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近年のカーリース事業の拡大と新リース会計の公表

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リエ「最近、車のリースやサブスクを勧めるテレビCMや広告を頻繁に見かけます。これらの仕組みにはどの様な違いがあるのでしょうか。」

黒田「カーリースとサブスクはどちらも月々定額で、自動車を利用するサービスという点で共通しています。一般的には、自動車メーカーが提供するサービスをサブスクと呼び、それ以外の企業が運営するサービスをカーリースと呼んでいるケースが多いです。両サービス共に、まずリース会社等の業者が利用者に代わって自動車を購入します。そして契約者は月々決められた料金を支払うことで自動車を使用できるという仕組みですね。」

リエ「大きなお金を用意しなくても、月々決められた金額を支払うことで、好きな車に乗れるなんて便利なサービスですね。」

黒田「必ずしも好きな自動車を自由に利用できるというものではありませんよ。好きな自動車を選択することができるかどうかは、サービスを提供している企業によって大きく異なります。自動車メーカーが提供するサブスクでは、そのメーカーの車種しか選択することができませんし、またオプション等の選択肢も限られたものである場合も多いです。その一方でリース会社の場合、多様なオプションを選ぶことができます。」

リエ「選択肢の幅が広いならカーリースの方がよくないですか」

黒田「バリエーションの多さだけで言えばそうかもしれないですね。これ以外にも、カーリースとサブスクには様々な相違点があります。自動車を長く所有していると、定期的なメンテナンスが必要になります。また万が一に備えて保険にも加入しておきたいですよね。サブスクの多くは月額の支払いの中にメンテナンス費用や任意保険の保険代が含まれていて、各種保証が充実しています。その一方で、カーリースにおいては、任意保険やメンテナンス費用が月額に含まれていないケースもあり、リース料の他に多くの出費を伴う可能性があります。」

リエ「そういった各種保証についても考えないといけないのですね。契約期限が来たら、会社にきれいな状態で車を返さないといけないので心配です。」

黒田「そうですね。どちらも、自動車を借りるサービスなので、基本的に期限が来たら返却する必要があります。そして多くのケースで資産の残価保証が設定されています。例えばリース期限に100万円の残価設定がされていた場合、リース製品の売却価格が80万円だったとしたら、20万円の不足額を追加で支払わなければなりません。そのため、自動車を綺麗に使うのはもちろんのこと、中古車市場の動向によっても追加の費用が発生するリスクが存在します。もちろん、契約期限が来たら自動車を買い取るプランも存在していますので、自動車の使用頻度等を考慮して、ベストな選択をすべきですね。」

リエ「そもそも車のリースは、企業の財務負担と各種手続きに要する経理部門の負担を軽減する目的でサービスを拡大してきたのですよね。」

黒田「社用車の購入は企業としても大きな出費ですので、定額支払いで自動車を使用でき、自動車諸税の納税や各種手続き、車両メンテナンスから解放されるメリットは大きいと思います。また会計上においても、固定資産を計上せずに企業活動を行えますので、自社の総資産がどれだけの利益を生み出しているか(総資産利益率)を考える必要がある場合、リース取引は有用です。また月額の支払い金額がそのまま販管費になるので、費用計算の簡略化にも繋がります。」

リエ「毎月決まった金額の仕訳を入力すればいいので、処理が簡単ですよね。」

黒田「それが、現在の会計処理(オペレーティング・リース取引)は2027年4月から出来なくなるのです。」

リエ「そうなのですか。」

黒田「2024年9月13日に、リースに関する会計基準が公表されました。主な変更点として、借手の会計処理について、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分がなくなり、原資産の引渡しによりリースの借手に支配が移転した使用権部分に係る資産(使用権資産)と当該移転に伴う負債(リース負債)を計上する使用権モデルが採用されました。この変更により、リース資産は原則、貸借対照表に計上され、各期に利息分の支払いと元本の支払いを計算する必要があります(ファイナンス・リース取引の処理方法)。そのためリース会社への支払い金額を全額販管費として処理することはできません。新リース会計では、リース開始時における資産計上処理や毎月の償却、リース料支払い時の利息計上など、経理部門の業務負担は確実に増加します。ですので、これまでの会計システムでの運用が引き続き可能であるか、検討することが必要となります。」

リエ「今からでも少しずつ準備が必要ですね。」

監修

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税理士 坂部達夫

税理士法人坂部綜合会計/(株)アサヒ・ビジネスセンター

 東京都墨田区にて平成元年に開業して以来、税務コンサルを中心に問題解決型の税理士事務所であることを心がけて参りました。
 おかげさまで弊所は30周年を迎えることができました。今後もお客様とのご縁を大切にし、人に寄り添う税務に取り組んでいきます。

