インボイス制度におけるフリーランスとの取引の注意点
フリーランスとの取引
あゆみ:あのね、今外注さんでトリミングをお願いしてる人がいるんだけど、来年(令和5年)の10月から消費税が変わるじゃない?なんか影響ある?
ケン:その外注さんは一人で事業をされている方ですか?
あゆみ:そう、一人でやってる。個人名で請求書が届くから。
ケン:その方が消費税を納めているかどうかは現状わかりませんが、来年(令和5年)10月から、消費税はインボイス制度が始まり、インボイス発行事業者となるためには登録が必要となり、請求書や領収書などに登録番号があるもので要件を満たすもの(これをインボイスと言います。)でないと、仕入税額控除できないこととなっています。
あゆみ:仕入税額控除って何?
ケン:税務署に納める消費税を計算する際に、売上の消費税から支払った消費税を差し引いて納税額を計算しますが、この支払った消費税を差し引くことを仕入税額控除と言います。
現状、帳簿、請求書や領収書などの保存が仕入税額控除の要件となっていますが、来年(令和5年)10月からは、適格請求書等(インボイス)の保存が要件となっています。ただし、登録していない事業者からの仕入税額控除については、令和8年9月30までは80%、令和11年9月30日までは50%できる経過措置が設けられています。
あゆみ:そう、そこそこ。
もし、その人が登録をしてなくて、適格請求書を発行できない場合、うちはどうすればいいの?
ケン:はい、そこが今問題になっています。
一方的な条件の変更の通知などはNG
あゆみ:どういうところが問題なの?
ケン:逆に質問ですが、あゆみ社長は、その外注さんにはどうして欲しいですか?
あゆみ:やっぱり、うちの消費税の納税額は安くしたいから、その人には登録して欲しいわ。
ケン:そうですね。
ただ、登録するかしないかは事業者自身が判断することですので、こちらからは強制できません。
ですから、登録を促すことはできてもそれ以上のことはできないので、相手方の同意なしに「登録しないのであれば、取引先を変えます。」とか、「取引を停止します。」などという通知を送りつけるのは下請法違反になる可能性があります。
もし、その外注さんが登録しなかったらどうしますか?
あゆみ:その人は税務署に消費税を納めてないってことよね。そしたら、消費税の分、値引こうかな?
ケン:その値引くことについて、相手方の同意なしに一方的に通告することは、下請法に違反する可能性があります。
もし、その外注さんが値引きにも応じない場合はどうしますか?
あゆみ:そしたら違う人を探そうかな?
ケン:今回のインボイス制度を契機として、相手方が登録しないために、「値引きをする、もしくは値引きに応じない場合には取引を停止する」などの一方的通告は独占禁止法違反になる可能性があります。
あゆみ:じゃ、どうすればいいの?
ケン:相手方の同意なしに通告することが問題なので、まずは、その相手方である外注さんと話し合い、条件を変更するにしてもお互い合意することが必要です。
相手方と合意すれば、値引きなどの条件を変更しても問題ありません。
事業者免税点制度の問題点
あゆみ:なんか今回の話聞いてると、インボイス制度って、消費税納めてない事業者にも登録してもらって、消費税納めてねって促してる感じがする。
ケン:さすが、鋭いですね。
今までの消費税の制度は、2年前の消費税の課税売上が1,000万円以下の事業者については、納税義務がなく消費税を納めなくて良いこととなっています。
これを益税と言って、国としては(そういう制度を作っておきながら)看過できないものとして、いつこの事業者免税点制度を終わらせるかという点に注目が集まっていました。
あゆみ:え?国の方で消費税納めなくていいって言ってたのに、問題になってたんだ?
ケン:そうなんです。
いきなり事業者免税点制度を終わらせるのは免税事業者から反対されることも予想されたため、来年(令和5年)10月から始まるインボイス制度で、消費税を納める事業者になることを自分で選択させるようにしたわけです。
あゆみ:そうか、あの外注さんも課税事業者を自ら選択してくれればいいけど、そうじゃないと面倒なことになりそうね。
ケン:その時はご相談ください。お役に立てると思いますよ。