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インボイス制度のメリット・デメリットを徹底解説!準備すべきことも紹介

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2023年10月から、現行の請求書から適格請求書(インボイス)へと制度が大きく変更になります。この適格請求書の保存方式を「インボイス制度」と呼び、軽減税率の影響で2分化された税率の算出を分かりやすくするのが目的です。一方で、施行開始が迫った現在でも、インボイス制度に関する理解が追いついていない方も少なくないでしょう。
この記事では、インボイス制度のメリットとデメリット、事前準備にしておいた方が良いことについてご紹介します。

インボイス制度のメリット

インボイス制度は、2分化された税率を明確に表記して、消費税納税の透明性を図るための制度です。施行開始後は、適格請求書を使用した取引のみが仕入れ税額控除の対象になります。仕入れ税額控除は、二重に消費税が課税されること防ぐため、売上にかかる消費税から仕入れにかかる消費税を引いた差額を納税する仕組みです。その他、施行されることによって企業にどのような影響があるのでしょうか。ここでは、インボイス制度のメリットをご紹介します。

<電子インボイスの導入がスムーズになる>

電子インボイスとは、電子データによって送付された適格請求書のことです。現行では電子インボイスでなくても、要件を満たしていれば適格請求書として保存できます。しかし、取引ごとに請求書の印刷・郵送するのは手間がかかる上に、保管についても法律で請求書は7年間の保管義務があるため、保管スペースの確保にも努めなければなりません。その点では、電子インボイスであれば印刷・郵送といった作業が不要になり、業務の効率化が見込めます。紙媒体での保管が不要なので、保管スペースを確保する必要もありません。ただし、導入する際には既存システムの改修コストなどがかかるため注意が必要です。

<新たな取引先の開拓ができる>

制度施行後は、適格請求書発行事業者と取引のみ仕入れ税額控除の対象になります。そのため、現行で消費税の納税を免除されている「免税事業者」との取引では、仕入れ税額控除を受けられません。仕入れ税額控除で納税額を増やさないためにも、適格請求書発行事業者かどうかの判断が非常に重要になります。要件を満たす課税事業者を選べれば、新規開拓の期待も見込めるでしょう。

<税率の確認の簡略化>

2019年の軽減税率制度によって、8%と10%との2種類の消費税が存在します。現行の請求書では、複数税率下の経理処理が煩雑化してしまう課題の発生が避けられません。しかし、適格請求書の場合、商材ごとの消費税率と各消費税額が明記されているため、複数税率が混在していても正確な消費税額の把握が可能です。

<不正・ミスの防止>

現行の請求書では、複数税率に対する消費税額の計算ミスや改ざんが生じるケースが多々あります。実際に、8%の仕入れを計上時に10%の仕入れにすることで、差額分を利益にする不正行為が発覚したケースもありました。
また故意ではなかったとしても、納税額の計算が複雑化したために現行の仕様では事務処理でミスが発生しやすくなります。適格請求書では商材ごとの消費税率を明確に記載して、消費税額を算出するため不正やミスを防ぐことが可能です。さらに、取引の透明性をより高めることにも繋がります。

インボイス制度のデメリット

複数税率による請求書の改ざんやミスの防止など制度が施行されることで、さまざまな恩恵が受けられます。しかし、その一方で現行の業務にさらに負担がかかるなどのデメリットも忘れてはいけません。ここでは、インボイス制度のデメリットをご紹介します。

<仕入税控除額が減少してしまうリスクがある>

制度が施行されると、適格請求書を発行できる事業者との取引でしか仕入れ税額控除が適用されません。そのため、適格請求書を発行できない免税事業者との取引では、仕入れ税額控除が不可能になり、消費税の納税額が増えてしまいます。そこで、制度施行後6年間は経過措置が設けられています。経過措置期間中は、免税事業者との取引で一定の割合を仕入税額として控除することが可能です。ただし、経過措置後は控除適用外になるため、取引相手の選定には今後慎重な判断が必要になるでしょう。

