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相続時精算課税にも基礎控除110万円が新設

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リエ「令和5年度税制改正大綱では、どのような改正が予定されていますか。」

黒田「資産税関係では、教育資金及び結婚・子育て資金の一括贈与に係る非課税措置の延長等や相続時精算課税制度の見直し、相続前贈与の加算期間の延長が検討されています。」

リエ「相続時精算課税制度の見直しとは、どのような内容でしょうか。」

黒田「端的に言えば、令和6年1月1日以降、相続時精算課税にも基礎控除110万円が新設されます。」

リエ「暦年課税制度と同様に110万円が控除されることになるのですね。ただ、相続又は遺贈により財産を取得する者が、被相続人から相続開始前3年以内の贈与により財産を取得している場合には、基礎控除額を含めてその贈与を受けた金額を相続財産に加算して相続税を計算する必要がありますよね。」

黒田「はい。今回の改正では、相続財産に加算しなければならない期間が、令和6年1月1日以後の贈与から3年から7年に延長もされる予定です。基礎控除額は同じなのですが、相続時精算課税の基礎控除額は、相続財産に加算されないという点で暦年課税制度の基礎控除とは異なります。」

リエ「一気に4年も伸びるのですか。」

黒田「この延長される4年間の贈与のうち、総額100万円までは相続財産に加算されないとされていますが、選択する制度によって差がでる結果となります。200万円の贈与が7年間続いた場合、暦年贈与制度では200万円×7年-100万円=1300万円、相続時精算課税制度では(200万円-110万円)×7年=630万円を相続財産に加算することになります。」

リエ「思ったより大きな差になりますね。相続時精算課税制度を選択すると贈与が行われた都度、申告しなければならないので手間がかかりますね。」

黒田「改正後は、基礎控除の110万円までは申告不要となります。また、相続時精算課税制度を適用して贈与を受けた一定の土地及び建物が、贈与者の相続税申告期限までに災害によって被害を受けた場合には、その贈与時の価額から被害相当額を減額できるようになる改正も予定されています。」

リエ「相続時精算課税を選択しても暦年課税制度を再度選択することはできますか。」

黒田「その点に変更はなく、一度相続時精算課税制度を選択すると再び暦年課税制度を選択することはできません。もちろん要件を満たしている必要がありますが、贈与者が異なれば暦年課税制度と相続時精算課税制度を使い分けることはできますので、それぞれの制度において基礎控除110万円を控除することができます。」

リエ「それぞれの状況や計画に合わせて自分にあった制度を選択する必要がありますね。」

監修

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税理士 坂部達夫

税理士法人坂部綜合会計/(株)アサヒ・ビジネスセンター

 東京都墨田区にて平成元年に開業して以来、税務コンサルを中心に問題解決型の税理士事務所であることを心がけて参りました。
 おかげさまで弊所は30周年を迎えることができました。今後もお客様とのご縁を大切にし、人に寄り添う税務に取り組んでいきます。

メールマガジンやセミナー開催を通じて、様々な情報を発信しています。

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リエ「令和5年度税制改正大綱では、どのような改正が予定されていますか。」黒田「資産税関係では、教育資金及び結婚・子育て資金の一括贈与に係る非課税措置の延長等や相続時精算課税制度の見直し、相続前贈与の加算期間の延長が検討されています。」リエ「相続時精算課税制度の見直しとは、どのような内容でしょうか。」黒田「端的に言えば、令和6年1月1日以降、相続時精算課税にも基礎控除110万円が新設されます。」リエ「暦年課税制度と同様に110万円が控除されることになるのですね。ただ、相続又は遺贈により財産を取得する者が、被相続人から相続開始前3年以内の贈与により財産を取得している場合には、基礎控除額を含めてその贈与を受けた金額を相続財産に加算して相続税を計算する必要がありますよね。」黒田「はい。今回の改正では、相続財産に加算しなければならない期間が、令和6年1月1日以後の贈与から3年から7年に延長もされる予定です。基礎控除額は同じなのですが、相続時精算課税の基礎控除額は、相続財産に加算されないという点で暦年課税制度の基礎控除とは異なります。」リエ「一気に4年も伸びるのですか。」黒田「この延長される4年間の贈与のうち、総額100万円までは相続財産に加算されないとされていますが、選択する制度によって差がでる結果となります。200万円の贈与が7年間続いた場合、暦年贈与制度では200万円×7年-100万円=1300万円、相続時精算課税制度では(200万円-110万円)×7年=630万円を相続財産に加算することになります。」リエ「思ったより大きな差になりますね。相続時精算課税制度を選択すると贈与が行われた都度、申告しなければならないので手間がかかりますね。」黒田「改正後は、基礎控除の110万円までは申告不要となります。また、相続時精算課税制度を適用して贈与を受けた一定の土地及び建物が、贈与者の相続税申告期限までに災害によって被害を受けた場合には、その贈与時の価額から被害相当額を減額できるようになる改正も予定されています。」リエ「相続時精算課税を選択しても暦年課税制度を再度選択することはできますか。」黒田「その点に変更はなく、一度相続時精算課税制度を選択すると再び暦年課税制度を選択することはできません。もちろん要件を満たしている必要がありますが、贈与者が異なれば暦年課税制度と相続時精算課税制度を使い分けることはできますので、それぞれの制度において基礎控除110万円を控除することができます。」リエ「それぞれの状況や計画に合わせて自分にあった制度を選択する必要がありますね。」
2023.03.06 16:17:19