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インボイス制度における仕入税額控除

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インボイス制度における仕入税額控除

あゆみ:そういえばさ、前に帳簿と請求書等を保存することが、仕入税額控除の要件だよって教えてもらったけど、インボイス制度が始まったらどうなるの

ケン:おっしゃる通り、現行制度での仕入税額控除の要件は、一定の事項が記載された帳簿と請求書等を保存することです。
   ここでいう帳簿に記載される一定の事項とは
   ① 課税仕入れの相手方の氏名または名称
   ② 課税仕入れを行った年月日
   ③ 課税仕入れに係る資産または役務の内容(軽減対象資産である場合には、資産の内容および軽減対象資産の譲渡等に係るものである旨)
   ④ 課税仕入れに係る支払対価の額(消費税額等を含む)
です。
また、請求書等に記載される一定の事項とは
   ① 書類の作成者の氏名または名称
   ② 課税資産の譲渡等を行った年月日(期間の記載可)
   ③ 課税資産の譲渡等に係る資産または役務の内容(軽減対象資産である場合には、その旨)
   ④ 税率の異なるごとに区分して合計した課税資産の譲渡等の対価の額(消費税額等を含む)
   ⑤ 書類の交付を受ける当該事業者の氏名または名称
となっています。
以上は現行制度です。
インボイス制度が始まると一定の事項が記載された帳簿と請求書等と、文言は変わりませんが、請求書等が基本的にインボイス(適格請求書等)となります。

あゆみ:適格請求書等の「等」には何が含まれるの

ケン:インボイス制度での「請求書等」とは
   ① 適格請求書
   ② 適格簡易請求書
   ③ 適格請求書又は適格簡易請求書の記載事項に係る電磁的記録
   ④ 適格請求書の記載事項が記載された仕入明細書、仕入計算書その他これに類する書類(相手方の確認を受けたもの。電磁的記録を含む。)
などです。

あゆみ:今までの請求書とかじゃダメなのよね?

ケン:おっしゃる通りです。
   このインボイスを発行するには税務署に消費税を納める課税事業者となることが必
要で、今年の3月までに登録を申請する必要があります。

あゆみ:だから、取引の相手がインボイス発行事業者として登録しているかどうかを確認す
る必要があるってことね。

ケン:おっしゃる通りです。

一定の事項を記載した帳簿のみの保存で要件を満たす場合

あゆみ:だんだん分かってきたわ。でも前回、旅費とか自動販売機でインボイスを交付しなくていいって取引があったわよね?それはどうすればいいの?

ケン:その場合には、帳簿に一定の事項を記載し、その帳簿を保存することで要件を満たします。
   その取引とは以下の取引です。
   ① 3万円未満の公共交通機関による旅客の運送
   ② 適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除く)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引
   ③ 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス               
機からの商品の購入等
   ④ 郵便ポストに投函される郵便物、ゆうパック等   
   ⑤ 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当
   ⑥ 古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物の購入
   ⑦ 質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物の取得
   ⑧ 宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物の購入
   ⑨ 適格請求書発行事業者でない者からの再生資源又は再生部品の購入
ここで⑥から⑨まではあゆみ社長の会社は該当しません。

あゆみ:いや、古物営業は始めようと思っていて、古物商の許可を取ろうと思っていたところなの。だから情報として有用よ。ありがとう。

一定の事項とは?

あゆみ:ところで、その帳簿に記載する「一定の事項」って何を記載しなきゃいけないの?

ケン:帳簿のみの保存で仕入税額控除が適用できる課税仕入れに該当する旨の文言が記載されていればいいこととされています。
具体的には
   ①に該当する場合、「3万円未満の鉄道料金」
   ②に該当する場合、「入場券等」
   ③に該当する場合、「〇〇市 自販機」、「××銀行□□支店ATM」
   などと記載すればよいとされています。

あゆみ:古物商取引の場合は?

ケン:古物商取引の場合には、商品を仕入れた際の対価の総額が1万円以上(税込み)であれば古物台帳に
   ⑥ 取引年月日
   ⑦ 古物の品目及び数量
   ⑧ 古物の特徴
   ⑨ 相手方の住所、氏名、職業及び年齢
   ⑩ 相手方の確認方法
を記載し、保存しなければならないこととされています。
古物台帳に「一定の事項を記載した帳簿」の記載事項のうち、①から④は記載されているので、古物台帳と帳簿に「帳簿のみの保存で仕入税額控除が適用できる課税仕入である旨」の記載があれば事足りることとなります。

あゆみ:帳簿の保存って面倒よね。

ケン:お気持ちはわかりますが、保存をお願い致します。

執筆者情報

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清水 透

清水透税理士事務所 所長 税理士(登録番号104689)

平成18年2月税理士登録
大手税理士事務所に勤務しつつ、平成25年4月~平成28年1月の間みずほ銀行に出向。
平成28年2月独立開業
法人税・消費税・所得税・相続税の申告業務の中でも、法人オーナーに対する相続税約1億円を節税する株式承継の提案や個人の不動産オーナーに対する相続税約5,000万円を節税する提案などの経験。
また税制改正や事業承継の全国でのセミナー、全国のお客様に対し法人の株式承継対策や個人の方々の相続税対策の提案に毎日奔走中。
「気がつけばあなたも相続税?」2011.9(共著)出版
協力:株式会社実務経営サービス
https://www.jkeiei.co.jp/

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あゆみ:そういえばさ、前に帳簿と請求書等を保存することが、仕入税額控除の要件だよって教えてもらったけど、インボイス制度が始まったらどうなるのケン:おっしゃる通り、現行制度での仕入税額控除の要件は、一定の事項が記載された帳簿と請求書等を保存することです。   ここでいう帳簿に記載される一定の事項とは   ① 課税仕入れの相手方の氏名または名称   ② 課税仕入れを行った年月日   ③ 課税仕入れに係る資産または役務の内容(軽減対象資産である場合には、資産の内容および軽減対象資産の譲渡等に係るものである旨)   ④ 課税仕入れに係る支払対価の額(消費税額等を含む)です。また、請求書等に記載される一定の事項とは   ① 書類の作成者の氏名または名称   ② 課税資産の譲渡等を行った年月日(期間の記載可)   ③ 課税資産の譲渡等に係る資産または役務の内容(軽減対象資産である場合には、その旨)   ④ 税率の異なるごとに区分して合計した課税資産の譲渡等の対価の額(消費税額等を含む)   ⑤ 書類の交付を受ける当該事業者の氏名または名称となっています。以上は現行制度です。インボイス制度が始まると一定の事項が記載された帳簿と請求書等と、文言は変わりませんが、請求書等が基本的にインボイス(適格請求書等)となります。あゆみ:適格請求書等の「等」には何が含まれるのケン:インボイス制度での「請求書等」とは   ① 適格請求書   ② 適格簡易請求書    ③ 適格請求書又は適格簡易請求書の記載事項に係る電磁的記録    ④ 適格請求書の記載事項が記載された仕入明細書、仕入計算書その他これに類する書類(相手方の確認を受けたもの。電磁的記録を含む。) などです。あゆみ:今までの請求書とかじゃダメなのよね?ケン:おっしゃる通りです。   このインボイスを発行するには税務署に消費税を納める課税事業者となることが必要で、今年の3月までに登録を申請する必要があります。あゆみ:だから、取引の相手がインボイス発行事業者として登録しているかどうかを確認する必要があるってことね。ケン:おっしゃる通りです。
2023.01.25 16:55:29