金額 = 給与又は報酬の総額 ×   国内において行った勤務又は
人的役務の提供の期間

給与又は報酬の総額の
計算の基礎となった期間
 * この場合の期間とは、暦によって計算した日数をベースにして計算することとなります。

 なお、上記の算式による具体的な計算例を示すと、次のとおりとなります。

(計算例)
1 報酬の支払金額     100万円
2 総従事日数        40日
3 国内における従事日数   20日

 とした場合における国内源泉所得となる報酬の金額は、
 100万円× 20日

40日
=50万円
となります。
*計算例の場合の源泉徴収すべき税額は、50万円×20%=10万円となります。

 (1)  ただし、国内における公演等の回数、収入金額等の状況に照らし、その給与又は報酬の総額に対する金額が著しく少額であると認められる場合は、その按分計算の必要がないこととされています。したがって、その場合はその給与又は報酬について源泉徴収は要しないこととなります。

 (2)  国内において勤務し、又は人的役務を提供したことにより、特に給与又は報酬の額が加算されているなどの場合には、上記算式は適用されません。その場合は、別途、それを加味した合理的な計算を行うこととなります。

 (3)  給与又は報酬が、退職手当等である場合には、上記の算式中「国内において行った勤務又は人的役務の提供の期間」は、「居住者であった期間に行った勤務又は人的役務の提供の期間」と読み替えて計算します。

 なお、この期間には、内国法人の役員として行なった国外における勤務や内国法人等が運航する船舶等における勤務等で、居住者であった期間の勤務又は人的役務の提供に含まれるものとされる、その非居住者であった期間に行った勤務又は人的役務の提供の期間を含みます。


2 給与等の計算期間が1か月以下の場合の特例等

 勤務により支給を受ける給与等の計算期間の中途に出国して、非居住者となった者に対してその支給期が到来した給与等を支払う場合で、その計算期間が1か月以下のものについては、その給与等の総額を国内源泉所得に該当しないものとすることができます。

 もっともこの場合において、その給与等の全額が国内勤務に対応するものであるときには、上記の特例を適用することはできません。

 また、非居住者としての勤務が、内国法人の役員として行う国外勤務や内国法人等が運航する船舶等の勤務である場合の給与等についても、特例は適用されません。

 なお、上記のケースとは逆に、その計算期間の中途において、国外勤務から国内勤務に転勤したために帰国して居住者になった者に対してその支給期が倒来した給与等を支払う場合も、特例は適用されず、その総額が居住者に対する給与等として源泉徴収の対象となります。


参考 所法161八〈国内源泉所得〉、所基通161−28〈勤務等が国内及び国外の双方にわたって行われた場合の国内源泉所得の計算〉、同212−3〈給与等の計算期間の中途で非居住者となった者の給与等〉

 

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