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16歳未満の障害者控除

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リエ「税務署から年末調整の書類が届くと、もうこんな季節なのかと1年が早く感じます。」

黒田「確かにそうですね。年末調整の必要書類は従業員さんに配布しましたか。」

リエ「はい、配布が終わりあとは回収するだけになっています。」

黒田「段取りが早いですね。」

リエ「黒田さん、障害者控除について質問が幾つかあるのですが。」

黒田「どんな質問でしょうか。」

リエ「扶養控除の適用を受けることができない16歳未満の同居扶養親族が特別障害者であった場合、障害者控除は受けられないのでしょうか。」

黒田「障害者控除は、自身または生計を同じくする配偶者や扶養親族が、所得税法の障害者に該当した場合には、一定金額の所得控除を受けることができます。
控除対象扶養親族は16歳以上に限られますが、障害者控除の扶養親族には年齢制限を設けていませんので、16歳未満の扶養親族が障害者に該当する場合は、障害者控除を受けることができます。また、特別障害者や同居特別障害者にも年齢制限はありませんので、その扶養親族が16歳未満であっても、それぞれの控除額による所得控除の適用を受けることができます。」

リエ「なるほど、障害者控除は年齢を問わないのですね。あともう一つ質問があります。」

黒田「どんなことですか。」

リエ「従業員が年末調整で国外居住親族を扶養親族とする場合、親族であることを証明するための『親族関係書類』と扶養していることを証明するための『送金関係書類』を提出してもらう必要がありますね。」

黒田「そうですね、さらにそれらの書類が外国語で作成されていた場合には、その翻訳文もあわせて提出して頂く必要があります。」

リエ「扶養控除の対象とならない16歳未満の国外居住親族についてはその必要がないと思っていたのですが、障害者控除を受ける場合には16歳未満であってもそれらの書類が必要ということでしょうか。」

黒田「そうです。国外居住親族が扶養親族であっても、16歳未満の場合は扶養控除の適用を受けられませんので、所得税法においては親族関係書類や送金関係書類は不要ですが、その16歳未満の国外居住親族について障害者控除を受けるとなると、それらの書類を提出して頂く必要が生じます。ただ16歳未満の扶養親族でも地方税では非課税限度額の計算に影響するので、国外居住親族を扶養親族として申告する場合は、原則として親族関係書類と送金関係書類が必要であることを従業員に説明し、年末調整の時までにそれらの書類を提出させることができる状況を整えておく必要があります。」

リエ「そうですね、わかりました。それともう一つ、扶養親族等が障害者であることを確認する場合、通常は障害者手帳などのコピーを提出してもらったりしていますが、その障害者が国外居住親族である場合はどうやって確認すればよいのでしょうか。」

黒田「それについては、正直難しいです。障害者控除の対象となる障害者には『障害者』と『特別障害者』の2種類に区分され、それぞれに該当する要件が定められています。その要件を簡単に申しますと、所得税法上の障害者となるのは、①身体障害者福祉法等の法律や公的機関によって一定以上の障害があることが認定されている人、②精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人、③その年の12月31日の現状で引き続き6ヵ月以上にわたって身体の障害により寝たきりの状態で、複雑な介護を受けなければ自ら排便等をすることができない程度の状態にある人、とされています。そしてこのうち、①に該当する人で特に障害が重いと認定されている人と、②と③に該当する人は特別障害者とされています。」

リエ「日本国内に居住経験がない国外居住親族を日本の法律や公的機関が障害者として認定することはありませんよね。」

黒田「仰る通り認定されることはないでしょうから、そのような国外居住親族を障害者として障害者控除の適用を受ける場合、前述の②か③に該当することが認められなければならないということになります。」

リエ「結果的に特別障害者に該当しないと障害者控除を受けられないということですよね。でも特別障害者に該当するとしてもそれを証明することって難しいですよね。」

黒田「そうですね。国税庁のHPでは『法令上の要件ではありませんが、医師の診断書など特別障害者であることを確認できる書類を提出または提示してもらって確認することをお勧めします。』といった説明がされています。ただその前提として従業員にどういった状況であれば障害者や特別障害者に該当するのか、ということをきちんと理解して頂く必要があります。」

リエ「一応理解しましたが、ここ何年かで年末調整がとても複雑になっているような気がして業務負荷掛かります。」

黒田「全く同感ですが、何とか頑張って下さい。」

リエ「はい」

監修

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税理士 坂部達夫

税理士法人坂部綜合会計/(株)アサヒ・ビジネスセンター

 東京都墨田区にて平成元年に開業して以来、税務コンサルを中心に問題解決型の税理士事務所であることを心がけて参りました。
 おかげさまで弊所は30周年を迎えることができました。今後もお客様とのご縁を大切にし、人に寄り添う税務に取り組んでいきます。

