一般社団法人等に係る法人税の課税制度

…はじめに…
<Point1>
法人税法上の「普通法人」は全ての所得について課税される。これに対して法人税法上の「公益法人等」に該当する法人については34種類の収益事業に係る所得に限って課税される。
<Point2>
社団法人や財団法人のうち、主務官庁から「公益社団法人」または「公益財団法人」として認可を受けた法人については、法人税法上の「公益法人等」に該当し34種類の収益事業に係る所得に限って課税されるなど、課税上の優遇措置の対象とされる。
<Point3>
上記に掲げた「公益社団・公益財団」以外の「一般社団・財団」については、法人税法ではこれを「非営利型法人」と「それ以外の法人」に区分した上で、「非営利型法人」については「公益法人等」に該当するものとして34種類の収益事業に係る所得に限って課税するものとし「それ以外の一般社団・財団法人」については営利法人である株式会社などと同じく普通法人として全ての所得について課税を行うものとしている。
<Point4>
「一般社団・財団」が「公益法人等」に該当するかどうかの要件については法人税法第2条9の2、同令3条及び法人税基本通達などにより示されている。「一般社団・財団」が税法上の「非営利型法人」に当たるかどうかの判定は税務署長などがあらかじめ認定等を行うなどの制度とはなっておらず、あくまでも実態により判断とされる。このため要件を満たすかどうかについては法令及び通達などに基づき慎重に判断する必要がある。
本稿では、税法上の「一般社団・財団」が「非営利型法人」に当たるかどうかの判断基準について解説し参考に供する。
…解説…
1 一般社団法人等に対する法人税法の課税制度の概要
法人税法は、内国法人のうち法人税法別表第二に掲げる特定の法人を「公益法人等」という定義にした上で、これらの法人については、各事業年度の所得のうち法人税法施行令第5条に掲げる34種類の「収益事業」から生じた所得についてだけ法人税を課税するものと規定している。したがって「収益事業」以外の事業から生じた所得については、法人税が課税されないことになる。
法人税法上の普通法人に該当する株式会社等については各事業年度の所得のすべてが課税対象となるのに比し、課税範囲が限定されているという意味で「公益法人等」については法人税法上の制限納税者に該当し、税制上の優遇措置の対象とされているともいえる。
2 公益法人等の範囲
「公益法人等」とは、法人税法別表第二に列挙されている特定の法人を言うこととされている。この別表第二に掲げられる法人としては、社会医療法人、学校法人、社会福祉法人、宗教法人、税理士会、日本公認会計士協会などの他、社団法人及び財団法人のうち、①公益社団法人又は公益財団法人及び②一般社団法人及び一般財団法人のうち「非営利型法人」に該当するものも含まれるものとされている。
(1) 公益社団法人・公益財団法人
一般社団法人及び一般財団法人については「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」により、行政庁の許可なく登記のみで設立できることとされているが、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」により、一般社団法人又は一般財団法人のうち公益目的事業を行うことを主たる目的とする法人で、一定の公益認定基準を満たすものは、行政庁の認定を受けることにより、公益社団法人は公益財団法人となることができる。この認定を受けた法人は、法人税法上の「公益法人等」に該当するものとされている。
(2) 非営利型一般社団法人及び一般財団法人
上記の公益認定を受けていない一般社団法人及び一般財団法人のうち、以下のイ又はロに掲げる要件を満たす社団・財団、すなわち「非営利性が徹底された法人」と「共益的活動を目的とする法人」については、法人税法上の「公益法人等」の範囲に含まれることとされている。
イ「非営利性が徹底された法人」
(イ) 定義
その行う事業により利益を得ること又はその得た利益を分配することを目的としない法人であってその事業を運営するための組織が適正であるものとして、次のすべての要件に該当する一般社団法人・一般財団法人(法法2九の二イ、法令3①)。
① その定款に剰余金の分配を行わない旨の定めがあること
② その定款に解散したときはその残余財産が国若しくは地方公共団体又は一定の公益社団法人等に帰属する旨の定めがあること
③ ①又は②の定款の定めに反する行為(…特別の個人又は団体に特別の利益を与えることを含む。)を行うことを決定し、又は行ったことがないこと
④ 各理事について、当該理事及び当該理事の配偶者又は3親等以内の親族その他の当該理事と特殊の関係のある者である理事の合計数の理事の総数のうちに占める割合が、3分の1以下であること