<経理業務が煩雑化しやすい>

現行の請求書から様式が変更になる他、仕入れ税額控除の要件の変更など業務フローを新たに見直す必要があるため、経理業務に負担がかかります。現行の「割戻し計算」に加え、取引ごとに税額を計算する「積上げ計算」を選択できるようになることから、税額の計算方法が変わる可能性もあるでしょう。また、インボイスの交付と写しの保存、受領した適格請求書の保存なども追加されるため、業務が煩雑化するリスクが高まります。

<個人事業主やフリーランスは廃業のリスクがある>

仕入れ税額控除を受けるには、取引先に適格請求書を発行してもらう必要があります。適格請求書の発行は、適格請求書発行事業者への登録が必要ですが、売上1,000万円以下の免税事業者は、まず課税事業者に移行しなければなりません。しかし、課税事業者になると消費税免除の恩恵が無くなるため、移行したくないと考える事業者もいることでしょう。しかしその場合、この先免税事業者というだけで取引を中止されてしまう恐れがあります。結果的に、事業継続が困難になり廃業へと追い込まれる可能性もあるため、どのような手続きが必要かあらかじめ把握しておく必要があるでしょう。

インボイス制度に対応するために準備しておくこと

施行後は、経理業務の負担増大や売上利益の減少などが想定されます。そのため、事前に対策を講じることで課題を最小限に食い止めることができるでしょう。ここでは、インボイス制度に対応するため準備した方が良いことをご紹介します。

<適格請求書発行事業者への登録手続き>

管轄の税務署に登録申請書を提出すれば、インボイスの発行ができます。申請方法は、郵送や書類を直接税務署に届け出、e-Taxによる電子申請のいずれかから選択可能です。2023年10月に施行される日から適格請求書の発行を可能にするには、2023年3月31日までに申請する必要があります。3月は確定申告などで税務署が繁忙期でもあることから、早期の提出がおすすめです。登録完了後は、税務署より課税事業者の登録番号通知が届きます。免税事業者については、まず課税事業者への登録申請手続きを済ませる必要がある点に留意しましょう。

<請求書の様式変更>

現行の請求書に記載されている項目に加え、新たに事業者登録番号、適用税率、税率ごとの消費税額などの項目が追加されます。現行のフォーマットから修正するか、新たにフォーマットを作成する必要があるので注意しましょう。なお、飲食店や小売業など不特定多数に商材を販売する特定の業種は、一部の項目を省略した適格簡易請求書の発行が認められています。

<経理業務の見直し>

請求書の作成・保存に関するルールが変更になるため、経理業務の負担が想定されます。具体的には、適格請求書の交付や適格返還請求書の交付、写しの保存などが義務化となるのです。制度施行後、経理業務の負担がかかる部分を事前に洗い出して整理し、業務の見直しを図りましょう。業務フロー変更後は、組織内で共有してインボイス制度に備えてください。

<インボイス制度対応のシステム導入>

上記で紹介した通り、現状の経理業務に負担がかかることが想定されるため、この機会に新たにシステムの導入を検討することもおすすめです。既に会計ソフトなどを導入している場合は、インボイス制度に対応しているかを確認しておきましょう。対応できない場合は、新たにシステムを導入して業務の効率化を実現させましょう。

まとめ

軽減税率制度により、2分化された税率が混在する請求書の計算を容易にし、不正やミスを防止するのがインボイス制度です。事業の新規開拓の可能性や正確な税額計算など、さまざまな恩恵を得られます。しかし、現行の請求書様式からの変更や適格請求書発行事業者への登録など、手間がかかることも事実です。インボイス制度はじきに適用となる制度であるため、自社の状況を踏まえながら早期に対策を講じる必要があります。

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執筆者情報

株式会社ROBOT PAYMENT

ROBOT PAYMENTでは「お金をつなぐクラウドで世の中を笑顔に」というビジョンをもと、請求管理業務を効率化・自動化するクラウドサービス「請求管理ロボ」と、サブスクリプションサービスに特化した決済代行サービスを提供しています。
2021年東証マザーズ上場。電子インボイス推進協議会(EIPA) 幹事法人。

株式会社ROBOT PAYMENT
https://www.robotpayment.co.jp/

請求管理ロボ
https://www.robotpayment.co.jp/service/mikata/

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2022.11.02 16:58:05