目次 II-7


 7 相当の地代を支払っている土地を譲渡する場合

(1)相当の地代を固定している場合

 相当の地代を固定方式としている場合、又は中途半端に値上げをしている場合には、土地の価額の上昇により地代率が相対的に低下し、自然発生借地権が借地人に帰属していくと考えられています。

 このような状態にある土地を譲渡した場合には、次のような課税関係になります。

(1)支払っている地代が通常の地代を超える場合

 その支払っている地代の額が通常の地代の額に相当する金額となる以前において、譲渡が行われた場合は、借地権価額は次の算式で求めた金額となります。

 借地権価額= 土地の更地価額 × 1− 実際収受している地代の年額
本来あるべき相当の地代の年額

 土地(底地)価額=土地の更地価額−借地権価額

  ※ 「本来あるべき相当の地代の年額」とは、その土地の価額(課税上弊害がないと認められる限り自用地としての価額の過去3年間における平均額)の年6パーセント相当額をいいます。実際に収受している権利金の額又は特別の経済的利益の額がある場合であっても、これらの金額がないものとして計算します。

(2)支払っている地代が通常の地代以下である場合

 支払っている地代の額が通常の地代の額以下である場合における借地権価額は、その土地について通常取引される借地権の価額となります。

 借地権価額=土地の更地価額×借地権割合

 土地(底地)価額=土地の更地価額−借地権価額


(2)相当の地代を地価にスライドさせている場合

 相当の地代をスライド方式としている場合は、借地権の価額は常にゼロとなりますから、この土地を譲渡した場合には、その土地は、更地価額(時価)により譲渡したものと考えられます。

  借地権価額=ゼロ

 土地(底地)価額=土地の更地価額

  この場合において、譲渡価額が時価より著しく低い(時価の2分の1未満)場合には、時価による譲渡があったものとして次のような課税関係が生じます。

(イ)地主個人、買主個人の場合
地主個人に対する課税 譲渡価額が譲渡所得の収入金額となる。
買主個人に対する課税
譲受価額が時価より低い場合には、譲受価額との差額は贈与があったものとみなされ贈与税が課税される。
時価の2分の1未満で取引された場合で、かつ、譲渡人の取得価額より低い場合には、譲渡人の取得時期、取得価額を引き継ぐ。

(ロ)地主個人、買主会社の場合
地主個人に対する課税 時価により譲渡があったものとみなされ、譲渡所得税が課税される。
買主会社に対する課税 時価との差額は受贈益として認定される。

(ハ)地主会社、買主個人の場合
地主会社に対する課税 時価との差額は贈与したこととなり、寄付金(役員又は使用人に対する譲渡の場合は給与)となる。
買主個人に対する課税 時価との差額は会社からの贈与として、一時所得の課税対象(会社の役員又は使用人の場合は給与)となる。

(ニ)地主会社、買主会社の場合
地主個人に対する課税 時価との差額は寄付金となる。
買主会社に対する課税 時価との差額は会社の収益となる。

 

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