育児休業から復帰した後の手続き
今日は守田社労士の訪問日です。
リエ「守田先生、こんにちは。ずっと相談していた育休中の友達が、まもなく職場復帰することが決まったみたいです。」
守田「そうですか、あっという間でしたね。」
リエ「はい。しばらくの間は短時間勤務をするようですが、育児休業から復帰した後にする手続きってあるのですか。」
守田「はい、まずは育児休業の終了日つまり復帰日の前日と、提出している社会保険料免除の終了日が一致していない場合は、育児休業等取得者申出書の「終了届」を提出しなければなりません。」
リエ「そうでしたね。前に教えてもらいました。」
守田「それと重要なのが、『健康保険・厚生年金保険育児休業等終了時報酬月額変更届』と『厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書』です。」
リエ「うわっ、長い名前ですね。」
守田「そうなんです。それぞれ省略して『育休月変』と『養育特例』と言わせてもらいますね。」
リエ「最初からそう言ってくださいよ。」
守田「まず育休月変ですが、育休から復帰した後はほとんどの人が短時間勤務をしたり、通常勤務であっても残業はしないで帰ることが多くなりますよね。そうなると休業前よりも給与額が少なくなることがあります。その場合に、育児休業が終了した日の翌日、つまり復帰した日が属する月以降3ヶ月間の報酬に基づいて、4か月目以降の保険料を変更することができる制度です。」
リエ「通常の月変とは違うのですか。」
守田「はい、大きく違います。まず、通常の月変は対象の3か月間の基礎日数が全て17日以上なければいけないのですが、育休月変は17日以上の月が1か月でもあれば提出できるのです。そして、従前の標準報酬月額との変動は1等級の差でもいいのです。一番の違いは、本人の希望により提出してもしなくてもいいのです。」
リエ「提出しなくてもいいのですか。」
守田「そうなんです。一般的には、保険料が安くなるのだから提出すればいいと思いますが、例えば続けて次の出産を考えている場合は、保険料の等級が下がると、出産手当金等の給付金額が減額されることになります。さまざまな事情や個人の考え方もありますので、あくまでもご本人が希望する場合に提出できるものとなります。ちなみに等級が上がった場合にも提出は可能ですが、等級が変わらない場合は提出する必要はありません。」
リエ「なるほど、給付金の額に影響が出てくるのですね。」
守田「さて、もう一つの養育特例ですが、先ほどの育休月変で保険料の等級が下がった場合に、保険料は安くなって嬉しいですが将来もらえる年金額が減額されるのはちょっと残念ですよね。そこで、対象のお子様が3歳になるまでの間、休業前の等級より下がってしまった期間については、休業前の標準報酬月額に基づく年金額を計算してくれる制度です。」
リエ「ということは、払う保険料は少なくなるけど、もらう年金額はそのままってことですか。」
守田「そういうことです。この制度は、理解してもらうのに説明がちょっと面倒なのですが、かなりいい制度だと私は思っています。」
リエ「育休月変で等級が下がらなかったら提出できないんですよね。」
守田「そんなことありません。養育特例はお子様が3歳になるまでであればいつでも提出は可能です。育休月変以外のタイミング、例えば算定等で等級が下がった場合でも有効となります。なので、とりあえず提出しておくという考えもあると思います。ただし、提出時には戸籍抄本(家族の証明)原本と90日以内の住民票(養育している証明)の写しが必要のため、費用と手間がかかります。会社の規定や働き方によって報酬が絶対に減額しないという方は提出の必要はありません。また、次の子の産休に入ると特例措置の適用対象外となります。」
リエ「いろいろな制度があるのですね。全く知りませんでした。」
守田「今日紹介した制度は以前からありますが、出産・育児関係の制度はここ数年でかなり変わっています。最近は男性の育休も増えてきて、分割取得等もできるようになるなど、休業の形も複雑化してきました。令和4年4月以降、会社は育休制度の個別周知と取得の意向確認が義務化されましたので、できるだけ理解して会社の皆さんやお友達に周知して頂ければと思います。」
リエ「はい、頑張ります。ありがとうございました。」