居住者の課税所得の範囲について
リエ「黒田さんこんにちは。私の知人の事で質問があるのですが、よろしいでしょうか。」
黒田「リエちゃんこんにちは、どんな内容でしょうか。」
リエ「大学時代に留学に来ていた方と仲良くなって、定期的に連絡を取っていたんです。数ヵ月の短期留学だったのでそのまま母国で就職していたのですが、一昨年からは日本に住むようになって、直接会ってお話することも増えました。それで先日お会いした時に、母国で不動産を売却したと言っていたのですが、これが日本で課税されるのかどうか心配していたんです。」
黒田「一つずつ整理していきましょう。まず、日本の居住者は、原則として国内で生じた所得及び国外で生じた所得のいずれについても、日本で課税されます。海外の不動産であっても、日本の居住者が売却したのであれば、国内の不動産を売却したのと同様に課税されることになります。」
リエ「はい、友人は今日本に住んでいるので、日本で課税されるのではないかと思ったのですが。」
黒田「そうですよね。そもそも日本の居住者というのは、日本国内に住所があるかまたは現在まで引き続いて1年以上居所がある個人のことです。」
リエ「日本に住み始めたのは一昨年なので、2年前後は日本に住んでいますね。1年は超えています。」
黒田「では日本の居住者に間違いなさそうですね。次に、居住者は『非永住者以外の居住者』と『非永住者』に分かれます。このうち『非永住者以外の居住者』は国内及び国外において生じたすべての所得が日本の課税所得の範囲となります。」
リエ「日本の居住者も2種類にわかれるんですね。では『非永住者』は日本での課税範囲が違うのでしょうか。」
黒田「『非永住者』に関しては、国外で生じた所得(国外源泉所得)以外の所得及び国外源泉所得で日本国内において支払われ、または国外から国内に送金されたもののみが日本の課税所得の範囲となります。」
リエ「海外の不動産の売却は国外で生じた所得ですし、売却相手も海外在住の方と言っていましたので、『非永住者』に該当すれば、日本では課税されなくて済みそうです。『非永住者』とはどういう方でしょうか。」
黒田「『非永住者』の定義は『日本国籍を有していない』と『過去10年以内において、日本国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である者』の両方に該当する方です。」
リエ「なるほど、それなら該当していると思います。ぬか喜びにならないように、もう一度本人と確認してみます。」
黒田「日本で課税されないとしても、売却した国の税制度の確認は忘れないでくださいね。」