(ロ) 判定に当たっての留意事項
・ 「特別の個人又は団体に特別の利益を与えること」の意義
上記(イ)の③に掲げる「特別の利益を与えること」とは、例えば、次に掲げるような経済的利益の供与又は金銭その他の資産の交付で、社会通念上不相当なものをいうこととされている(基通1-1-8)。
① 法人が、特定の個人または団体に対し、その所有する土地、建物その他の資産を無償又は通常よりも低い賃貸料で貸し付けていること。
② 法人が、特定の個人又は団体に対し、無利息又は通常よりも低い利率で金銭を貸し付けていること。
③ 法人が、特定の個人又は団体に対し、その所有する資産を無償又は通常よりも低い対価で譲渡していること。
④ 法人が、特定の個人又は団体から通常よりも高い賃借料により土地、建物その他の資産を賃借していること又は通常よりも高い利率により金銭を借り受けていること。
⑤ 法人が特定の個人又は団体の所有する資産を通常よりも高い対価で譲りうけていること又は法人の事業の用に供すると認められない資産を取得していること。
⑥ 法人が、特定の個人に対し、過大な給与等を支給していること。
なお、「特別の利益を与えること」には、収益事業に限らず、収益事業以外において行われる経済的利益の供与又は金銭その他の資産の交付が含まれるものとされている。
・ 「当該理事と特殊の関係のある者」の範囲
上記(イ)の④に掲げる「当該理事と特殊の関係のある者」については次の者をいうものとされている(法規2の2①)。
① 当該理事の配偶者
② 当該理事の3親等以内の親族
③ 当該理事と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
④ 当該理事の使用人
⑤ ①~④に掲げる者以外の者で当該理事から受ける金銭その他の資産によって生計を維持しているもの
⑥ ③~⑤に掲げる者と生計を一にするこれらの者の配偶者又は3親等以内の親族
ロ 共益活動を目的とする法人
(イ) 定義
その会員から受け入れる会費により当該会員に共通する利益を図るための事業を行う法人であってその事業を運営するための組織が適正であるものとして次のすべての要件に該当する一般社団法人・一般財団法人(法法2九の二ロ、法令3②)。
① その会員の相互の支援、交流、連絡その他当該会員に共通する利益を図る活動を行うことをその主たる目的としていること
② その定款に、その会員が会費として負担すべき金銭の額の定め又は当該金銭の額を社員総会若しくは評議委員会の決議により定める旨の定めがあること
③ その主たる事業として収益事業を行っていないこと
④ その定款に特定の個人又は団体に剰余金の分配を受ける権利を与える旨の定めがないこと
⑤ その定款に解散したときはその残余財産が特定の個人又は団体(国若しくは地方公共団体、公益社団法人又は公益財団法人等を除きます。)に帰属する旨の定めがないこと
⑥ 特定の個人又は団体に剰余金の分配その他の方法により特別の利益を与えることを決定し、又は与えたことがないこと
⑦ 各理事について、当該理事及び当該理事の配偶者又は三親等以内の親族その他の当該理事と特殊の関係にある者である理事の合計数の理事の総数のうちに占める割合が3分の1以下であること
(ロ) 判定に当たっての留意事項
・ 「主たる事業として収益事業を行っていない」場合とは
上記イの③に掲げる「主たる事業として収益事業を行っていない」場合に該当するかどうかは、原則として、その法人が主たる事業として収益事業を行うことが常態となっていないかどうかにより判定する。この場合において主たる事業であるかどうかは、法人の事業の態様に応じて、例えば収入金額や費用の金額等の合理的と認められる指標を総合的に勘案し、当該合理的指標による収益事業以外の割合がおおむね50%を超えるかどうかにより判定する。
ただし、その法人の行う事業の内容に変更があるなど、収益事業の割合と収益事業以外の割合の比に大きな変動を生ずる場合を除き、当該事業年度の前事業年度における合理的指標による収益事業以外の事業の割合が概ね50%を超えるときには、当該事業年度の開始の日において「主たる事業として収益事業を行っていない」場合に該当しているものと判定して差し支えないとされている。
この場合において、前事業年度指標では収益事業以外の事業の割合がおおむね50%を超えないとしても、判定事業年度ではおおむね50%を超えるような場合には「主たる事業として収益事業を行っていない」場合に該当することにはならないものとされている。(基通1-1-10)
・ 上記要件中の「特別の個人又は団体に特別の利益を与えること」の意義および「当該理事と特殊の関係のある者」の範囲については、イの「非営利性が徹底された法人」に係る要件の場合と同様に解するものとされている。