目次 3-1


第3章 国内源泉所得の所得ごとの取扱い

1 外国株式の譲渡収益

Question


 内国法人である当社は、当社100%出資子会社のアメリカ法人A社の全株式を一括して内国法人B社に譲渡する予定です。

 A社はアメリカ内において不動産賃貸業を営んでおり、その総資産価値(時価)の50%超は不動産でもって構成されています。

 この場合のA社株式の譲渡収益はアメリカにおいて課税されるのでしょうか。また、当社はアメリカ以外にも外国子会社株式を所有していますが、アメリカ以外の国における株式の譲渡収益の取扱いも教えてください。


Answer


 米国法人株式の譲渡収益については、日米租税条約などの定めにより米国において申告・納税が必要となります。


1 日米租税条約における取扱い

 内国法人の株式譲渡による収益は、国内法上、譲渡先を問わず我が国における法人税の申告に反映させる必要がありますが、源泉徴収の対象となりません。

 その一方、日米租税条約においては、締結国の居住者である法人(米国法人)の株式について、その譲渡による収益は、譲渡収益(キャピタルゲイン)条項により、その法人の資産価値の50%以上がその締結国(米国)内に存在する不動産により直接又は間接に構成される法人の株式の場合には、米国で課税できることとされています。

 これは、そのような株式の譲渡収益は実質的にみて不動産そのものの譲渡収益に類似したものであることから、株式の譲渡収益について源泉地国免税とする原則の例外として、不動産譲渡収益の場合の不動産所在地国(源泉地国)課税と同様の取扱いとすることによって、不動産所有法人の株式形態の譲渡による租税回避策を防止したものといわれています。

 したがって、貴社の子会社A社株式の譲渡収益は、日米租税条約及び米国国内法により、米国における法人税申告と納税が必要となると思われます。

 注  同条約においては、上記の株式のうち一定の上場株式(公認の有価証券市場において取引され、かつ、その所有株式数が株式総数の5%以下の場合)について、上記の対象から除外されています。


2 その他の条約における取扱い

 我が国が締結している租税条約における株式の譲渡収益に対する取扱いは、主として次のように大別されます。

 なお、この場合の所得源泉地は、条約上必ずしも明示されていませんが、通常、その株式発行法人(市場取引の場合はその市場)の所在地国で判定されるものと解されます。

 (1)  上記にあるように、原則は居住地国課税(源泉地国免税)としながら、不動産所有(不動産化体)法人株式の譲渡収益は源泉地国課税とするもの
   締結国: アメリカ、イギリス、オーストラリア、オランダ、韓国、シンガポール、スイス、フィリピン、フランス、ベトナム、香港、メキシコ など

 (2)  原則は上記(1)のとおりとしながら、その年度のいずれかの時点で、発行済株式総数のうち株式譲渡者が所有するその特殊関係者所有株式と合算した株式数が25%以上で、かつ、譲渡株式数が5%以上であるもの(事業譲渡類似株式)の譲渡収益は源泉地国課税とするもの
   締結国: イギリス、オーストラリア、韓国、シンガポール、フランス、ベトナム、メキシコ など

 (3)  上記(1)、(2)にあるような例外を設けず、居住地国課税とするもの
   締結国:イタリア、インドネシア、ドイツ、ブラジル、ベルギー など

 (4)  上記(3)と同じように例外を設けず、源泉地国課税とするもの
   締結国: イスラエル、インド、カナダ、スウェーデン、タイ、中国、マレーシア、ロシア など

 (5)  条約上に規定がなく、国内法に基づき課税されるもの
   締結国:ニュージーランド

 

目次 次ページ