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副業収入に係る雑所得の所得区分判定について

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黒田「少し前に副業での収入を事業所得にするか雑所得にするかという話をしたことがありますが覚えていらっしゃいますか。」

リエ「ええ、副業収入が300万円以下の場合は雑所得で申告しなければならなくなるというお話でした。」

黒田「あの時は国税庁がそのことについての意見公募を締め切った少し後で、改正案のまま確定するだろうと思ってそのように申し上げたのですが、反対というか問題点を指摘する意見が多かったことを受けて、先日、予定していた改正内容を一部変更する形で確定しました。」

リエ「そうなんですか、どのように変更されたのですか。」

黒田「当初の改正案では、『社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定するのであるが、その所得がその者の主たる所得でなく、かつその所得にかかる収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証がない限り雑所得として取り扱う。』という内容でした。この改正案が公表された時には、特別な反証を示すのは難しいので、結局副業で年間300万円以下の収入の場合は事業所得として認められなくなるだろうと考えていました。しかし最終的な改正内容としては、『社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得(資産(山林を除く。)の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得)に該当することに留意する。』という内容に変わりました。」

リエ「副業であることは関係なくなったのですか。」

黒田「意見公募で当初改正案の『主たる所得』という言葉が不明確である、という意見があったことを受けてその言葉は使わないようにしたみたいです。その代わりに所得税法上、事業所得には帳簿書類の保存が義務付けられている点を鑑みて、帳簿書類の保存の有無を所得区分判定基準の一つとしたようです。」

リエ「確かに何が主なのかを判定する場合に、最終的な所得金額の大きさで決めるのか費やした時間や労力で決めるのか難しいところですよね。そして帳簿書類の保存ですか、収入が300万円を超えていて、なおかつ事業所得と認められる事実があれば帳簿書類は必須ではないとも読み取れますが、事業所得と認められる事実って何ですか。」

黒田「ケースバイケースで色々あるかもしれませんが、一つ考えられるのは他に収入がないということでしょう。」

リエ「そこで副業を想定しているわけですね。」

黒田「はい、帳簿も作成していない副業の場合は、その収入が300万円を超えていても事業所得とは認めません、ということが言いたいのではないかと考えています。」

リエ「そして収入が300万円以下でも帳簿の保存がされていれば事業所得として認めるということですか。」

黒田「いえ、そこは解釈を誤って頂きたくないのですが、帳簿があればそれだけで全て事業所得と言っているのではありません。前提として社会通念で判断するとありますので、帳簿があったとしても、社会通念上事業と称するに至る程度ではない場合は事業所得とはなりません。」

リエ「なるほど、そこはどうしても曖昧さが残ってしまうということですか。」

黒田「そうですね、政府が副業を推奨する方針を打ち出していることもあって、副業収入の所得区分を明確にして申告しやすくすることが改正目的の一つだったと思いますが、結局曖昧な部分が残ってしまったということですね。」

リエ「副業による所得を事業所得で申告するのであれば、最低限の条件として帳簿書類の作成保存が必要ということですね。わかりました、もし私が副業するようなことがあったらまた相談させて頂きます。」

監修

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税理士 坂部達夫

税理士法人坂部綜合会計/(株)アサヒ・ビジネスセンター

 東京都墨田区にて平成元年に開業して以来、税務コンサルを中心に問題解決型の税理士事務所であることを心がけて参りました。
 おかげさまで弊所は30周年を迎えることができました。今後もお客様とのご縁を大切にし、人に寄り添う税務に取り組んでいきます。

メールマガジンやセミナー開催を通じて、様々な情報を発信しています。

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黒田「少し前に副業での収入を事業所得にするか雑所得にするかという話をしたことがありますが覚えていらっしゃいますか。」リエ「ええ、副業収入が300万円以下の場合は雑所得で申告しなければならなくなるというお話でした。」黒田「あの時は国税庁がそのことについての意見公募を締め切った少し後で、改正案のまま確定するだろうと思ってそのように申し上げたのですが、反対というか問題点を指摘する意見が多かったことを受けて、先日、予定していた改正内容を一部変更する形で確定しました。」リエ「そうなんですか、どのように変更されたのですか。」黒田「当初の改正案では、『社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定するのであるが、その所得がその者の主たる所得でなく、かつその所得にかかる収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証がない限り雑所得として取り扱う。』という内容でした。この改正案が公表された時には、特別な反証を示すのは難しいので、結局副業で年間300万円以下の収入の場合は事業所得として認められなくなるだろうと考えていました。しかし最終的な改正内容としては、『社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得(資産(山林を除く。)の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得)に該当することに留意する。』という内容に変わりました。」リエ「副業であることは関係なくなったのですか。」黒田「意見公募で当初改正案の『主たる所得』という言葉が不明確である、という意見があったことを受けてその言葉は使わないようにしたみたいです。その代わりに所得税法上、事業所得には帳簿書類の保存が義務付けられている点を鑑みて、帳簿書類の保存の有無を所得区分判定基準の一つとしたようです。」リエ「確かに何が主なのかを判定する場合に、最終的な所得金額の大きさで決めるのか費やした時間や労力で決めるのか難しいところですよね。そして帳簿書類の保存ですか、収入が300万円を超えていて、なおかつ事業所得と認められる事実があれば帳簿書類は必須ではないとも読み取れますが、事業所得と認められる事実って何ですか。」黒田「ケースバイケースで色々あるかもしれませんが、一つ考えられるのは他に収入がないということでしょう。」リエ「そこで副業を想定しているわけですね。」黒田「はい、帳簿も作成していない副業の場合は、その収入が300万円を超えていても事業所得とは認めません、ということが言いたいのではないかと考えています。」リエ「そして収入が300万円以下でも帳簿の保存がされていれば事業所得として認めるということですか。」黒田「いえ、そこは解釈を誤って頂きたくないのですが、帳簿があればそれだけで全て事業所得と言っているのではありません。前提として社会通念で判断するとありますので、帳簿があったとしても、社会通念上事業と称するに至る程度ではない場合は事業所得とはなりません。」リエ「なるほど、そこはどうしても曖昧さが残ってしまうということですか。」黒田「そうですね、政府が副業を推奨する方針を打ち出していることもあって、副業収入の所得区分を明確にして申告しやすくすることが改正目的の一つだったと思いますが、結局曖昧な部分が残ってしまったということですね。」リエ「副業による所得を事業所得で申告するのであれば、最低限の条件として帳簿書類の作成保存が必要ということですね。わかりました、もし私が副業するようなことがあったらまた相談させて頂きます。」
2022.11.14 16:45:21