死亡した者に対する給与の取扱い
リエ「黒田さんこんにちは、実は先日私の友人の父親が亡くなりまして、そこでお聞きしたいことがあるんですがよろしいでしょうか。」
黒田「こんにちは、何でしょうか。」
リエ「その方は給与所得者で10月1日に亡くなり、9月分給与は通常通りに受け取ったんですが、その後亡くなるまでの10月分給与を日割りで受け取ったようなんです。これらの給与の取扱いで注意することはありますか。」
黒田「なるほど、そもそも各月分給与の計算期間と給与の支給日はいつに設定されていますか。」
リエ「前月21日から当月20日分を当月分給与とし、給与の支給日は当月25日に設定されているとお聞きしています。」
黒田「そうですか、ということは9月25日が支給日である9月分給与は給与所得として所得税の課税対象となります。また、年末調整されたのち『給与所得の源泉徴収票』に9月分までが記載されます。10月25日が支給日である10月分給与については相続税の課税対象となるため『給与所得の源泉徴収票』には記載されず、所得税は課税されません。」
リエ「なぜそのようになるのでしょうか、また給与の支給日はどのように関わってくるのでしょうか。」
黒田「相続税基本通達3-33では『相続開始の時において支給期の到来していない俸給、給料等は、法第3条第1項第2号に規定する退職手当金等には該当しないで、本来の相続財産に属するものであるから留意する。』とあり、相続財産になることが書かれています。また、所得税基本通達9-17では『死亡した者に係る給与等、公的年金等及び退職手当等で、その死亡後に支給期の到来するもののうち相続税法の規定により相続税の課税価格計算の基礎に算入されるものについては、課税しないものとする。』とあるため所得税が課税されないのです。」
リエ「確認したいんですが、支給期は支給日という認識でよろしいでしょうか。」
黒田「そうですね、支給期というのは、所得税法基本通達36-9で『給与所得の収入金額の収入すべき時期』として定められている日のことをいいます。ですので、おおむねその認識で良いと思います。」
リエ「そうなんですね。あともう1つ確認したいんですが、給与の支給日当日に亡くなった場合は相続税基本通達3-33における支給期の到来していない給料とならず、また所得税基本通達9-17における死亡後に支給期の到来するものともならないため所得税が課税される認識でよろしいでしょうか。」
黒田「ええ、つまり支給期の到来が死亡『以前』の場合は所得税の課税対象で、支給期の到来が死亡『後』の場合は相続財産として相続税の課税対象となるわけです。」
リエ「給与処理をする会社側としても、相続税の申告をする遺族側としても気をつけなくてはいけないですね。ありがとうございました。」