厚生年金保険「70歳到達届」
今日は守田社労士の訪問日です。
リエ「守田先生、こんにちは。先日、日本年金機構から『70歳到達届』という書類が届いたのですが、どうすればいいですか。」
守田「近々70歳になる厚生年金の被保険者がいるのですね。」
リエ「そうなんです。初めてのケースですが、技術が優れているので、ずっと継続雇用をしていたら、もうすぐ70歳ですって。」
守田「70歳を超えてもそのまま継続雇用ということですね。原則、厚生年金は70歳で喪失となりますが、それ以降も雇用が続いて報酬を得ている場合は、受給している年金との調整があるので、『70歳以上被用者該当届』を提出しなければならないのです。」
リエ「『70歳以上被用者該当届』ですか、『70歳到達届』とは違うのですか。」
守田「『70歳以上被用者該当届』と『喪失届』を一緒にしたものを『70歳到達届』と言います。」
リエ「そういうことなんですね。」
守田「70歳で厚生年金を喪失するので、全員『喪失届』の提出が必要となりますが、継続雇用の場合は、『70歳以上被用者該当届』も提出が必要なので、『70歳到達届』として1枚にまとめられたのです。70歳で退職する場合は、『喪失届』だけの提出となります。」
リエ「なるほど。」
守田「そして、以前は被保険者が70歳を迎える都度、『70歳到達届』の提出が必要だったのですが、2019年(平成31年)4月以降は、70歳到達日時点の標準報酬月額相当額(※1)が、その前日における標準報酬月額と異なる場合以外は、提出が不要となりました。」
リエ「えっ、提出しなくてもいいのですか。」
守田「はい、70歳の時点で報酬に変更がなければ、提出は不要と考えていいと思います。」
リエ「ということは、70歳で退職する場合は『喪失届』、標準報酬が変更する場合は『70歳到達届』を提出するけど、標準報酬が変わらなければ何も提出しないということですね。」
守田「そういうことです。そして、70歳で厚生年金を喪失したとしても、最初にお話ししたように年金との調整がありますので、雇用が継続している間は今までと同様に、算定基礎届、月額変更届、賞与支払届を提出し続けなければなりません。その際は、『70歳以上被用者』を選択したうえで、被保険者番号ではなく(※2)、マイナンバーもしくは基礎年金番号を記載しての提出となりますので、ご注意ください。」
リエ「70歳までと少し違うんですね、わかりました。」
守田「それと、70歳を超えて継続雇用している場合に、気をつけてもらいたいことがもう1つあります。厚生年金は喪失しているのですが、70歳以上被用者として届が出ているとみなされますので、退職された場合は『70歳以上被用者不該当届』を提出しなければなりません。」
リエ「『喪失届』ではないのですね。」
守田「用紙は『喪失届』と同じものになるのですが、右下に『70歳不該当』の欄がありますので、こちらにもチェックを入れて退職日を記入して提出してください。特に、75歳以上になると健康保険も喪失してしまうので、提出を忘れてしまうことが多いようです。」
リエ「そうなんですね、気をつけます。今日はありがとうございました。」
(※1)標準報酬月額相当額の算出方法は、被保険者の資格取得時における標準報酬月額の算出方法と同じです。
(※2)協会けんぽ被保険者の場合、75歳までは健康保険としての用紙も兼ねているので、被保険者番号の記載も必要です。