メールマガジンやセミナー開催を通じて、様々な情報を発信しています。

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リエ「税務署から年末調整の書類が届くと、もうこんな季節なのかと1年が早く感じます。」黒田「確かにそうですね。年末調整の必要書類は従業員さんに配布しましたか。」リエ「はい、配布が終わりあとは回収するだけになっています。」黒田「段取りが早いですね。」リエ「黒田さん、障害者控除について質問が幾つかあるのですが。」黒田「どんな質問でしょうか。」リエ「扶養控除の適用を受けることができない16歳未満の同居扶養親族が特別障害者であった場合、障害者控除は受けられないのでしょうか。」黒田「障害者控除は、自身または生計を同じくする配偶者や扶養親族が、所得税法の障害者に該当した場合には、一定金額の所得控除を受けることができます。控除対象扶養親族は16歳以上に限られますが、障害者控除の扶養親族には年齢制限を設けていませんので、16歳未満の扶養親族が障害者に該当する場合は、障害者控除を受けることができます。また、特別障害者や同居特別障害者にも年齢制限はありませんので、その扶養親族が16歳未満であっても、それぞれの控除額による所得控除の適用を受けることができます。」リエ「なるほど、障害者控除は年齢を問わないのですね。あともう一つ質問があります。」黒田「どんなことですか。」リエ「従業員が年末調整で国外居住親族を扶養親族とする場合、親族であることを証明するための『親族関係書類』と扶養していることを証明するための『送金関係書類』を提出してもらう必要がありますね。」黒田「そうですね、さらにそれらの書類が外国語で作成されていた場合には、その翻訳文もあわせて提出して頂く必要があります。」リエ「扶養控除の対象とならない16歳未満の国外居住親族についてはその必要がないと思っていたのですが、障害者控除を受ける場合には16歳未満であってもそれらの書類が必要ということでしょうか。」黒田「そうです。国外居住親族が扶養親族であっても、16歳未満の場合は扶養控除の適用を受けられませんので、所得税法においては親族関係書類や送金関係書類は不要ですが、その16歳未満の国外居住親族について障害者控除を受けるとなると、それらの書類を提出して頂く必要が生じます。ただ16歳未満の扶養親族でも地方税では非課税限度額の計算に影響するので、国外居住親族を扶養親族として申告する場合は、原則として親族関係書類と送金関係書類が必要であることを従業員に説明し、年末調整の時までにそれらの書類を提出させることができる状況を整えておく必要があります。」リエ「そうですね、わかりました。それともう一つ、扶養親族等が障害者であることを確認する場合、通常は障害者手帳などのコピーを提出してもらったりしていますが、その障害者が国外居住親族である場合はどうやって確認すればよいのでしょうか。」黒田「それについては、正直難しいです。障害者控除の対象となる障害者には『障害者』と『特別障害者』の2種類に区分され、それぞれに該当する要件が定められています。その要件を簡単に申しますと、所得税法上の障害者となるのは、①身体障害者福祉法等の法律や公的機関によって一定以上の障害があることが認定されている人、②精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人、③その年の12月31日の現状で引き続き6ヵ月以上にわたって身体の障害により寝たきりの状態で、複雑な介護を受けなければ自ら排便等をすることができない程度の状態にある人、とされています。そしてこのうち、①に該当する人で特に障害が重いと認定されている人と、②と③に該当する人は特別障害者とされています。」リエ「日本国内に居住経験がない国外居住親族を日本の法律や公的機関が障害者として認定することはありませんよね。」黒田「仰る通り認定されることはないでしょうから、そのような国外居住親族を障害者として障害者控除の適用を受ける場合、前述の②か③に該当することが認められなければならないということになります。」リエ「結果的に特別障害者に該当しないと障害者控除を受けられないということですよね。でも特別障害者に該当するとしてもそれを証明することって難しいですよね。」黒田「そうですね。国税庁のHPでは『法令上の要件ではありませんが、医師の診断書など特別障害者であることを確認できる書類を提出または提示してもらって確認することをお勧めします。』といった説明がされています。ただその前提として従業員にどういった状況であれば障害者や特別障害者に該当するのか、ということをきちんと理解して頂く必要があります。」リエ「一応理解しましたが、ここ何年かで年末調整がとても複雑になっているような気がして業務負荷掛かります。」黒田「全く同感ですが、何とか頑張って下さい。」リエ「はい」
2022.11.21 16:16:24