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電子取引データの電子保存の猶予措置について

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リエ「黒田さんこんにちは。少し先のことですが、確認してもよろしいでしょうか。」

黒田「リエちゃん、こんにちは。何でしょうか。」

リエ「令和6年1月1日に間に合うように電子取引データの電子保存を見直しているのですが、令和5年度の税制改正大綱で新たに猶予措置が発表されたと聞きました。出力書面の保存で代替できる期間が延長された、ということでしょうか。」

黒田「いえ、今回発表された猶予措置は、出力書面の保存で代替ができるとしていた宥恕措置とは違うものと考えてください。宥恕措置は令和5年12月31日までで廃止する、と発表されました。」

リエ「そうなんですか。このままちょっとずつ延期してそのうち消滅しないかな、と期待していたのですが。では猶予措置では何が変更になるのでしょうか。」

黒田「猶予措置では、電子取引データの保存に関して保存要件、つまり検索性や真実性(タイムスタンプなど)にかかわらず保存することができる、となりました。要件としては、①所轄税務署長が保存要件に従って保存をすることができなかったことについて相当の理由があるとみとめること、②ダウンロードの求めに応じること、③出力書面の提示ができること、となります。」

リエ「電子取引データが厳密に保存されていなくても、出力書面が保存されていればよい、ということでしょうか。」

黒田「出力書面が保存されていればよいというのは語弊があります。電子取引情報がデータで保存されているのは必須で、そのうえで出力書面をきちんと整理された状態で提示できる必要があります。さらに税務署長が認める『相当の理由』というのが具体的には不明ですので、最初からこの猶予措置をあてにするのは危険です。
令和5年度の税制改正では、この猶予措置以外にも検索要件の緩和措置が拡大されて、ダウンロードの求めに応じることは前提として、その判定期間の売上高が5000万円以下である、もしくは出力書面が日付・取引先ごとに整理されていれば検索要件は満たしていなくても問題はないとされる予定です。」

リエ「なるほど、こんがらがってきました。弊社では今後も支払や発送のチェック用に電子取引でも書面で出力はする予定なんです。その出力書面を日付・取引先ごとにファイリングするのは今まで通りの作業なのでこれを続けた場合、電子取引データの電子保存はどうすればいいのでしょう。」

黒田「もちろん当初の想定通り、受け取ったらタイムスタンプを押して、後から検索できるように日付・取引先名等を入力して整理しておけば何の問題もありません。ただし、どうしても想定通りに作業が進まなかった場合、出力書面の整理をしているのであれば、とりあえず電子データで保存だけする、という状況も認められるようになります。」

リエ「ありがとうございました。猶予措置には頼らず、なるべく当初の規定通りに運用できるように準備するのがよさそうですね。そのうえで、書面も今まで通りに整理しておけば、多少は電子データでの保存要件に不備があっても大丈夫、という感じでしょうか。」

黒田「そうですね、それくらいで捉えるといいと思います。お手伝いできることがあればおっしゃってくださいね。」

監修

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税理士 坂部達夫

税理士法人坂部綜合会計/(株)アサヒ・ビジネスセンター

 東京都墨田区にて平成元年に開業して以来、税務コンサルを中心に問題解決型の税理士事務所であることを心がけて参りました。
 おかげさまで弊所は30周年を迎えることができました。今後もお客様とのご縁を大切にし、人に寄り添う税務に取り組んでいきます。

メールマガジンやセミナー開催を通じて、様々な情報を発信しています。

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リエ「黒田さんこんにちは。少し先のことですが、確認してもよろしいでしょうか。」黒田「リエちゃん、こんにちは。何でしょうか。」リエ「令和6年1月1日に間に合うように電子取引データの電子保存を見直しているのですが、令和5年度の税制改正大綱で新たに猶予措置が発表されたと聞きました。出力書面の保存で代替できる期間が延長された、ということでしょうか。」黒田「いえ、今回発表された猶予措置は、出力書面の保存で代替ができるとしていた宥恕措置とは違うものと考えてください。宥恕措置は令和5年12月31日までで廃止する、と発表されました。」リエ「そうなんですか。このままちょっとずつ延期してそのうち消滅しないかな、と期待していたのですが。では猶予措置では何が変更になるのでしょうか。」黒田「猶予措置では、電子取引データの保存に関して保存要件、つまり検索性や真実性(タイムスタンプなど)にかかわらず保存することができる、となりました。要件としては、①所轄税務署長が保存要件に従って保存をすることができなかったことについて相当の理由があるとみとめること、②ダウンロードの求めに応じること、③出力書面の提示ができること、となります。」リエ「電子取引データが厳密に保存されていなくても、出力書面が保存されていればよい、ということでしょうか。」黒田「出力書面が保存されていればよいというのは語弊があります。電子取引情報がデータで保存されているのは必須で、そのうえで出力書面をきちんと整理された状態で提示できる必要があります。さらに税務署長が認める『相当の理由』というのが具体的には不明ですので、最初からこの猶予措置をあてにするのは危険です。 令和5年度の税制改正では、この猶予措置以外にも検索要件の緩和措置が拡大されて、ダウンロードの求めに応じることは前提として、その判定期間の売上高が5000万円以下である、もしくは出力書面が日付・取引先ごとに整理されていれば検索要件は満たしていなくても問題はないとされる予定です。」リエ「なるほど、こんがらがってきました。弊社では今後も支払や発送のチェック用に電子取引でも書面で出力はする予定なんです。その出力書面を日付・取引先ごとにファイリングするのは今まで通りの作業なのでこれを続けた場合、電子取引データの電子保存はどうすればいいのでしょう。」黒田「もちろん当初の想定通り、受け取ったらタイムスタンプを押して、後から検索できるように日付・取引先名等を入力して整理しておけば何の問題もありません。ただし、どうしても想定通りに作業が進まなかった場合、出力書面の整理をしているのであれば、とりあえず電子データで保存だけする、という状況も認められるようになります。」リエ「ありがとうございました。猶予措置には頼らず、なるべく当初の規定通りに運用できるように準備するのがよさそうですね。そのうえで、書面も今まで通りに整理しておけば、多少は電子データでの保存要件に不備があっても大丈夫、という感じでしょうか。」黒田「そうですね、それくらいで捉えるといいと思います。お手伝いできることがあればおっしゃってくださいね。」
2023.03.27 16:02:18