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第一部 第1回 無名企業の営業マンは泣いている!?広報PRを軽視する企業の末路

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第一部 中小企業に広報PRが不可欠なワケ ~素手で戦場に飛び込みますか?

 第一部では、企業にとって広報PRが必要である理由を解説します。効率的かどうかは別として、日本の大企業で広報PRをまったくやっていない会社はほとんどありません。しかし、中小企業で広報PR活動を軽視している企業は多くあります。広報セミナーで講師を務めると、中小企業の「1人広報」や他の業務と広報を兼務している「兼務広報」の方々から、さまざまな悩みを打ち明けられます。さらに、広報担当を置いていないという企業もたくさんあるようです。
 「中小企業だから広報PRをやる必要はない」という方もいますが、そうした人は「広報PRをやらないから中小企業のままなのではないか」と疑った方が良いかもしれません。広報PRには、主に営業面で有利になる「外部効果」と離職率を引き下げる「内部効果」などがあり、やり方次第では企業を飛躍させることもできる「魔法のつえ」になりうるものです。業績を現状維持で良いという企業はやらなくても良いかもしれませんが、将来の事業拡大を目指す企業には必須項目といえると私は思います。

第1回 無名企業の営業マンは泣いている!?広報PRを軽視する企業の末路

■私自身が経験した「無名企業の営業の悲哀」

 日本経済新聞の東京本社でデスクを務めていた私が、B to B(対企業取引)の上場企業であるA社の広報部長に転身することになったのは2018年8月のことです。私は「日経を辞めたら独立したジャーナリストとして活動しよう」と夢を膨らませていました。しかし、A社の社長から「上場企業なのに知名度が低く、メディアに取材してもらえない。広報を取り仕切れる人もいない。何とかお願いできないか」と熱心に依頼され、協力することにしました。
 A社は社員100人足らず(当時)の中小企業とはいえ、上場している企業です。当時は「そんな企業でも無名すぎて、取材もしてもらえないのか」と不思議に思ったものです。しかし、入社すると、私自身が「無名企業の営業マンの悲哀」をすぐに実感することになりました。
 A社はメディア掲載数(報道数)が年10件前後と極端に少なく、知名度が低いのが悩みの一つでした。かといって超大企業のように何億~何十億円もの巨額の広告費をつぎ込むわけにはいきません。取材してもらい、無料で多くの報道をしてもらうことが知名度や認知度を引き上げる有力な手段です。

■聞いたことのない企業からの連絡は「迷惑」

 私はさっそく記者にA社を取材してもらうために新聞社に連絡をはじめました。しかし、代表電話に連絡して、社名を名乗っても「は?」「聞いたことないけど、何の会社ですか?」と言われる毎日。記者につないでもらえないことも日常茶飯事でした。運良く受付の方が電話をつないでくれても、記者が自社の名前を知っていることは皆無でした。会社の名前や名刺を出せば「ああ日経さんですか」と尊重され、ほぼ全ての企業で容易にアポイントが取れた日経新聞時代とは大違いです。
 記者の立場からすれば、聞いたこともないような企業の広報から「記事を書いてくれ」と言われても、迷惑でしかありません。「うちとしては御社に興味ありません」と言われて拒絶されたことも何度もあります。記事掲載どころか、取材してもらったり、会ってもらったりするだけにも四苦八苦する始末でした。
 無名企業の広報担当者は「メディアに対する飛び込み営業」のようなものです。広報担当者が1人しかいない「1人広報」のような方は、多少でもノウハウを教えてくれる先輩もおらず、苦労していることと思います。私自身も、自分なりの攻略法を編み出し、記事を掲載してもらえるようになるまでは、無名企業の厳しさを嫌というほど味わいました。
 もちろん、広報部を置けばPRがうまくでき、無名企業がたちまち有名企業になるわけではありません。PRはやり方次第では「事業拡大の魔法のつえ」になりますが、やり方を間違えれば「単なるコストセンター」になり下がります。私がどうやって記者の方々と信頼関係を築き、多くの報道をしてもらえるようになったかについては、今後の連載記事で具体的にお話ししたいと思います。