メールマガジンやセミナー開催を通じて、様々な情報を発信しています。

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リエ「最近、車のリースやサブスクを勧めるテレビCMや広告を頻繁に見かけます。これらの仕組みにはどの様な違いがあるのでしょうか。」黒田「カーリースとサブスクはどちらも月々定額で、自動車を利用するサービスという点で共通しています。一般的には、自動車メーカーが提供するサービスをサブスクと呼び、それ以外の企業が運営するサービスをカーリースと呼んでいるケースが多いです。両サービス共に、まずリース会社等の業者が利用者に代わって自動車を購入します。そして契約者は月々決められた料金を支払うことで自動車を使用できるという仕組みですね。」リエ「大きなお金を用意しなくても、月々決められた金額を支払うことで、好きな車に乗れるなんて便利なサービスですね。」黒田「必ずしも好きな自動車を自由に利用できるというものではありませんよ。好きな自動車を選択することができるかどうかは、サービスを提供している企業によって大きく異なります。自動車メーカーが提供するサブスクでは、そのメーカーの車種しか選択することができませんし、またオプション等の選択肢も限られたものである場合も多いです。その一方でリース会社の場合、多様なオプションを選ぶことができます。」リエ「選択肢の幅が広いならカーリースの方がよくないですか」黒田「バリエーションの多さだけで言えばそうかもしれないですね。これ以外にも、カーリースとサブスクには様々な相違点があります。自動車を長く所有していると、定期的なメンテナンスが必要になります。また万が一に備えて保険にも加入しておきたいですよね。サブスクの多くは月額の支払いの中にメンテナンス費用や任意保険の保険代が含まれていて、各種保証が充実しています。その一方で、カーリースにおいては、任意保険やメンテナンス費用が月額に含まれていないケースもあり、リース料の他に多くの出費を伴う可能性があります。」リエ「そういった各種保証についても考えないといけないのですね。契約期限が来たら、会社にきれいな状態で車を返さないといけないので心配です。」黒田「そうですね。どちらも、自動車を借りるサービスなので、基本的に期限が来たら返却する必要があります。そして多くのケースで資産の残価保証が設定されています。例えばリース期限に100万円の残価設定がされていた場合、リース製品の売却価格が80万円だったとしたら、20万円の不足額を追加で支払わなければなりません。そのため、自動車を綺麗に使うのはもちろんのこと、中古車市場の動向によっても追加の費用が発生するリスクが存在します。もちろん、契約期限が来たら自動車を買い取るプランも存在していますので、自動車の使用頻度等を考慮して、ベストな選択をすべきですね。」リエ「そもそも車のリースは、企業の財務負担と各種手続きに要する経理部門の負担を軽減する目的でサービスを拡大してきたのですよね。」黒田「社用車の購入は企業としても大きな出費ですので、定額支払いで自動車を使用でき、自動車諸税の納税や各種手続き、車両メンテナンスから解放されるメリットは大きいと思います。また会計上においても、固定資産を計上せずに企業活動を行えますので、自社の総資産がどれだけの利益を生み出しているか(総資産利益率)を考える必要がある場合、リース取引は有用です。また月額の支払い金額がそのまま販管費になるので、費用計算の簡略化にも繋がります。」リエ「毎月決まった金額の仕訳を入力すればいいので、処理が簡単ですよね。」黒田「それが、現在の会計処理(オペレーティング・リース取引)は2027年4月から出来なくなるのです。」リエ「そうなのですか。」黒田「2024年9月13日に、リースに関する会計基準が公表されました。主な変更点として、借手の会計処理について、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分がなくなり、原資産の引渡しによりリースの借手に支配が移転した使用権部分に係る資産(使用権資産)と当該移転に伴う負債(リース負債)を計上する使用権モデルが採用されました。この変更により、リース資産は原則、貸借対照表に計上され、各期に利息分の支払いと元本の支払いを計算する必要があります(ファイナンス・リース取引の処理方法)。そのためリース会社への支払い金額を全額販管費として処理することはできません。新リース会計では、リース開始時における資産計上処理や毎月の償却、リース料支払い時の利息計上など、経理部門の業務負担は確実に増加します。ですので、これまでの会計システムでの運用が引き続き可能であるか、検討することが必要となります。」リエ「今からでも少しずつ準備が必要ですね。」
2024.10.21 15:26:59