フリーランスを保護するフリーランス法
リエ「黒田さん、最近『フリーランス法』という言葉をよく聞くのですがご存知ですか。」
黒田「はい、11月から施行されるとあってあちこちで見たり聞いたりしますね。」
リエ「フリーランスの方に仕事を依頼する場合にいい加減な頼み方をしないようにとか、無理なことを言って困らせないようにするための法律かなとは思っているのですが、当社も個人の方に業務委託をすることがありますので、もう少し詳しいところを教えてもらってもいいですか。」
黒田「はい、この法律はリエさんがおっしゃる通り優位な立場を利用してフリーランスの方々に不利益を与えてはいけないという趣旨の法律です。普通に相手を尊重して仕事をされている方々は問題ないはずですが、結構細かく規定されていて知らずに指摘を受けてしまう可能性もありますので、フリーランスの方に業務委託をする場合は確認しておいた方がいいと思います。」
リエ「そもそもフリーランスってどういう方のことですか。」
黒田「法律上は『特定受託事業者』といいますが、業務委託を引き受ける事業者で従業員を使用しない方をいいます。ですから、代表者しかいない法人もここでいうフリーランスに該当します。さらに業務を委託する側、所謂発注者についても規定されていて、個人で従業員を使用する事業者と、法人で複数の役員がいる又は従業員を使用している事業者がこの法律でいう『特定業務委託事業者』となり、様々なルールを守らなければならない立場となります。」
リエ「当社がフリーランスの方に業務委託する場合は当然にこの法律の適用を受けるということですね。では、してはいけないことやしなくてはならないことというのはどんなことですか。」
黒田「それもケースによって規定されていますが、御社のようにフリーランスに該当しない方が、委託期間1ヵ月以上6ヵ月未満の業務をフリーランスに委託をするケースで申し上げます。」
リエ「はい、お願いします。」
黒田「書面やメール等で取引条件を明示すること、原則60日以内に報酬支払期日を設定し期日内に支払を実行すること、フリーランスを募集する場合に虚偽表示や誤解を招く表示をしないこと、各種ハラスメントに関する相談や適切な対応ができる体制を整備すること、出産若しくは育児又は介護と両立できるような配慮をするよう努めること、不当な受領拒否・報酬減額・返品・注文内容変更・やり直し要請、発注者の立場を利用した購入強制・利益提供要請をしてはならないことが定められています。」
リエ「フリーランスであっても当然に対等な取引先ですから、当たり前にやるべきことやしてはならないことがほとんどですね。受領拒否というのは依頼した業務が終わっているのに受け取らないということですか。」
黒田「そうです。フリーランス側に何らかの瑕疵があってのことならやむを得ませんが、そうではないのに受領拒否をして仕事を完了させずに報酬も支払わないといった行為です。」
リエ「ハラスメントに対応できる体制整備というのはどうしたらいいんでしょう。」
黒田「社内研修の実施、相談窓口の設置、ハラスメントが起きた時の適切な対応といったことが必要になります。」
リエ「中小企業は相談窓口の設置が容易ではありませんよね。」
黒田「確かにそうですが、厚生労働省が『フリーランス・トラブル110番』という窓口を設置していますので、これをフリーランスの方にハラスメント相談窓口としてお知らせするようにすれば相談窓口は用意したことになります。」
リエ「そうなんですね。ということは取引条件を明示する時などに、その窓口についてもお知らせすればいいですか。」
黒田「それでいいと思います。」
リエ「出産育児や介護に対する配慮というのはどの程度のことでしょうか。」
黒田「フリーランスの方から配慮の申出を受けた場合は、プライバシーに注意をしつつ状況やどういった配慮を希望しているのかを把握し、配慮できることできないことその配慮に伴う取引条件の変更内容等を十分に話し合ったうえで、スケジュールを調整したり、在宅業務への変更に応じたりといった配慮を行うということです。」
リエ「できる限りの配慮はしますが、やはりできないこともありますのできちんと話し合うことが重要ですね。」
黒田「そうでしょうね。ただ条文の表現では、業務委託期間が6ヵ月以上となる場合は『配慮をしなければならない』、6ヵ月未満は『配慮をするよう努めなければならない』という表現になっていますので、業務委託期間が6ヵ月以上になると法的な強制力は強くなります。」
リエ「なるほど、色々ありますね。確かにフリーランスの方に業務委託をする場合には、この法律を理解していないとトラブルになる可能性がありそうです。特にフリーランスの方と接する部署の従業員にはきちんと確認してもらいます。ありがとうございました。」