■広報事業の成功で、営業担当者からの感謝の連絡相次ぐ

 広報部長になって2年近くが経過したある日のこと。営業担当者のBさんから電話がありました。「日高さん、うちの会社の記事を日経新聞に掲載してくれて、ありがとうございました」と言うのです。Bさんは、大手金融機関からA社に転職した方でした。ご両親からも「なぜそんな無名企業に移るのか」と反対されたそうです。しかし、お父さんが日経新聞に掲載された記事に気づいて、「すごい会社に入ったな。がんばれよ」とBさんに電話をくれたそうです。私は、新聞記事にこんな力があるのかと驚きました。
 メディア掲載が増えるたびに、ほかの営業担当者からも多くの反響が寄せられるようになりました。例えば、「新規の営業先にA社が掲載された地元紙の記事を見せたところ、『有名なメディアに取り上げられているから信頼できる』と言われ、契約が取れた」といった話がいくつもありました。営業していない企業からも「記事を読んでサービスについて興味が出たので、話をしてみたい」との連絡があったといった声もありました。
 電話営業をしている方々からも「以前は営業の電話をしても、すぐ切られていたが、メディア掲載が多くなってからは話を聞いてもらえることが格段に増えた」といった感謝の声をたくさんもらいました。日経新聞やNHKのような大手メディアで報じられた時はもちろんですが、地方紙や業界紙、専門誌などに掲載されたものも、営業の現場でアピールできるようでした。私が独立してからも、クライアント企業から喜びの声をいただいています。

■経営陣がPR活動に関心を持たなければ人材流出も

 無名企業で営業活動をすることは、素手で戦場に出るようなものです。一方で知名度や認知度が高い企業がライバルである場合、その会社の営業担当者は自社のブランドという強い武器を持っています。つまり、無名企業の営業担当者はスタート時点から圧倒的に不利な戦いを強いられているのです。
 無名企業に所属している場合、仮に個人の能力は高くても、知名度の高いライバル企業に競り負けることが多くなります(もちろん認知度がなくても自分だけで取引先を開拓できる方もいますが、極めて少数派です)。かくして有名企業と無名企業の業績の格差は、どんどん拡大していきます。
 こうした意味では、PR活動をして認知度を引き上げ、職場環境を整えるのは、企業経営者や経営陣の責任でやるべき仕事といえるでしょう。広報PRに興味や理解がなく、努力をしないのは、経営戦略の怠慢といわれても仕方がありません。
 しかし、そうしたことを理解しない経営陣も多くいます。そうした場合、営業のマネージャーなど管理職の方々が、ライバル企業に取引先を奪われた現場の営業担当者を強く責め、求心力を失ってしまうことがよくあります。理不尽に責められた社員は、有名企業への転職を考えたり、別業界への転身を目指したりするでしょう。現場の営業員が辞めれば、今度は経営陣がそれについて管理職を責め、今度は管理職が辞める――という悪循環です。少子・高齢化を背景とした人手不足の中での人材流出は、中小企業や無名企業にとって事業の存続にすら悪影響を及ぼすといえるでしょう。

執筆者情報

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日高広太郎

1996年慶大卒、日本経済新聞社に入社。東京本社の社会部に配属される。その後、小売店など企業担当、ニューヨーク留学(米経済調査機関のコンファレンス・ボードの研究員)を経て東京本社の経済部に配属。財務省、経済産業省、国土交通省、農水省、日銀、メガバンクなどを長く担当する。日銀の量的緩和解除に向けた政策変更や企業のM&A関連など多くの特ダネをスクープした。第一次安倍内閣時の独ハイリゲンダムサミット、鳩山政権時の米ピッツバーグサミットなど多くの国際会議で日経新聞を代表して同行取材、執筆。東日本大震災の際には復興を担う国土交通省、復興庁のキャップを務めた。シンガポール駐在を経て東京本社でデスク。2018年に東証一部上場のBtoB企業に入社し、広報部長。2019年より執行役員。年間のメディア掲載数を就任前の80倍超、月別、四半期別では100倍超に増やし、認知度向上に貢献した。2022年に広報コンサルティング会社を設立し、代表に就任。クライアント企業のメディア掲載数を急増させている。
著書に『 BtoB広報 最強の攻略術』(すばる舎)がある。

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2022.09.16 16:44:32